| 店名 | 徳助 |
| 所在地・連絡先 |
住所・世田谷区尾山台3−10−10−B1 |
| 紹介文(by 金子隆) |
寿司はネタの激安化で大衆店が隆盛だが、伝統的な握りを新たな感覚で供する店となると、意外に少ないものだ。酒肴を取りそろえる方向に工夫が向かい、握りそのものの革新は目新しい寿司ダネを使うに止まりがちだからだ。その点「徳助」の握りは、まるでマジック。包丁による造形ひとつで魚貝が色気ある貴婦人のごとき品を作って見せるのだ。 場所は自由が丘から二駅の尾山台。駅前商店街は新興の下町とでもいうか、すがすがしく親しみのある街並み。四四歳の店主がこの雰囲気を気に入り店を構えたというだけあって、間口には老舗の威圧感がなく、入りやすい。店内にはクラシックが流れる。 まずはビール。つまみを頼むと刺身が出てきた。身の芯までコリコリのカレイ、脂の乗った関アジ、ぽてっと色っぽい青柳。それぞれ生きているかのように切り口が張り出している。付け合わせはミョウガ。伝統の寿司店は季節の流れを感じさせるなあ、と杯をグビリ。 寿司はお任せにする(目安は一人十分に食べて一万二千円見当)。ネタは築地だけでなく川崎の市場と九州からも毎日届く。握り手は一人のみだが、カウンターの奥の木箱にはばっちり仕込みのしてあるネタが整列、鮮やかな包丁さばきで次々に出てくる。すべて一ハケの煮切りが。関サバは、胡麻が乗ってふわっとふくらむような甘さ。関サバは締めると特徴がなくなるため生だが、煮きりと胡麻で生臭さが消えている。九州では胡麻醤油を使うところからの発想とか。 生鳥貝は身が厚く、歯がジョリっと刺さる。身の厚さで春を感じるんだなあ、これが。片身で一カンの春子(かすご)鯛はハナダイの子、これも春の風物詩。ブリは白い筋びっしりピンクの身に走り、辛みダイコンを乗せて。じゅっと脂が口内に広がる。こちらは行く冬を忍びつつ、口福至極。 走りのアオリイカはまだ固いが、江戸前の仕事のしてあるネタはさすが味が深い。煮やりいか、大ぶりの煮はまぐり、シャリを包み込むアナゴ、蛸の桜(柔らか)煮など。中でも圧巻は煮アワビ。半生で表面がつるつる、舌にびらびらが柔らかく当たり、そっと噛むと潮の香が口一杯に充満するのだ!なんと官能的な。 品数は多く、オニカサゴ・ホウボウ・メジマグロからお菓子のような玉子まで二十個いただいたが、ネタは尽きず。江戸前の技術を斬新に生かす、風情ある名店だ。 |
| ひとこと |
2001年4月6日掲載。 ここのご主人は料亭で修行したそうで、寿司の外見がなるほど見事に美しい。はっきりと見栄えに意識が向いていることが分かる。包丁の切り口も鮮やか。それでいて、手は驚くほど早い。ほいほいっという調子で次々に出てくる。下町にあるため話題にはなりにくいが、気負いのなさが新時代を予感させる店だ。 |