クーリング・オフとは?
特定商取引に関する法律(特商法)など、多くの消費関連法には「クーリング・オフ」という制度が設けられています。
「クーリング・オフ」はもともとアメリカから入ってきた制度で、「頭を冷やす」という意味です。熱心なセールスマンの話を聞くうちにその気になって契約はしてみたものの、あとから冷静になって考えてみると必要がなかったと後悔し、契約を解除したいと思うことはよくあります。
突然電話されたり、自宅に訪問されたりして、不意打ち的に勧誘されると、ときに契約する意思が確定していないまま契約に応じてしまうこともあります。また、業者側にすれば買おうという意思がなかった消費者に対して購入するよう積極的に働きかけるわけですから、その勧誘は詐欺的・強迫的なものになりがちです。
そこで、一定の期間内であれば無理由・無条件で一方的に契約の撤回や解除ができるというクーリング・オフという権利を消費者に与え、不適正な勧誘から消費者を守ることとしたのです。
(1)クーリング・オフできる取引と期間
(2)クーリング・オフの仕方
(3)クーリング・オフの効果
(4)クーリング・オフ通知の文面
(5)「クーリング・オフ妨害解消のための書面」とは?
(6)個別クレジット契約のクーリング・オフ(割賦販売法)
(1)クーリング・オフできる取引と期間
クーリング・オフができる取引はさまざまな法律で定められています。主なものは下記のとおりとなっています。
| 取引の種類 | 起算日 | 期 間 | 対象となる商品等 | 根拠法 |
|---|---|---|---|---|
| 訪問販売 | 法定の契約書面を受領した日 | 8日 | 原則として全ての商品・役務及び指定権利 現金取引は取引額3,000円以上 |
特定商取引法9条 |
| 電話勧誘販売 | 法定の契約書面を受領した日 | 8日 | 原則として全ての商品・役務及び指定権利 | 特定商取引法24条 |
| 連鎖販売取引(マルチ商法) | 法定の契約書面を受領した日または商品の引渡しを受けた日 | 20日 | 商品・役務であれば制限なし | 特定商取引法40条 |
| 特定継続的役務提供 | 法定の契約書面を受領した日 | 8日 | エステ、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス | 特定商取引法48条 |
| 業務提供誘引販売取引 | 法定の契約書面を受領した日 | 20日 | 商品・役務であれば制限なし | 特定商取引法58条 |
| 割賦販売、クレジット取引(個別信用購入あっせん) | 法定の契約書面を受領した日 | 特商法の取引の種類により8日、20日 | 原則として全ての商品・役務及び指定権利につき営業所外でされた取引 | 割賦販売法35条の3の10〜11 |
| 保険契約 | 法定の契約書面を受領した日 | 8日 | 営業所外での1年を超える保険契約 | 保険業法309条 |
| 宅地・建物取引 | クーリング・オフ制度を告知された日 | 8日 | 宅建業者が売主となる宅地建物売買契約につき事務所以外でされた申込み、締結した契約 | 宅建業法37条の2 |
| 現物まがい商法 | 法定の契約書面を受領した日 | 14日 | 3ヶ月以上の特定商品・施設利用権 | 特定商品預託法(現物まがい規制法)8条 |
| 海外商品先物取引 | 海外先物契約締結の翌日 | 14日 | 事務所以外での指定市場・商品の取引 | 海外先物取引規制法8条 |
| 商品ファンド契約 | 法定の契約書面を受領した日 | 10日 | 商品投資販売業者との契約 | 商品投資事業規制法19条 |
| 投資顧問契約 | 法定の契約書面を受領した日 | 10日 | 投資顧問業者との契約 | 有価証券投資顧問業法17条 |
| ゴルフ会員権取引 | 法定の契約書面を受領した日 | 8日 | 新規販売された50万円以上のもの | ゴルフ会員権契約法12条 |
| 冠婚葬祭互助会契約 | 約款を受領した日 | 8日 | 冠婚葬祭互助会の入会契約 | 業界標準約款 |
※ 「通信販売」は法律上はクーリング・オフができませんが、多くの事業者が返品特約を設けています。なお、通信販売の契約の無理由解除ができる一定の場合はこちらから参照してください。
(2)クーリング・オフの仕方
クーリング・オフは法律では「書面」によりすることが求められています。これは当事者間の権利関係を明確にするとともに、後日紛争が生じることを防ぐ趣旨です。
業者が承諾すれば口頭でのクーリング・オフを認めるという判例もありますが(*合意解除が成立したものとみる)、言葉巧みに何とか契約の存続を図ろうとする業者は少なくないですから、電話等、口頭でのクーリング・オフの申出は証拠が残らないため避けたほうがよいでしょう。確実に証拠が残る内容証明郵便(+配達証明付き)でクーリング・オフの行使を通知すべきです。
どうしても内容証明で通知できない場合には、最低限度、書留扱いにして通知書の内容をコピーし保存しておいてください。
(3)クーリング・オフの効果
クーリング・オフには次のような効果があります。
クーリング・オフは「無条件」でできます。つまりその理由は何でもよいということです(クーリング・オフした理由を尋ねられたとしても、あえて答えなくてもよいのです)。
クーリング・オフの行使により、消費者は代金を支払わなくてもよく、支払っていた場合は返還を受けられます。業者が返還を不当に遅らせることも違反行為とされてます。
クーリング・オフの行使により生じた商品の引取り費用は業者が負担しなければなりません。着払いで送り返しても、商品を取りに来てもらってもかまいません。また、原状回復(契約前の状態に戻すこと。例えば、壁にあけた穴を塞ぐ作業など)につき費用がかかる場合には、それも業者側の負担となります。
クーリング・オフの行使により業者側に損失が発生しても消費者に損害賠償を請求できませんし、違約金も請求できません。
クーリング・オフを行使した場合、消費者がすでに商品を使用していたとしても、業者は使用利益を消費者に請求できず、また、すでに役務提供を受ける等していたとしても、業者はその対価を消費者に請求できません。なお、対価には含まれない入会金や預託金等も同様です。
クーリング・オフは通知を発信したときに効力が生じます(*発信主義)。8日とか20日といった期間内に消印が打ってあればよいのです。仮に業者への通知の到着が遅れ期限内に届かなかったとしても効力は変わりません。
特商法上のクーリング・オフの起算日は契約書類を受取った日です。したがって、契約書をそもそも受取っていない場合や契約書面にクーリング・オフできる旨の記載がないなど、重大な不備があった場合には8日とか20日といったクーリング・オフ期間が進行しません。
いざクーリング・オフをしようとすると、一部の業者はあの手この手を使って何とか阻止しようとしてきます。例えば「もう材料を発注したから勘弁してください」とか「商品使っちゃったんでしょ?もうだめですよ」とか「金額がご不満なら値引きしますよ」とかいったように。あるいは直接訪問して長時間口説きにかかるという業者もいます(*これも違反行為。こちらを参照)。
クーリング・オフはどういうものかということをを把握しておけば、妨害行為を跳ね返すこともできましょう。
なお、当事務所で実際にみた某業者の契約書には「クーリング・オフをする権利を放棄することを承諾した」なんて堂々と書いているでたらめなものもありました。知らなければ「そんなものか」で終わってしまうかもしれません。クーリング・オフは消費者保護のための誰にも阻止できない「絶対的な権利」です。通知を受け取った後に業者から連絡があった場合でも毅然とした態度を貫いてください。
(4)クーリング・オフ通知の文面
クーリング・オフの通知の書き方ですが、よく内容証明の本や消費生活センターのロビーなどにおいてあるパンフレットのお手本ではこんな感じになっています。
通 知 書 私は自宅において訪問販売で貴社と次の契約をしましたが、これを解除(クーリングオフ)します。 契約年月日 平成○年○月○日 商品はお引き取りください。代金は返してください。 平成○年○月○日 ○県○市○町○丁目○番地○ ○県○市○町○丁目○番○号 |
いやにあっさりしていますが、これはこれでクーリング・オフの効果に問題はありません。ただ、実際には商品を引き取りにきて欲しい日時や返金方法は口座振込みなのか郵便なのかといったスケジュールをある程度は提示しておくべきでしょう。なお、クーリング・オフの申出を電話すると、再勧誘してくる業者もありますから、電話でやり取りしなければならない場合には長時間は避け、手短に事務的な用件だけを伝えるようにしましょう。
なお、期間が過ぎた場合の記載例は別ページにあります。こちらからどうぞ。
当事務所では、通知書作成代行を8,200円から承ります。詳しくはこちらを!
(5)「クーリング・オフ妨害解消のための書面」とは?
クーリング・オフを妨害するため、業者が消費者に対して不実告知で誤認させ、あるいは威迫で困惑させクーリング・オフを妨害した場合には、クーリング・オフの期間が過ぎていても、なお、クーリング・オフをすることができます。
そして業者が自ら「依然としてこれから○日経過するまではクーリング・オフできる」旨を記載した書面」を改めて交付し、消費者がその書面を見ていることを確認した上で、消費者に対してさらに「これから○日経過するまではクーリング・オフできる」こと等を口頭で説明すれば、消費者はそのときから8日とか20日といった本来の期間だけクーリング・オフができます。なお、上記口頭での説明がなかった場合には業者は説明義務を果たしたことにならず、消費者は例え書面の交付を受けていたとしても、その消費者は依然としてクーリング・オフできるものとされています。
しかし、この書面を交付することは、業者としては罰則の重い不実告知や威迫行為をしたことを自ら認めるところとなり、ありえないことだといわれています。結果として、このようなクーリング・オフ妨害があったときは、いつまでもクーリング・オフができるときと考えていいのではないでしょうか?
(6)個別クレジット契約のクーリング・オフ(割賦販売法)
平成21年12月1日より、改正割賦販売法が施行されました。改正前の取扱いでは、クレジットを利用して訪問販売等で商品等を購入した場合には、割賦販売法上のクーリング・オフもすることができましたが、この場合、特商法の指定商品等に該当する場合には、割賦販売法上のクーリング・オフの規定が排除されていました(旧割賦販売法第30条の2の3第1項、同第8項1号)。
この為、ほとんどのケースでは、特商法に基づき販売業者に対してはクーリング・オフを行使して、その上でクレジット会社には支払停止の抗弁(*詳しい説明は別ページを参照)を主張して支払を拒絶するという方法が実務上の通例でした。
改正後は、個別クレジット(個別信用購入あっせん取引)を利用して訪問販売等で商品等を購入した場合には、クレジット契約そのものを上記のような制限なしに割賦販売法に基づいてクーリング・オフすることができるようになっています(法第35条の3の10〜11)。さらにこの場合、クレジット契約をクーリング・オフすれば、購入者等が反対の意思表示をしている場合を除き、同時に販売契約もクーリング・オフされる取扱いです。
なお、改正により従前の「割賦購入あっせん取引」は「信用購入あっせん取引」と名称が変わっていますが、この信用購入あっせん取引は「包括方式(*クレジットカードを使う方式)」と「個別方式(*自動車の購入のように、ショッピングしたその都度クレジットを組む方式)」にわかれますが、この割賦販売法によるクーリング・オフ制度は個別方式のみに認められていますので、クレジットカードで商品等を購入した場合には、改正前の方法と同じく、特商法に基づき販売業者に対してはクーリング・オフを行使して、その上でクレジット会社には支払停止の抗弁を主張するという方法を取ることになります。
割賦販売法によるクーリング・オフ制度の概要は下記のとおりとなりますが、特商法のクーリング・オフとほぼ同様のものと考えてよいでしょう。
クーリング・オフ期間は、訪問販売やマルチ等、販売の態様により8日あるいは20日になっています。
クーリング・オフ期間の起算日は書面交付の日です。
書面で行うことが必要です。
発信主義を採用しています。
クーリング・オフの行使により販売業者やクレジット会社側に損失が発生しても消費者に損害賠償を請求できませんし、違約金も請求できません。
クーリング・オフの適用除外となる場合は、商品が自動車だった場合や購入者が営業のために契約締結した場合など特商法の場合とほぼ同様です。
詳しくは「クーリング・オフできない場合」のページをご覧ください。
クレジット契約をクーリング・オフすれば、購入者等が反対の意思表示をしている場合を除き、販売契約もクーリング・オフされます。
販売業者はクーリング・オフがあった時点ですでにクレジット会社から立替金を受領しているときは、これをクレジット会社に返還しなければなりません。
クレジット会社はクーリング・オフがあった時点ですでに購入者からの既払金があるときは、これを購入者に返還しなければなりません。
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