淡水魚マナー


 様々なメディアで報じられているように、現在淡水魚は絶滅が危惧されています。残念なことに、昔のように(私はその昔というのを知らない世代です)雑魚として無尽蔵にどこにでもいる時代ではありません。これは首都圏に限らず全国的な傾向です。そのような状況の中、釣りや飼育という形で淡水魚と触れ合ってゆくことは、彼らのことを知る上で大変良いことだと思います。しかし、ただ楽しければいいと言うのではなく、淡水魚に更なる悪影響を与えることのないよう、個人個人が最低限守るべきマナーがあると思います。

 私のような一淡水魚好きが守るべきこととして、僭越ながら私個人の考えを以下に記すことにしました。 長文であり、たいへん分かりにくいと認識しつつもとりあえず載せました。ゆくゆくはより分かりやすい形で訴えてゆきたいと考えていますので、ご容赦下さい。
 これをこのサイトの運営方針にしてゆきたいと思います。なにとぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m




飼育する魚は買わない

乱獲しない

生息地を公開しない

魚を放流しない

バス・ギルは再放流しない



★お願い★このHPを訪問して下さった皆様は、以下の私の考えをお読みになって不愉快に思わないで下さいますよう心よりお願いいたします。ご承伏しかねる方も当然いらっしゃるでしょうし、色々なお考えがあるでしょうから、それを頭から否定するつもりはございません。掲示板メールで、ご意見ご感想をお寄せ下さい。正直申し上げて、私も以下のような偉そうなことを堂々と言えるような人間ではないです。自戒として記してもいることをご理解ください。



飼育する魚は買わない


 多くの観賞魚店やデパートの屋上、ホームセンターのペット売り場などで日本産淡水魚を目にします。メダカ、タイリクバラタナゴくらいしか置いていないところから、タナゴ類専門店、レッドデータブック(RDB)記載種をずらりとそろえたところまで内容は様々です。これらの個体はその多くが専門の業者により生息地で採取されてきたものです。しかし生息数に見合った採集によるものではない、つまり乱獲された個体である可能性があります。これらを買うことは、間接的に淡水魚の絶滅に手を貸していることになります。
 現在淡水魚の生息環境は、開発や水質汚染、外来魚問題などにより、危機的な状況にあります。RDBなどに指定され、それが更にマニアの飼育熱を煽って業者の乱獲につながり、各水域の個体群に深刻な影響を与える悪循環を引き起こしているのです。
 また最近は「養殖物」と称して希少種が並んでいることもあります。養殖と書いてあるとつい気が楽になって手を出したくもなります。しかしそれが本当に養殖物であるのかは分かりませんし、また良好な系統維持のために野生個体を定期的に投入している可能性もあります。
 なお、私は営業妨害をしているつもりはありませんので念のため申し置きます。ただ、「RDB種」などと札をつけて高値で販売しているショップなどが、淡水魚についてどのように認識しているのか、甚だ疑問を感じるのです。
 白状しますと数年前までは私もショップで淡水魚を買うことがありました。そしてイチモンジタナゴやスイゲンゼニタナゴなどを高値で購入しては、飼い殺してきました。そしてそうしている間にメディアなどで耳にするのは淡水魚がますます激減しているという話でした。彼らが生息する水辺環境がどのようになっているのかつゆにも感じず、ただショップで「状態がいい」「安い」などの理由で購入していても、ただ絶滅へと駆り立てているだけだと気がついたのです。
 淡水魚を購入していた私に、このような主張をする資格は本当はないのかもしれません。ただ私が感じたこの終わりの見えない悪循環を、少しでも多くの方に気づいていただければと思い、あえて述べさせていただくことにした次第です。
 全ての淡水魚販売が、淡水魚の減少要因になっているとは思いません。それはむしろマニア垂涎の的であるごく一部の種であり、個体群でしょう。普通種の販売は淡水魚を一般の方々に広めるのに一役買っているのは事実でしょうが、デパートの屋上でカビだらけの無惨な姿を呈している魚たちを見てもらっても、本当の啓蒙になっているとはとても思えないのです。また全国的には普通種でも地域で見た場合には希少種の場合もあり、ある地域個体群が乱獲に遭い回復困難なダメージを受ける可能性もあるわけで、私はRDBなどにこだわらず淡水魚を買うことに抵抗を感じるのです。
 淡水魚を次世代に残してゆくために、金銭のみに支配された無秩序な業者の乱獲を煽ることは、一個人としてできるだけ避けて欲しいとお願いします。需要をなくすことが一番重要なことなのです。魚を飼育される場合は、釣りや採集などご自身で魚を入手されることが一番だと思います。その方が何倍も楽しく、淡水魚のことについて多くのことを知ることができると思います。その魚の生息環境を知っているからこそ、うまく飼育することができるのではとも思うのです。





乱獲しない


 淡水魚は限られた狭い水域に生息していることが多いです。開発や汚染に伴う良好な水環境の激減、水域間の移動障害などにより、近年一層顕著になっているようです。従って、業者の乱獲のみならず、個人レベルでも過度の採集はその狭い水域の個体群に悪影響を与えることになります。淡水魚を採集する際には、生息に影響を与えない程度の採集数にとどめましょう。良好な環境さえあれば、淡水魚の繁殖力は旺盛であり、生息数に見合った採集は何ら問題ないと考えます。
 これは魚種によりません。全国レベルでは普通種でも、その水域では非常に個体数の少ない場合は、その種こそ希少種と認識し、持ち帰ることに慎重になるべきと考えます。これはなかなか難しいことなのですが、地域版のRDBが近年盛んに発行されていますので、参考にされるのも良いかもしれません。
 某アクア雑誌に、「個人のむやみな採集は生息地を荒らしてしまうこともあるので、業者からの購入も考えるべきだ」という信じられない一文がありました。利益のみにとらわれ乱獲の影響を考えない業者とは、個人の採集は明らかに異質のものになりえると思います。マナーをもった個人の採集こそ、啓蒙されるべきだと考えます。
 またこれは飼育に対する考え方の問題でもありますが、しばしばタナゴ類などを百匹単位で持ち帰り、過密飼育している方を見かけます。そんなにたくさんの個体数を飼育するのはなんのためなのでしょうか。今一度考えて頂きたいものです。





生息地を公開しない


 インターネットを徘徊していて一番気になることが、淡水魚の非常に具体的な生息地情報を目にすることです。これは淡水魚が激減し各地域個体群が狭い水域に追いやられている現状では有害性が極めて高いと考えます。水域によっては最後のとどめを刺してしまう危険性すらあります。
 日本におけるインターネットの家庭普及率は40%に達しようとしています。すなわち4000万人以上の人間が、その気さえあればマウスをクリックするだけで生息地情報を入手できてしまうということです。その中には、業者やマナーを守らない乱獲マニアがいないと、どうして言い切れるでしょうか。
 また淡水魚の好きな方は自問してください。欲しい魚の具体的な生息地名や生息水域の写真を見つけたら、どうしても魚採りに行きたくなるのがマニアでしょう。人気淡水魚の場合、釣り人、採集者が殺到し、再生力を越えた採集圧を与えてしまう可能性もあります。
 淡水魚のために、具体的な生息地情報を不特定多数者の見る媒体で公開することはやめてくださいと強くお願いします。他の項目と同列かそれ以上に重要な、個人が最低限守るべきマナーだと思います。

 具体的生息地情報を発信しているウェブサイトにこのように要望すると、反論されることがあります。代表的なご意見としては、

1)たくさんいる雑魚だし、大河川だし絶滅するとは思えない。何が希少種か分からない
2)多くの人目があり乱獲される危険は少ない、または乱獲困難な水辺の状態である
3)もう他のメディアに出ているしここで出したところでたかがしれている
4)淡水魚に容易に触れあう機会を提供することで水辺環境の啓蒙につながる
5)多くの人間が情報を共有することで、開発等による生息地破壊の抑止力になりえる

などです。しかし、1)〜3)は極めて無責任な姿勢と私は思います。どうしてそう言い切れるのでしょうか。深刻な悪影響を招いた場合、どう責任をとられるつもりなのでしょうか。
 4)、5)に関しては、効用を認めます。しかしモラルの欠如した日本の利己的社会の現状では、残念ながら乱獲や採集者の集中による悪影響の方が大きいと懸念されます。開発で生息地消失の危機にさらされた時でも、不特定多数者が目にする媒体に情報を垂れ流すのではなく、まず自治体や良識ある市民団体に躊躇せずに訴える方が、淡水魚のためになると考えます。

 無邪気に淡水魚に出会った喜びを発信しているだけの方もおられるでしょう。その場合、具体的な場所を出される必要はまったくないですよね。改善をお願いする次第です。深刻なのは、問題をご承知ながら、アクセス数増加や更新のためにあえて公開しているのではとしか思えないサイトもあることです。それでは増加する採集圧に晒される淡水魚があまりにも気の毒と思うのです。
 生息地公開に関しては、個人的な提案ですが、都道府県名、大河川や大きな湖沼の名前までなら好影響の方が大きいと考えます。また外来種、移入種、漁協が大量に放流し資源維持されている経済種に関しては、この限りでないと考えます。しかしインターネットの世界では「ではこの種もよいだろう」と誤解を生む可能性もあり、その場合にはきちんとした姿勢を示されることを望みます。当サイトではほぼ全ての淡水魚に関し具体的な生息地情報を控えることにしました。水景の写真に関しても、魚が生息しているかは全く不明です。
 以上のことはインターネットに限らず、出版物やテレビなどにも当然当てはまります。各地での淡水魚採集を題材にし、「絶滅危惧種」の名称が飛び交ってありがたがっている某アウトドア番組などは、怒りを通り過ぎて呆れかえるばかりです。淡水魚の絶滅を促進する番組としか思えません。生息地情報の暴露を生活の糧にしないで欲しいと思います。

 また、匿名社会のインターネットの場合、相手がどんな人間かはなかなか分かりません。もしかしたら相手は業者や乱獲マニアかもしれません。会ったこともなくよく分からない方とメール等で生息地情報のやりとりをしたり、会ってすぐ採集に行くのは避けるべきと思います。不特定多数者を募って採集に行くようなオフ会の開催もやめてください。淡水魚の生息地情報や採集に関しては、被害を被るのは淡水魚たちで、教えた人間が責任を負うことはできません。野生生物を相手にする場合、人間同士の信頼関係が唯一の拠り所なのだと思います。直接お会いして親しくなった信用できる方と、情報を交換しご一緒に魚採りに行かれることが一番ではないでしょうか。
 穿った見方かもしれず、お気持ちを悪くされた方がおられましたらお許し下さい。インターネットで淡水魚仲間を作ることは、大変良いことだと思いますし、私自身多くの友人を得ることができました。このサイトの設立目的のひとつもまさにその仲間づくりでもあります。しかし、淡水魚のことを一番に考えると、人とのつき合い方にも慎重な基準が必要とされると主張させていただきたいのです。

 インターネットが実現したイージーアクセシビリティー、無数の人間同士のコミュニケーションの場が、淡水魚を取り巻く問題を一層深刻にするのではなく、良い方向へと向かわせるのに役立って欲しいと思います。





魚を放流しない


 魚のみならず、生体全般について新たな個体を自然界に放つことは自然破壊になりますのでやめましょう。
 飼いきれなくなって近くの川に放流したり、愛護意識からご自宅で繁殖させた魚を放流したりなど、様々な理由があるようですが、いずれも自然破壊していることに他なりません。
 本来そこに分布していない魚を放流してしまうと、在来の魚の生存に必ず影響を及ぼします。一部優占種の台頭などにより、在来種に深刻な影響を与えることになります。今やどこにでも見られる琵琶湖起源の魚種や、次項で述べる外来魚などにより、在来の魚たちが危機的な状況に陥っているのは分かっていただけると思います。
 更にそこに分布している魚種であっても、放流はしないで下さい。
 現在日本在来魚は放流による遺伝子汚染が深刻な問題になっています。淡水魚は同種間でも各水系、水域によって遺伝子の分化が進んでいることが近年分かってきたようです。たとえそこに分布する魚種を放流したとしても、異なった遺伝子を有する個体を放流すれば交雑を招き、地域固有の遺伝子情報は汚染され取り返しがつかなくなります。例えば東京都の東西に走る多摩川と荒川ですら最後の氷河期が終わって以来約1万年もの間水系間の交流が消失しており、淡水魚もそれぞれ独自の進化を遂げていると考えられます。また同じ河川に生息する魚種でも場所により外部形態が異なる場合があり、同水系の中でも分化が進んでいる可能性すらあるのです。
 …と述べて参りましたが、釣りや漁業の対象になる魚種の多くが、他水系産の種苗を大量に放流して資源を維持している現実があります。最近はようやく遺伝子の問題が考慮されるようになり、地元水系産の種苗生産なども行われるようになってきていますが、支流などの各水域まで考慮している例は少ないようです。また、地方財政の悪化により種苗生産を縮小している水産試験場もあり、近年他水系産種苗に切り替えるなど時代に逆行する動きも見られます。生物多様性の観点から、利用するだけ利用している現在の内水面利用は見直しが求められるべき時代になっていると考えます。
 こうした大規模な放流問題があるわけですが、個人としてこれを助長することは慎みましょう。購入個体や採集個体を放流することはやめましょう。採集水域に戻すことに関しては、確実にその個体がその水域産であることに間違いがない場合のみ、可能と考えます。
 繁殖させた個体を親の生息していた水域に戻すこともやめてください。本来野生では淘汰されるべき遺伝的弱勢の個体の増加や、近親交配の可能性など、悪影響が大きいと考えられます。放流すれば魚が増えて環境に優しい、という考え方は危険です。各水域には既にその残された自然で養える限度容量の魚たちが必死に生きています。人為的な放流は、ほとんどの場合野生生物に悪い影響しか与えないのです。むしろ豊かな水域環境を取り戻すことこそ、魚たちを増やすための最も重要かつ唯一の方策なのだと思います。
 飼育した魚、自宅で繁殖させた魚は死に水をとるまで面倒を見るのが飼育者の責任だと思います。





バス・ギルは再放流しない


 外来種であるブラックバス・ブルーギルの問題は無数のサイトで取り扱われていて、また多くの掲示板で激論が交わされています。どちらに理があるかは明らかなことなので、あえてここで取り上げることもないかなと思っていたのですが、残念ながら愚かな人間社会は「理」よりも「利」の方向を向いて物事が決まってしまうことがあり、特に最近のバス・ギルを取り巻く様々な方面における不気味な動きには危惧を感じています。主張を表明しておくことは淡水魚と関わってゆく上で義務だと感じ、マナーとして皆様に呼びかけさせていただきます。
(2001.07.09 魚類学会の外来魚シンポに参加したのち記す)

 ブラックバス、ブルーギルを釣ったり網で掬った場合、再放流(リリース)しないで持ち帰るか、それが困難な場合は現地で処分してくださいますようお願いします。生き物を殺すのは決して気持ちのいいものではありませんから、これはあくまでお願いですが、その一匹を処分することで、何十、何百もの在来魚を救うことができるかもしれません。
 環境の良いところであれば、食されることもいいかと思います。ただ、お世辞にも水が綺麗とは言えない水域もありますし、どなたもが家庭で魚を食べることが一般的な時代でもないですから、ゴミとして処分されるのも仕方がないと思います。持ち帰っていただくのが適当ですが、少数であれば地上に放棄することも構わないでしょう。大量でかつ持ち帰れない場合は衛生的な問題もありますので土に埋めてくださるといいかと思います。私はそのための軽合金の軽量シャベルをいつも携行しています。

 このような血生臭いことを書かねばならないのは辛いことです。しかしバス・ギルが在来魚種、そして日本古来の水辺環境に与えている影響は甚大です。水辺に少しでも関わっている方にはこの致命的問題は当たり前の事実なのですが、最近ようやく科学的にも明らかにされるようになってきました。バス・ギルは日本にいるべき魚ではないのです。生物多様性条約の批准国として、バス・ギルを排除することは国際的義務でもあります。
 当然生物多様性の観点に立てば、他の外来種や国産の移入種にも厳しい眼を向けざるを得ません。影響の大きなものから順次排除するのが今後進んでゆくべき方向でしょう。ただし、バス・ギルが与える影響が際だっているという現実から、この二種に関しては一刻を争う問題と考えます。
 念のため申し置きますが、バス・ギルが悪いわけでは決してありません。それらを日本に持ち込み、無秩序に全国にばらまいた人間が悪いのです。一部の自分勝手な人間が、ここまで淡水魚を傷め続けてしまっているのです。人間に翻弄され続ける魚たちは本当に可哀想でなりません。しかし、だから何もしないのではなく、攪乱され尽くした生態系を少しでも元の形に戻してゆくための姿勢が現在求められています。辛いマナー(というより、お願いです)ですが、個人個人が実践すれば一定の減少圧になりますし、なにより世論を喚起するために有効だと思います。

外来魚駆除in琵琶湖各地で漁協などにより外来魚の駆除活動が始まっています。また、一般参加型の駆除大会も行われています。特に大きな運動として、琵琶湖における「外来魚駆除大会」があります。琵琶湖を戻す会が主催するこの大会は年に何度も定期的に開かれ自由参加形式で広く参加者を募っています。外来魚問題を広く市民に認知してもらうのに大変役に立っているようです。右のシンボルマークからHPに飛ぶことができます。日程の案内と駆除の成果、その他興味深いデータも掲載されています。

 ※この外来魚問題に関しては後日改めてコンテンツを作る予定です。



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