店名 庵(いおり、阿佐ヶ谷北)
所在地・連絡先 杉並区本天沼1−1−4
5373−6631
11:30〜8:00(中休みなし)
定休は月曜日
紹介文(by 金子隆)  阿佐ケ谷は今、知る人ぞ知る手打ちそばの名所。南口にはマスコミにもしばしば紹介される「慈久庵」、その間近に酒肴に力を入れる「みや野」、また立ち食いなのに客が来るとやおらそばを延ばし始めるユニークな「万吉」。北口には池袋の名店からののれん分わけ「一栄」が。そんな超激戦区に、市ケ谷(曙橋)で十七年も名を馳せた「庵」が、満を持して今年二月に引っ越してきた。

 場所は北口、旧中杉通りを十分も歩いた商店街のはずれ。戸を引くと、新築和風家屋らしい木のいい匂いが出迎えてくる。すっきりとした白壁が清潔感を漂わせ、奥はガラス越しにそば打ち台が見え、手前にゆっくりと石臼が回る。テーブル、座卓ともに三つ。

 座敷に腰を落ち着けて、気さくそうなおかみさんに、まずは三色天ぷらそば(二〇〇〇円)からお願いする。一色は変わりそば、本日は「しそ切り」。白く透き通ったさらしなに青いしそが鮮やか。せいろはのど越しすっきり、田舎そばは力強い。二匹のエビ天は水分もよく飛び、尻尾までカリカリ。ご主人は、「そばをその日使う分だけ石臼で挽きたい」との一心で評判の店を閉めて転居してきたそうな。端麗なそばに体が洗われるみたい。

 続いて、そばがき(一二〇〇円)。そば粉を団子状に練ったものだが、ここのはつゆも温めてあって、ねっとりした歯ざわりが堪能できる。焼き海苔にくるむと、うーむ、これは素朴な食べ物とは思えないほどの上品さ。

 仕上げは甘味の伊吹だんご(抹茶付き七〇〇円)。手間と時間をかけて練り上げた品で、主人が修行した宇都宮の一茶庵で扱っていたものをここで復活させた。甘すぎず、そば湯にほっとした後で口がなごむ。ちなみに、つゆが関西風のうどんもなかなかの出来。

 駅からは少々歩くが、しゃれた喫茶店が並ぶ中杉通りや早稲田通りにはパーキングがある。「阿佐ケ谷そばツアー」に女性を誘えば、成功間違いなし、かな?
データ せいろ   七〇〇円
さらしな 八〇〇円
変わりそば 九〇〇円
三色そば  一二〇〇円
ひなせいろ 一〇〇〇円
かも南ばん 一四〇〇円

《酒》 菊正・上善如水・菊水など、五〇〇〜 八〇〇円
《つまみ》
鴨の柳川      一一〇〇円
焼きみそ      三〇〇円
やまといもの磯辺揚 七〇〇円
ひとこと 1997年10月27日掲載。慈久庵、一栄、みや野と続く蕎麦ロード阿佐ヶ谷で、もっとも安定した蕎麦を提供する(万吉は閉店)。ただし駅からは徒歩十分はかかるので、注意。とはいえ昼休みがないのも良い。いかにも実直なご主人と女将さん。職人気質の蕎麦の神髄を味わえる。そば湯の熱さ、濃さは出色。食べ終わった後、腹がすっきりする。