店名 まき村
所在地・連絡先

住所・品川区南大井6−19−10小沢ビル1F

電話・03−3768−6388

営業時間・17:30〜22:00(ランチは要予約) 

定休日・日曜

紹介文(by 金子隆)

 料理の創造性って何だろう?新しいレシピを作ったり、新しい素材を使ったりするのも創造性ではある。けれども「創作料理」の看板を掲げる店の料理は、たとえ旨くとも、食べてなんとなく疲れてしまう。

 その点、伝統の技の凄さを見せてくれるのが、JR大森駅と京浜急行の大森海岸駅の中ほどで営業13年になる日本料理の「まき村」。週に一度変わるほど多彩なメニューや色彩にも気遣った美しい盛りつけが極めて創造的。それでいて、疲れた胃の腑にやさしい味わい、値段もリーズナブル

 コースは、一の懐石(6000円)、二の懐石(8000円)、三の懐石(1万円)があり、それぞれ食事付きで2000円プラス。この日、私は二の懐石に食事付き。まずは梅酒でのどを潤して、「先付け」は「長いもそうめん」。いくら・おくら・海苔がそうめん状に細切りにした長いもに乗り、卵黄がかかっている。これは美しい!赤・緑・黒・白・黄色が色鮮やか。味は全体をとりまとめる「美味出汁(うまだし)」が絶品。

 皿に六種盛られた「前菜」も美しい。車海老の蓑虫揚げ。細切りの揚げ芋が蓑虫の雰囲気を出す。銀杏に甘栗。ほのかに苦い秋刀魚の友肝焼き。柿と林檎の白和え。表面ぱりぱりの長唐辛子は辛い!で、食べ終わると敷いてあった紅葉や柿の葉が現れる趣向。ああ、秋だねえ、と思わず見惚れる。

 「椀」は松茸と鱧の土瓶蒸し。すだちをしぼれば、酸っぱさと熱さの饗宴。「向付」は、天然ものでコリコリの平目にトロリとした甘エビ。「志乃ぎ」は春菊・赤と黄のピーマン・しいたけなどの「きの子サラダ仕立て」。「焼き物」は柳鰈の寄せ鱧焼き。

 ここで大団円、名物「鯛茶漬け」だ。胡麻ダレに薄くそいだ鯛をかき混ぜ、まずはご飯に乗せて食べる。ご飯は席ごとに炊きたて、湯気までもがうまい。二膳めは出汁をかける。刺身が半分湯引き状になり、こ、これはたまらん。五臓六腑に染み渡るとは、まさにこのこと。夏の疲れが癒されるなあ。ぷるぷるの胡桃豆腐にキナコをまぶし、あんこと食すデザートまで、夫婦に若い衆が二人の小体な店だが、実にテンポ良く出てくる。

 いや、極楽。和の伝統の創造性を思い知った一夜であった。

ひとこと 2001年9月28日掲載。実は取材当日、夏風邪でダウン寸前。食欲も何もなかったのだが、まき村の懐石には助けられた。なにより胃の腑に優しい。どれも美味出汁のおかげでしみるうまさであった。そして最後には鯛茶。いや絶品。全身にまで染み渡ったのであった。不便な駅にあるが、わざわざ行くだけの価値あり。学校の先生のような風情のご主人が、魔法のような手さばきで次々に料理を出してくれる。店内もさっぱりしている。