店名 スペイン料理 バル・エンリケ
所在地・連絡先

住所・世田谷区北沢3−1−15コーポ稲毛

電話・03−3468ー0430

営業時間・18:00〜22:30L.O.

定休日・日曜ただし第四・五日曜は営業

紹介文(by 金子隆)

 スペインには「バル」と呼ばれる飲食店があり、これが美食家にはこたえられない。オリーブや鰯の酢付けなどのお好みの小皿とワインがコイン数枚で提供されるのである。昼間っから買い物途中の主婦がクイッとやり、さらりと帰ったりしている。夜ともなれば男どもも集まりサッカー談義に華咲かせ、ずらり並んだ料理を小皿に取って舌鼓を打つ。

 けれども日本では、スペイン料理といえばパエリャにトルティージャ。店構えこそ立派なレストランが多いが、妙に型にはまり、あの開放感に乏しい。その点、本日紹介の東北沢駅至近「バル・エンリケ」は、本場「バル」楽しさを再現している。

 カウンターのみ9席。主人が一人、気合いの入った面もちで調理する。黒板に細かい字で品書きがずらり。一癖もふた癖もある品々だ。主にバスク地方の料理とか。さっそくサングリア(950円)を注文。オレンジが浮かびちょい濁り加減で、ほど良い甘さ。

 まず気になるのが、カウンターに鎮座する、木型にはめこんだハム。皿に薄くそいでもらい(ハモン・セラーノ、1000円)噛みしめると、こ、こりゃうまい。さすがハム界最高峰。塩味に脂がかぶさり、噛みしめると次々に味が追ってくる。

 「いわしの酢漬け」(600円)。片身が楚々と並び、オリーブオイルと酢、ニンニクのみじん切り添え。いや、脂が乗って、締め方が絶妙だわ。寿司屋でもなかなかこうは行かんて。「ムール貝のワイン蒸し」(950円)はぐらぐら煮える深目の皿から豪快に貝殻が覗いて登場。貝もうまいがオニオンスープ風の汁がまた絶品。パンを漬けてすする。ワインは一番高いので4200円と格安。やっぱり夏は白ということで、「マーティン・コダック」を。すっきりして一連のニンニク味に合う。

 箸休めで「野菜のトマト煮込み冷製」(850円)。ナス・赤ピーマン・ズッキーニ・さつまいもが胃に優しい。次の「タコとガルバンジ豆のトマト煮込み」(950円)。このタコが芯まで舌で崩れるほど柔らかい。

 最後は黒板でも赤丸付き、お薦め「あさりのリゾット」(1500円)。白米から微妙に芯を残し、丸ごとのニンニクとあさりが結構なハーモニー。おじやとは似て非なる味わい。デザートの「バナナ・シナモン・クリーム」(400円)も筆舌に尽くしがたくうまい。美食の連打である。

 狭い空間にスペイン食文化の広さが凝縮される、気鋭の一軒だ。

ひとこと 2002年7月12日掲載。店主は短髪で実直な鮨職人のように怖い顔をしているが、その癖老人カップルが来るとメニューの黒板をそっと近づけるなど、なかなか優しい一面を持つ。それにしても東北沢駅は、線路を挟んで逆側に焼き肉の「炭火○一」本店が越してきたなど、今注目のスポットだ。