店名 中国食文化館 春

所在地・連絡先

住所・港区麻布十番1−5−10

電話・03−5474−4380

営業時間・18:00〜

土曜は17:00〜

定休日・日曜・祭日

紹介文(by 金子隆)

  大江戸線の開通した麻布十番で、開業九年になる中華料理屋。主人一人が作り手だ。といえば下町っぽい雰囲気の店かというとさにあらず。まるで現代芸術のような不思議な店内。カウンター中心だが、階段には紹興酒のカメ、上からはおこげやら干物の魚、腸詰めに蟹の甲羅まで吊してある。目の前には氷の上に食材がところ狭しと敷き詰められ、ほうれん草などは時にざんぶと水をかけられる。雑然としているようでいて整然、まるでアジアのバザールのノリ。

 で、料理の出方も実に不思議。「嫌いな物は」、と聞いてはくれるが要は完全お任せスタイル。芸術家然とした風情の主人が、カメを割ったかのような不定形の皿に乗せて、怒濤のごとく次から次へとうまいものを出してくるのだ。

 まずは三皿、甘エビの老酒漬けから。これにはいきなり絶句。ガツーンとくるうまさだ。とろりとしたエビの身とミソの味が、ピリリとほろ苦い中国酒につかって増幅している。次は殻付き海老の干物のようなもの。囓ると粘る食感がある。身がついている。こっちは輸入物、甘エビの干物だそうだ。それに蒸しナス。生のクコの実の赤い彩りが美しい。こりゃビールを注文するしかあるまい(大・600円、小450円)。

 ピリ辛の野菜と海鮮のいためもの。赤と青のピーマン、長ネギ、フクロタケに海老・イカがごろごろ入ってる。強烈な火力で一気にいためてあり、食材の固さが微妙に残り、牡蠣油にまみれている。

 妙なものが出てきた。油でじわじわ揚げたトンカツのごときもの。黒豚だという。ガリリと囓ると、カレー味がツーンと舌を刺激する。後を引くではないか。脂が落ちて、どの部位も粘る固さ。こりゃ箸が止まらん。思わずカメの紹興酒(500円)を頼むと、これまた絶品。ビン詰めとは違い、ひっかかりがなくさらりとしている。続いて再び野菜と海鮮のうま煮。

 大きなセイロを何段重ねかして何か蒸していると思ったら、饅頭のような物が出てきた。「包(パオ)だよ」、と主人。あずきと豚肉が入ってる。隣席には魚のセイロ蒸しが出ていた。あっちもうまそう。最後は坦々麺。ザーサイに干し蝦、みじん切りのネギが満載で。いや、満腹。

 聞くと、海老だけで百種は出来るから、どれだけのメニューがあるか不明とのこと。完全日替わり。飲み物別、平均して5000円程度。中華のめくるめく世界に誘う異色の店だ。要予約。

ひとこと 2002年5月24日掲載。ここには本当に驚かされることが多い。カメを割ったカワラケような皿をひょいひょいと取り出して料理を出してくるのにも驚くが、再訪した折りにも、私が記事を書いた記者であることを主人が何も言わないのに覚えていたのには驚いた。そういえば同伴した人も、以前行ったとき、カウンターでひそひそと「香草が苦手でー」としゃべっていたところ、知らん顔しつつ彼女のみ香草ぬきで出てきたという。この店は本当にあなどれない。