@@@@ 街 の 生 き 物 happenings@@@@

大ま科駄属の人虫が、虫を尋ねて街を行く

紋様合冊に時間がとられてしまった。
あの日(8月22日)千住大橋に行ったのは、石碑の今もあることを確認するためであった。その途中で善い話が二つもあった(65号)。
石碑はあった。ぼくは、この石碑を多分3年くらい前、見つけた。

池波正太郎さんの『鬼平犯科帳』によくでてくる千住大橋に、行ってみたかったのだ。行ったら、図らずも、石碑が目に入った。
池波さんの本は、ある時期殆ど揃っていた。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛け人・藤枝梅安』・・・・多分、どれもこれも20回以上は、楽しんだ。どれでもいい、たとえば『犯科帳』を手にしたとする、いったん一冊を読み出せば、あとの刑が待っている。『犯科帳』の刑期をつとめて娑婆に出れば『剣客』が刑務所の門で見張っている、『剣客』の剣難を危うくかわして仕留めれば『仕掛け人』の罠が・・・と池波世界の蜘蛛の巣にかかってしまう。そういう時期が、10年くらい続いた。平均すれば半年に一度は、池波さんの世界に浸っていたことになる。
泣く泣く僕は、池波さんの本と別れた。僕の住んでいるところは、部屋数の多い西洋長屋だ。700室くらいある。だから、毎週、出る人、入る人がある。当然ゴミは多い。ゴミでないゴミも多い。ゴミでないゴミの幾分かは、長屋の住人の間を循環することになる。僕の持っていた池波さんの本も、そっくり全部、長屋のどなたかに貰われて去った。もともと、僕が池波さんを読み出したきっかけというものが、一寸ばかり変だ。つまり、池波さんの世界を拾ったのだ。道端(みちばた)に本が落ちていて危うく踏みつけそうになった、本を粗末にしたり新聞を跨(また)いだりすると、、オヤジから大きな懐中電灯で、頭をひっぱだかれた、だから、この本を拾った。本踏みそうになるも他生の縁だから読んだ、そしたら、僕は、池波さんの世の中に10年も20年も住んでいる気になっていた。まことに不思議な縁だ。犬が向こうから来た。犬公も僕も互いに少し進路を曲げて衝突を防いだ、その曲げた先に本があり、僕が拾い上げたら、この犬めは、鼻を寄せてきた。ウフフ、これは俺のもんだからな、お前さんには、ヤラネーよ。このお犬様が、池波さんの世界を僕に教えてくれたのだ。

千住大橋に行ったのは、3年前の夏の朝早く。もちろん、自転車で行った。

石碑は、あった。八紘一宇の碑、だ。
何を、いまさら、こんなものが、あるんだ、と思った。そして、よく残った、とも思った。集団疎開最終期の経験者だから、それなりの当時の記憶はある。否(いや)なものが在る、よく残って在る、という相反する気持ちが、大橋で、石碑を見たときの感想であった。


↑左・八紘一宇の碑(千住大橋橋詰)右・スサノオ神社境内の石柱? ともに8月22日

そう言えば、僕は世田谷の東玉川の生まれだが、近くの目蒲線(いまの目黒線?)奥沢駅のそばに爆弾三勇士の、砲弾を抱えた6,7才くらいの大きさの3人像みたいなものが、戦後かなり長い間、あったのを記憶している。そこいら一帯が建て直されたとき、撤去されたらしい。
3年前の千住行きのときには気がつかなかったが、今回の千住大橋行きで、一つ気がついた。近くに創建795年(延暦15)と伝えられる大変古いスサノオ神社(ちゃんとした漢字はあるけれど)があり、その境内に砲弾型の石柱?が、何基かあった。

僕らは、・・・、あ、これは言い過ぎだ。僕は、だ。僕は、こういう事物を、どうすればいいのだろう。どう考えればいいのだろう。
たしかに3ねんまえ大橋の橋詰でこれを初めてみたときは、
何やこれ、と思わず似非関西訛りで呟いたけれど、
気にいらない者・物・事柄を、有無を言わさず排除していいのか。
千住大橋は古い。1927年(昭和2)の創建だから、いずれは、再建されるだろう。そのとき、この石碑は、どうなるのだろう。そもそもが、この石碑の所有者、管理者は誰だろう。
世の中、右傾化にある。右傾化に乗る人間が、大橋再建にあたって石碑に対して、どういう運動を展開するのか。
この運動に対して、撤去せよという声や運動もあるだろう。現に、そういう声は、web上にもある。
石碑は、一つの、様々な事情を背後に持つ歴史だ。今風に言えば、コンテンツだ。
好いも悪いも、残っている者・残っている物は、コンテンツとして残そう、と僕は思う。僕も含めて各人が、これはどう言う意味を持っているのか、をきちんと掴もうと思う。

ところで、肝心の池波さんの千住大橋だが、3年前のときは、石碑を見つけて気分がくしゃくしゃして池波世界を楽しめなかった、今回は、上野の遺跡発掘のことが頭の中にあって、気もそぞろに大橋を後にした。千住再訪を、と思う。<09日20時>
なお「街の生き者」「人虫」については、60号、63号「街の生き者」をごらんください。

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