特別縁故者に対する相続財産分与の制度とは?
相続が発生したにもかかわらず,相続人が誰もいない状態を
相続人不存在といいます。
このような場合はその相続財産は国庫に帰属するのが原則です。しかし,相続人が存在しない場合でも,内縁の妻や事実上の養子など,被相続人と深い縁故を持っていた者があれば,財産を国庫に帰属させるよりもこれらの者に与える方が適切な場合も考えられます。
そこで昭和37年の民法改正により,特別縁故者に対する相続財産の分与の制度が創設されました。
相続人の捜索・清算手続きを経た後,特別縁故者は家庭裁判所に対して,被相続人との関係を明らかにして申立を行い,特別縁故者と認めてもらえれば相続財産の分与を受けることができます。この手続きを経て,なお相続財産が残っているときは最終的に国庫に帰属することになります。
この相続財産分与の申立を行なう場合,財産を管理する相続財産管理人が家庭裁判所に選任されてから,清算手続きに掛かる10ヶ月が経過した後,3ヶ月のうちに行なわねばなりません。
[TOPページへ]
配特別縁故者と認められる者とは?
民法では被相続人と
生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者と定めますが,誰に,何を,どれくらい与えるかのかといったことは全て裁判所の裁量によります。次のような者は特別縁故者と認められます。
●内縁配偶者
●事実上の養子
●おじ,おば
*相続人でないものの生活をともにしていたおじ,おばも特別縁故者として認められた例があります。
●後妻からみた先妻の子
●法人など
*地方公共団体,宗教法人,学校法人,財団法人,権利能力なき団体のいずれも特別縁故者になりうるとされています。
また,そのほかには50年以上にわたりよき相談者となった
教え子,特別に経済的援助を続けた
経営者,被相続人の信頼を受けて精神的支えとなった
元従業員が特別縁故者として認められた例があります。反面,
妾関係にあった者については公序良俗に反する関係であることから,判例は否定的な見解に立っています。
[TOPページへ]
問題となる財産
特別縁故者に分与されるのは
清算後残存すべき相続財産ですが,問題となる財産があります。
●共有財産
最高裁は共有持分について,特別縁故者に対する財産分与の対象となり,分与がなされず残存したときは民法255条によって他の共有者に帰属するという旨を判示し,255条優先説を採用しない立場を明らかにしています。
●不動産の賃貸借
借地借家法36条において,「居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において,その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが,建物の賃借人と事実上夫婦または養親子と同様の関係にあった同居人があるときは,その同居者は,建物の賃借人の権利義務を承継する」と規定しています。また,判例では家屋敷地の賃借権も承継が認められるとする見解です。
●死亡退職金
死亡退職金は相続財産に含まれないと解されています。これについては死亡者の勤務先においてどのような範囲の者に支払いをするかで決まりますので,内縁配偶者等でも支払われるかどうかを勤務先に確認したほうがよいと思われます。
●遺族給付
労災や社会保険の遺族給付では多くの場合,内縁の妻といった場合には配偶者に準じて支払うように規定されています。
●墓地
分与の対象となるとした例があります。
●農地
分与の対象となります。遺産分割の場合と同じく農地法の許可は不要です。