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関越道バス事故と高速道路会社の責任(2012年5月3日記)New !
ヨーロッパのトラック走行距離課金について(2012年2月18日記)
ヨーロッパの「有料道路拡大」の動き(2011年1月25日記)
4月29日の早朝に関越道藤岡ジャンクション付近で起きたツアーバス事故は、7人が死亡、3人が重体なのに加えて重軽傷者36人、バスの車体は見るも無惨に切り裂かれていて、外から見ただけでも車内の凄惨な状況が推察されます。直接の原因は運転手の居眠りで、バス会社の労務管理に問題があるとして国交省が道路運送法による特別監査が行われています。競争が激しいこの業界で、運転手に相当過酷な勤務が強いられていることは周知のことでしたし、厳しい監査によって改善される必要があることは当然のことです。
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4月30日 朝日新聞から
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写真の右側・中程にガードレールのU字型に巻き込んだ端末が外側に少し押し倒されています。バスは手前でガードレールに接触してこれを倒しながら暴走し、鉈の刃のように立っていた防音壁にめり込んで行ったことを示しています。
片付けが済んだ後の右下の写真でも、ガードレールと壁との間に衝撃緩和用のプラスチックドラム1個分の隙間があることが分かります。
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5月2日 毎日新聞から
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高速道路が開通したばかりの頃に、似たような事故がありました。乗用車がガードレールに串刺しになり、運転者か助手席の人が即死するという事故です。当時、ガードレールは車線と並行に設置されていました。欧米では早くからガードレールの始まりの部分は大きく内側(山側)に曲げられたり地中に埋め込まれていました。衝突しても命は助かる形です。
日本でこの改良が済む迄に、相当の期間がかかったと記憶しています。東京新聞の記事(5月2日付け)によれば東日本高速道路社はガードレールの端を防音壁の土台部分に埋め込む工事をする方針を明らかにしたそうです。もっと早く気がついて対処してくれていれば・・・と残念です。
国交省の「防護柵の設置基準」という通達では「異なる種類の防護柵(筆者注 例 ガードレールとガードロープ)を隣接して設置する場合、柵を連続させる」ことを、1999年の新規整備分から適用していて、今回の事故地点は改定前の84年の工事で、会社は「違反ではない」と言いたげに聞こえます。しかし今回の場所は全く別のケースで「運転を誤っても極力安全を守る」というfail-safeの視点から、利用者の安全第一に措置しておくべき箇所だったと思います。
朝日の5月2日の投書欄に、1級建築士の女性の方が「事故の映像をテレビで見て、思わず「あっ」と叫んでしまった。明らかにガードレールと防音壁の設置方法に欠陥があると思ったからだ。」と書いておられます。また、前記の東京新聞にも東京のソフトウエア技術者の「今回の事故現場でのガードレールの設置場所は安全上、重大な欠陥だ。・・・・・ガードレールを放置してきた東日本高速道路の責任が問われかねない」という指摘を紹介しています。これが常識でしょう。バス会社、運転手だけの責任では済まされない事案ではないでしょうか。
来る4月14日に、新東名の御殿場JCT(ジャンクション)〜三ヶ日JCT間162km(左図の太い赤線部分)が開通します。事業主体の中日本高速道路会社(以下「会社」と略称)では「一度に162kmもの高速道路が開通することは、日本の高速道路開通史上最長」であることを誇らしく宣伝しています。不況の中で、仕事が少なくて困っていた建設業界の大活躍に助けられて、予定よりもかなり早く完成にこぎ着けたことも自慢できることでしょう。
昨年暮れに、フランスの約15,000kmの無料の高速道路 =Autoroute を利用する3.5トン以上のトラックから走行距離に応じた料金を取るシステムの発注について、10月27日にEcomouv社とフランスの交通担当省(略称 MEDDTL)との間で正式契約がおこなわれたと書きました。
今年1月19日付けのTOLLROADSnews の記事によれば、Ecomouv社は既に左図の車載器(On Board Unit)だけでなく、ガントリーの仕様も公開したようです。5.8GHZのDSRC(専用狭域通信)と、衛星通信機能としてGPSのほかに、GALILEO(EU型)に加えてGLONASS(ロシア型)の機能も搭載しています。
運用開始の予定は2013年の後半ですから、準備期間としては十分でしょう。
ガントリーは固定式170箇所、可動式(Movable)130基、移動式(Mobile)200基を計画しています。可動式と移動式の区別がよく分かりませんが、移動式はパトカーなどに搭載して不法通行車の取締に使われる機器と思われます。
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フランス・トラック用のETC
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現在、フランスでは乗用車用とトラック用の車載器が別々に数種類ずつ出回っているわけですが、Ecomouv社の汎用機の出現によって統合の方向に動くのかどうかは、車載器の価格の動向によるのではないかと考えます。

もう一つ とラック用ETCに関する動きがありました。昨2011年11月から開始されたTOLL2GO 計画です。一言でいえば「ドイツとオーストリアのトラックETCの相互乗り入れ」ということになります。オーストリアが一足早く、2004年1月からGPSを使った"GO-BOX"という名前の車載器を使って、3.5トン以上のトラックから高速道路の料金をとり始めました。
ドイツは1年遅れて2005年1月から、GPSとDSRCを併用する"TOLL COLLECT" という車載器を12トン以上の大型トラックに装着するシステムの運用を始めました。オーストリアが自分の国内専用なのに対して、ドイツはヨーロッパ中どこでも使えること、料金支払いだけでなくトラックの運行管理にも使えるのがうたい文句でした。(「ETCのシステムと運用」のページの「ドイツ・アウトバーンのETC」参照)
今回のTOLL2GOの眼目は、オーストリアのGO-BOXでもドイツ国内のトラック料金の支払いが可能になるということのようです。
EUでは、2009年10月に全域のETCの統一基準 EETS(European Electronic Toll Servise)を3年以内に決定することが決められています。フランスのEcomouv(実態はイタリアのAutostrade社製)がこの基準に合致していれば万々歳ですが、まだ詳細が分かりません。
EUとしては、環境負荷を少なくすること、道路交通の効率化を図り新規の道路投資・環境投資を抑制すること、既存の有料道路とトラック課金との相互関係を明確にすること という高尚な理念に基づいて、熱心にトラック課金に取り組んでいます。参考までに、現在のEUの基本的なトラック料金の料率表を掲げておきます。
ところが、一例としてEUでは3.5トン以上のトラックを課金の対象として規定しているのに、ドイツが12トン以上にこだわっていて譲歩が実現しません。一方、オランダ、ドイツには乗用車も含めた全ての車の有料化=走行距離課税へ移行すべきではないかとの意見も残っています。
日本では本四の料金値下げの資金を他の高速道路会社に負担させる議論が始まっています。高速道路無料化の断念が先決ではないでしょうか。
今日から首都・阪神高速道路の料金が「対距離制」に変わりましたが、これについては後で触れることにします。
最初に、若干遅れましたが昨年暮れ、国交省の「高速道路のあり方検討有識者委員会」が12月9日に発表した「中間とりまとめ」に関連した諸問題についてご報告しておきます。この委員会は昨年の3月末に設置され、最初の仕事が大震災を受けた東北地方の高速道路の料金を無料にする「答申」を出すことでした。
座長は三井物産出身の評論家・寺島実郎氏です。TVで良くお見掛けしますが、いつもダブルの背広を着込んでおられた方です。他の委員は大学教授、経済団体の役員などです。
政府の委員会の委員は、予めそれまでの発言、論文などを精査の上、最終的に政府の意見に反対しない方が選ばれるのが通例です。(唯一の例外が道路公団民営化委員会だったといわれています。)
「中間とりまとめ」の基本思想は、1. 強くしなやかで国際競争力ある21世紀日本の形成 2. 総合的な交通体系の中での道路システムの最適化 3. 持続可能なシステムに向けた公正な負担の実現 だそうですが、38ページの報告の中で、その思想が具体的にどう活かされたのか、極めて曖昧です。
例えば「ネットワークにあり方」でしばしば強調されるネットワークの確保、ミッシングリンクの解消(この二つは本来一体のもの)の新たな整備方式として「走行性の高い国道の活用」が上げられていますが中身が判りません。高速道路に並行する自動車専用道路だったり、地域高規格幹線道路では全く新味がありません。
また「公正で合理的な受益者負担の実現」については、直轄の無料高速道路を残しておいて、「自動車ユーザー以外の主体」や「便益を共有する地域」にも負担をもとめるというに至っては、全く理解不能です。
マスコミが取り上げたのは「ミッシンクリンクの解消」の一例でしか無い「東京外環道の着工」が殆どでした。唯一、変わったのが上に掲げた12月10日付日経の「高速道の『永久有料』検討 建設費返済後の維持費徴収」位でした。
この永久有料も、償還が済んだ後でも維持管理費だけは頂くと言う意味で、昔から建設省、公団の間で暗黙の了解事項とされていた考え方です。問題は、その償還自体が、赤字がどんどん増えるばかりで見通しが立たないことでした。公団民営化の議論が始まったのも、それが出発点でした。今回、それを持ち出した理由は何故でしょうか。
考えられるのは、国交省が、償還の見通しが益々難しくなっている現状を認め、高速道路の永久有料化の布石を打ったのではないかと考えます。現在の償還状況が分かれば良いのですが、元々、保有機構と会社の関係も入り組んでいる上に、割引、無料化の実験などが入ると本当の姿が見えません。委員会でも多くの資料が配られていますが「非公表扱い」になっていて分かりません。
一般道路への課金も必要ではないかという意見や、PPP/PFIによる民間資金の活用など、欧米の事情をご存知と思われる委員の意見も出されていますが、一括して今後の課題として先送りされています。
今や世界最大の債務を抱える国として、財源調達が深刻な課題です。ネットワークの重要性をいくら強調しても財源を確保しなければ絵に描いた餅に過ぎません。民間資金の調達を可能にするためにも、現在の民営会社方式が如何に民営化の名に値しないか、結果として公団民営化の見直しの必要性が議論された様子が見られないのも冒頭に上げた「御用委員会」の限界でしょう。
最大の疑問は、高速道路無料化は民主党がまだマニフェストから下ろしていない重要政策の一つである筈ですが、有料制継続を前提にした議論が堂々と行われていることです。最近の議事録を読むと、全ての会議に民主党員である国交大臣、副大臣、政務官も出席して議論に参加しています。
流石に12月13日の記者会見で、前田大臣が問わず語りに次のように述べています。
「(前略)それから、有識者委員会において負担の問題についてもご指摘を受けたと思いますが、利用者負担で管理している高速道路については、適切にその機能を維持していく観点から、償還後も利用者に負担を求めていくことも含め、幅広く検討すべきとされたわけです。
マニフェストとの関係等もご指摘かと思いますが、これは、党において更にこれから議論していただくことになるかと思いますが、私も当時のことを思い出すわけですが、作るほうについては、高速道路というものをこれからもどんどんということではなく、よほど検証して進めようということだったのですが、時代が出来上がって供用している施設の維持管理・更新の時代に急激に入ってきた。道路もそうですし、よく言われる全国の鉄橋などは相当数、今危険な状況になっております。(以下略)」
利用者負担で管理している高速道路(直轄高速道路は除くという意味)の利用者負担は、現在は勿論、将来も当然だと公言しているのですから、マスコミは勿論、野党も政府、与党のマニフェスト違反を厳しく追求すべきではないでしょうか。
最後に首都・阪神高速道路の対距離制について簡単に触れておきます。これは2007年以来申請が凍結されていたものです。当時から対距離制導入の目的は「料金負担の公平化」を最大の理由に挙げていました。しかし、本当の理由は「料金値上げ」でした。首都高を例に説明します。
2002年の中央環状王子線(江北〜板橋間)の開通時に、普通車700円の通行料金を800円に値上げする申請を出しましたが、民営化の議論のとばっちりで、取り下げさせられただけでなくETC割引で80%以上の利用者は500円で走れるようになってしまっていました。
そのあと2007年には板橋〜新宿間が、2010年3月には新宿〜渋谷間が開通し、品川線も2013年の開通を目指しています。
王子線だけでも約3千億円の工事費がかかり100円の値上げが必要でした。中央環状線の西側3区間で2兆円に近い建設費がかかりますから、少なくとも普通車一台あたり500円位の値上げ、つまり従来の普通車の均一料金700円を1,200円にするほどの値上げの必要性に迫られていました。そこで利用距離によって高くなる区間ができる代わりに安くなる区間もできる対距離性を考え付いたのです。一度この方式に変えておけば、後の値上げはキロ当り単価を一円ずつでも上げることも出来ますから、抵抗も少ないのがミソです。
採算に合うキロ当り単価から計算した最遠料金は約2,700円でした。これを「軽減措置」によって上限額を低く押さえても1,200円位にはしたいという希望でした。しかし、各方面から1,000円以内に押さえるべきだと言う要求が強く900円で決まったのですから、当てにしていた収入増は期待できない結果になった筈です。
ここでも、償還は困難と諦めて、末永く有料制を続ける決断をしたと見るべきでしょう。元々、民主党も「無料化したら渋滞する区間は対象から除く」と説明していましたから、都市高速の永続的な対距離制導入は大手を振って実行できる訳です。
ただ、「中間とりまとめ」に、「都市高速は ETC 利用車だけに限定すべきだ」という提言も付いていますが、これは間違いです。特に、年に数回地方から上京して来る車こそ都市高速が必要ですし、たまにしか利用しない車にも都市高速の利用の機会を与えるべきです。方法は簡単です。ナンバープレートを撮影して手数料を上乗せして所有者に後払いを求めれば良いのです。このシステムは、欧米では広く導入済みで、現在、野放し状態に近い ETC の不正利用を防止するためにも不可欠なものです。
民主党が「高速道路の無料化は止める」と決断して公表に踏み切れば、道路公団民営化の抜本的見直しを含めて、高速道路に関連する問題の解決が加速されることは疑う余地がありません。
年頭にあたり、民主党が早急に「無料化」を取り下げ、高速道路に関連する諸問題解決のために、官・民挙げてオープンで活発な議論が始めめられことを期待して止みません。
走行距離課税とは何だったのか、もうお忘れの方も多いと思います。それもその筈、アメリカで「2020年までにガソリン税から走行距離別使用料への変換が必要」という報告書が、上下両院の超党派の委員会から提出されて以来、この2年近く表立った動きがありませんでした。この際「世界の有料道路 概要と最近の動向」のページで「アメリカの『走行距離課税』VMT Fee」の「Paying Our Way(自分の道は自分の負担で)」をざっとお読み下さい。
目下、アメリカでは、内政、外交ともに多くの難問を抱え、交通関連でも、昨年9月末で期限が切れた道路整備の関連法案(SAFETEA-LU*)を、数ヶ月単位で延長するという綱渡りが続いていて、オバマ大統領もこの問題に関心を示す暇もないように見受けられます。 * The Safe, Accountable, Flexible and Efficient Transportation Act: A Legacy for Users
しかし、ちょっと調べて見ましたら連邦政府、各州共に、交通関係の部署では、ガソリン税(正確にはガソリン税とディーゼル税の合計で燃料課税と言うべきですが、簡単な用語を使うことにします。)に依存して来た財源の不足が明らかになっている現状から、走行距離課税(VMT Fee)への移行が避けられないとの考えが強く、その導入に向けた検討が熱心に続けられていることが分かりました。
左に掲げたのは、昨年10月にまとめられ今年4月に発表された走行距離課税(Mileage-Based Road Use Charges =VMT Feeと同義)の実用性を実証するために必要な実験(System Trials)の規模、手順、方法など広汎な分野に関する検討結果の最終報告書の表紙です。
検索アドレス:http://onlinepubs.trb.org/onlinepubs/nchrp/nchrp_w161.pdf
NCHRP*は、公的な研究機関 であるTransportation Research Boardが実施するプロジェクトの名称です。 * National Cooperative Highway Research Program
このプロジェクトは、国と各州の道路部局の課長補佐クラス以上の職員が加盟する「全米交通行政官協会= AASHOTO*」の発案によって5年程前から実施されていて、中間報告も何度か出されていたようです。研究費は、国と各州が負担しています。 * American Association of State Highway and Transportation Officials
報告書は193ページに亘る膨大なものです。道路行政の当事者として、交通財源確保の方法としてVMT Feeへの転換しか選択肢がないことを改めて検証した上で、単に恒久性のある有望な財源であるということ以外に、VMT Feeが持っている次のような優れた特性を強調しているのが注目されます。
第一に、例えば、渋滞区間の繁忙時の料金を高額に設定することによって、他のルートへの転換、利用時間帯の変更、他の交通機関への乗り換えなどが行われ、慢性的な渋滞の解消、排ガスなどの抑制、道路損傷の軽減が可能であること 第二に、課金システムの活用によって、走行距離による自動車保険(pay-as-you-drive insurance=PAYD)やレンタカーの利用、リアルタイムの交通案内、危険情報の提供などドライバーにより便利なサービスが可能になること 第三に、このシステムによって道路網の改良計画や管理・運用に必要なデータが極めて豊富に収集できること の3点を上げています。
そして、システムの実験、研究と並行して、国民の徹底した理解を得ること(public education and outreach)の重要性を力説しています。
しかし、現時点では、財源不足のため全国レベルで System Trials が実行に移される見通しは立っていません。オレゴン州でのフィールドテスト、アイオワ大学での実験、ミネソタ大学の研究などが先行しており、このような州レベルの Trial が全米のシステム決定の判断材料になる可能性
が大きいと思われます。
これらの州レベルの実験、研究をしているグループの中で、前回の記事でも紹介したミネソタ大学から今までの研究を総括する「ガソリン税から走行距離課税へ:論理的根拠、技術と移行に関する諸問題*」と題する「最終報告書」が今年の8月に発表されました 。左図参照
ガソリン税の先行きが厳しいことを確認するために、ちょっと古い資料ですが、道路に関する近年の税収と支出のバランスが崩れて行くグラフ(右図参照)を示したうえで、走行距離課税(Milage-Based User Fees=MBUF または MBUFs) がいかに効率性、公平性、持続性の点で優れているか、弱点としては実現可能性が、目下、不透明なだけだと論じています。
また、ガソリン税の欠点として、道路の「利用価値(price signals) の発信」が無いことを上げています。ガソリン税は混雑区間を走っても、閑散道路を走っても変わりがありません。MBUF では、混雑区間、混雑時間帯、建設費が高かった区間など、利用価値の高い区間の距離あたりの課金の単価を高くする考えですから、利用者に道路利用の値打ちを認識させることが出来る利点があるという訳です。
それだけでなく、交通省当局者などが道路計画の立案にあたって、本当に必要とされている箇所がどこかを判断する signal にもなります。
*検索アドレス:http://www.its.umn.edu/Publications/ResearchReports/reportdetail.html?id=2048
TOLLROADSnews のSamuel 氏は、ドイツのアウトバーンで大型車に対する走行距離課税が導入されてから、積み荷の効率化によって、空車の走行が20%減少したと伝えています。また、従来、ガソリン税では脱税が大きな問題であり、連邦交通局の過去のデータによれば、ガソリンで3%〜7%。ディーゼルでは15%〜25%にも達していて、現在でも相当な損失の存在を当局者が認めていると指摘しています。
ミネソタ大学では、前回も課金システムとして携帯電話のモデムを組み込んだ安価な車載器を候補にあげていました。最終報告書では、左の表の通り、3方式を検討対象に上げていますが、二番目の On Board Diagnosis II =第二世代自己診断装置と携帯電話を組み合わせたシステムに最も高い評価を与えています。スマートホンと呼ばれる携帯電話が普及し GPS機能も搭載していますから 、一層、効率性、公平性が高くなり、敢えて高価な解像度の高いGPS 導入の必要性が無いと考えているものと思われます。
移行に関する諸問題の中で、国民の関心が一番高いのはプライバシーの保護の問題のようですが、10月21日に発行された AASHOTO Journal(週刊レポート)にこの点に関する記事が載っていました。
「アイオワ大学のVMT Feeの実験(GPS方式)には2,500人のドライバーが参加していますが、開始直後は、この方式に対する賛成、反対の割合が42% vs. 17% だったのが、10ヶ月後には70% vs. 19% に改善されていて、使い慣れてくれば VMT Fee がガソリン税に代わることに快適さを感じるだろう」と述べています。この記事を紹介した雑誌フォーブスは「しかし、参加者の60%は、政府が GPS データを個人の行動の追跡に使うと信じている」との補足記事を掲載しています。
以上、長々とアメリカの走行距離課税の現状について書きましたが、ヨーロッパのその後について、簡単にご紹介しておきます。「トピックス2011」の「ヨーロッパの『有料道路拡大』の動き」(2011年1月25日記)でふれたフランスとイタリアのことです。
フランスには約15,000kmの無料の高速道路 =Autoroute があります。その道路を利用する3.5トン以上のトラックから走行距離に応じた料金を取ることになり、今年1月にイタリアの Autostrade 社が受注の内定を受けていましたが、10月27日にフランスの交通担当省(略称 MEDDTL)との正式契約に漕ぎ付けました。
Autostradeはこの事業のために 、自らは70%を出資し、フランスの軍需産業 Thales(11%)、フランス国鉄 SNCF(10%) などの出資を受けて"Ecomouv SAS" という会社を作りました。
受注内訳は、当面80万台の GPS 付き車載器と約170箇所(2012.2訂正)のチェックポイント(このホームページの表紙になっているドイツのETCガントリーと同様のものと考えられます。)が中心です。受注額は約2,300億円とのこと。契約(コンセッション)期間は2024年までで、運用開始を2013年7月と予定しています。
本来なら、オランダが2012年から全車両について走行距離課税を導入する筈でしたが、突然の政権交代で棚上げになってしまっています。この時に設計されたGPS 付き車載器がヨーロッパ標準仕様だった筈ですから、もう試作機が出来ていたと思われますが、今回、完成までに約2年間を見込んでいるのは慎重を期す上で結構なことです。ここで生まれる新しい車載器が、これから世界中で始まる道路の費用負担システムに先鞭をつけるものになりそうな気がします。
イタリアについては、全く進展がないという情報しかありません。計画では、ANAS が直接管理している無料の高速道路と自動車道路のうち約1,200kmの区間に付いて、今年の5月をメドに「料金所が要らない方式」で料金徴収を開始することを決定し、受注者も Autostrade 社に決まっていました。
有料化区間は、大統領令によって指定されることになっているのですが、それが今日現在、全く音沙汰がありません。料金システムを受注した Autostrade も動きが取れないでいます。
聞く所では、有料化される地方の反対が強く、大統領が決めかねているようです。EU の財政危機がイタリアに波及しそうな情勢ですから、少しでも税収を増やすためにも決断を迫られることでしょう。システムについては、遅れたついでに、上記の Ecomouv と同じ方式のものを使えるようになれば、効率化の点からは願ってもない成り行きです。
付 記 日本の高速道路は、相も変わらず政治家の人気取りの手段としてもてあそばれていて、改めて論評する気にもなりません。 ただ、首都・阪神高速道路の料金制度改正が、やっと来年1月から実施されるようです。これも「料金負担の公平化」が目的だと言っていますが、本音は「料金値上げ」の準備で、首都・阪神の無料化は断念されたことになります。この件については「トピックス2010」の「『新しい料金制度』の問題点(2010年4月17日記)」の後半をご覧下さい。
前回、イタリア国道の管理組織であるANAS が今まで無料で使われていた国道の一部を有料化する方針を決め、昨年9月に料金システムの入札を行ったのですが中々落札者が決まらないことをお知らせしました。
今年1月19日になって、新聞の推測記事を追認する形で、ANASがようやく Autostrade社が落札者に決まっていたことを発表しました。翌20日の新聞サイトの報道によれば正式調印は2月末であり、5月1日から徴収を開始する計画です。この日程は、かなり厳しい無理なものです。
ANASの社長が21日に空軍アカデミーで行った講演によれば、有料区間は大統領令で決められることになっていて、ローマ環状道路(約68km)と南部の無料高速道路の中で既に改良工事が完了しているナポリ寄りの約110kmが含まれることは確実で、段階的に約1,200kmになる見込みであり、また、南部の区間の料金は低めに設定されるとのことです。
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左の下の図がANASが直接、間接(コンセッション会社を監督する形で)に管理する道路の地図(総延長約21,000km)です。この中で黒色の部分が「高速道路」と「自動車道路」(合計約1,350km)です。今回の有料化は、この内の約1,200kmが対象だと考えられます。地図が見にくい点はご容赦下さい。
「自動車道路」は、日本の「一般国道自動車専用道路」に当るものと考えて良いと思います。従って、もともと有料道路にしておくべきだった区間かもしれません。
料金システムについては、料金所が無いという以外、詳細は相変わらず不明です。「ビデオカメラを使う方式」と書いた記事もあります。となりますとVT=Video Toll ですが、このシステムはカナダの料金所の無い有料道路 ”407 ETR (Express Toll Route)”で一躍有名になりました。(「カナダ407ETRのETC」参照)アメリカの軍需産業 Raytheonがノウハウと施工の実績を持っています。
もっともAutostrade社は、イタリアだけでなく、ヨーロッパの多くの有料道路で使われている Telepass(ETCシステム)を自社の技術者が開発した実績を持っていますから、自信があると思いますが問題は時間です。暫定的なシステムや料金設定などについて詰めている最中なのかも知れません。
以上が前回の『イタリア「国道の有料化」に動く』の続報です。
もう一つ、ヨーロッパで有料化の大きな動きがありました。
これは、Autostradeの持株会社であるAtlantia社が1月18日に発表したものです。
フランスの交通担当省(正確にはEcology, Sustainable Development, Transport and Housing =フランス語の略称 MEDDTL)から、ANASの案件と同じく Autostrade社が料金徴収システムの受注者として決定通知を受けたというものです。2009年5月に発注が公告されていたものだったそうですから、ANASの場合と違って十分な検討期間が確保された点は立派です。
フランスには約8,300kmの有料の高速道路(有料の「自動車道」=Autoroute)があり、そのほかに約15,000kmの無料のAutorouteがあります。今回発注されたシステムは、この約15,000kmの区間を通行する3.5トン以上の貨物車からGPS方式で料金を徴収することが目的です。期間は、システムの設計、施工、運営を合わせて13年間です。ドイツの重量車課金と同様のシステムですが、課金対象がドイツが12トン以上であるのに対しフランスは3.5トン以上ですから取扱い台数はかなり多くなると予想されます。
因にEUの規則で、環境対策の観点から、3.5トン以上の貨物に課金することが義務づけられていますが、ドイツの課金に使われる車載器(国が無料で貸付)が高価すぎて、中型の貨物車では採算が取れないため、目下、特別扱いを受けています。
Autostradeはこの事業のために 、自らは70%を出資し、フランスの大手電機企業 Thales(11%)、フランス国鉄 SNCF(10%) などの出資を受けて"Ecomouv" というコンソーシアムを組み、システム完成に万全の体制を取っています。受注額は約2,300億円とのことです。
ついでにドイツの動きにも触れておきます。2005年1月から大型貨物車に対する課金が、約12,600kmのアウトバーン=高速道路で実施されていますが、昨年秋に交通大臣が、高速道路だけでなく4車線以上の国道のうち約2,000kmを課金の対象に編入する方針を発表しています。
何時から実行されるのかわかりませんが、道路予算が逼迫していて料金収入の増大を迫られていることは確かです。アウトバーンの収入は、50%だけが道路に使われ、38%が鉄道に、12%が内陸水運に配分されてきましたが、追加される国道分は全額を道路予算にする方針だそうです。
世界中のどこでも、利用者に“道路の利用に応じて費用を負担してもらう”こと(pay-as-you-go)が避けて通れない状況になってきています。民主党の高速道路無料化の公約がどれだけ現実を無視した暴論であることか、お分かり頂けると思います。
本題に入る前に、年頭に当って日本の状況を簡単に見ておきたいと思います。決定された新年度の政府の予算案は、高速道路無料化に関しては「まだ諦めていないゾ」という意思表示をする以外、全く意味が認められない一部の高速道路の無料化の「社会実験」を継続し、新たに平日の乗用車を「2000円で走り放題」にするために必要な予算を計上するものになりました。その上、麻生自民党政権が前回の衆院選のバラマキ対策として、唐突に始めた休日「1000円で走り放題」の愚策を、今年の統一地方選の地元対策のために必要だと言って温存したのには驚くよりも呆れてしまいました。
年末ギリギリになって、民主党が「財源捻出に限界があり、マニフェストを全面的に見直す方針を固めたと」報道され(2010年12月30日 朝日)、ようやく目が覚めたのかと思いきや、年頭所感で国交大臣が「高速道路の原則無料化を段階的に進めていく」と発表。落胆していましたら、5日には、その国交大臣が「無料化の見直しを示唆した」と報じられたりしています。一喜一憂は禁物の状況が続きそうです。
「イタリアの国道が有料化されそうだ!」という本題に入ります。(この問題は、もっと早くお知らせすべきでしたが、遅くなった理由は後でお話しします。)イタリアには約6,500kmの高速道路がありますが、そのうち約5,600kmが有料道路で、しかも完全な民営会社が建設して運営しています。(「世界の有料道路 主要国の現状」の「イタリアの高速道路」参照)
無料なのは、開発が遅れた南部地域と、交通量の多いローマ環状道路など約900kmだけで、この部分は国が管理しています。国と言っても、前回説明したイギリスの交通省の外局である道路庁(Highways Agency)と同様に、イタリア公共事業省の外局だったANAS が担当していました。「だった」「いました」と過去形にしたのは、2003年1月*に ANAS が全額政府出資ながら株式会社 ANAS SpA に変身してしまったからです。
当時、その真意が理解できませんでしたが、今回の動きを見ていく中でようやくその意図が分かってきました。
先ず前提として、イタリアの国全体の厳しい財政状況があります。EUの基準によって、GDP比で財政赤字を3%以下(現在5.3%)に、債務残高を60%以下(現在116%)に抑える必要があり、道路関連の支出も極力少なくし、加えて道路の債務残高を国から切り離す必要があったようです。因に2010年の日本はGDP比で、財政赤字が8.4%、債務残高が197%だとのことですから、EUの基準では高速道路無料化などは全く論外でしょう。
ANASを国の会計から切り離すためには、もう一つ国からの収入が50%を超えてはならない基準があります。つまりANAS を民営化した以上、50%以上の費用は自分で稼げ!ということになります。ANASの収入の内訳がよく分かりませんが、コンセッション会社からの特許料(コンセッションフィー)が、料金収入に応じてANASに納められていて、これが民間収入の柱の一つです。 Autostrade社だけで2009年でも約40億円ですが、後で説明するコンセッションフィーの値上げで100億円を超える額になると予想されます。
ANASが管理する道路延長(日本でいう直轄区間)は、900kmの高速道路+450kmの自動車専用道路*を含めて約21,000km*(日本の国交省の直轄区間は約22,800km)あり、年間の管理費は約830億円。その50%以上=約420億円の収入を確保する必要があることになります。あと300億円程度は必要という計算になります。
ここまでがイタリアの国道を管理するANASが置かれた状況の説明で、これからが有料化への動きの本番です。基本方針は、国会の承認も受け2010年5月に大統領令が出されていました。その一番目がコンセッションフィーの増額です。これは会社の経営に大きな負担になるのが問題です。
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| 左右斜めに横切るのが無料のローマ環状線 ジャンクション接続で上に延びるのがミラノに向かう有料の高速道路1号線(本線料金所は約15km北) 写真はGoogleマップから |
確かに新たな設備投資が要らないという点では簡便な方法ではありますが、コンセッション会社の料金表の書き換えなどの手間がかかるのはやむを得ないとしても、問題は利用者の負担が大きいことです。普通車で1ユーロは、高速道路を約14km走る料金に当ります。
早速、関係する地域の地方公共団体*や、CODACONSと呼ばれる環境・消費者の権利を保護する団体から、国内数カ所の行政裁判所に差し止めの仮処分申請が出され、一部の地域で地方公共団体から出された訴え*が認められました。結局、ANASが混乱を避けるためにコンセッション会社に指示して、この措置は保留されたままになっているようです。
(注)*マークが付いた部分は、読者の方から提供された資料に基づいて修正しました。ご協力に感謝します。(2011年1月12日記)
イタリア政府は、この2つの方法で、ANASの民間収入として約350億円を確保できると見込んでいたようですが、当てが外れた訳です。
三番目に出てきたのが、これが最初から本命だったと思われますが、9月13日にANASから発表された「料金所の要らない料金徴収システム」の入札公告です。入札の締切りは9月30日午後12時までとされていました。
このページの冒頭で書いた、早くお知らせしなかった理由がこれです。入札締切りから1ヶ月経っても2ヶ月経っても、どの会社が入札に参加したのか、入札者があったのか無かったのかすら全く情報がありません。落札情報をまだかまだかと首を長くして待つ間に新年を迎えてしまったという訳です。
この「料金所の要らない料金徴収システム」の内容も良く分かりません。分かっているのは、契約期間が2年、工事費、維持・運営費込みの予定価格が約150億円という程度です。2年の契約更新を認めるそうです。ETCの車載器の記述が見られませんから、ナンバープレート読取り(VT=Video TollまたはVideo Tolling)方式ではないかと考えますが、積算だけでも簡単なものではありません。契約交渉が難航しているものと思われます。
詳細が分かり次第お知らせしますが、ここで強調して置きたいのは、日本より(数字上だけでも)財政状況が良く、日本と同様に高速道路が有料であることを原則としてきたイタリアで、高速道路以外の国道からも料金を徴収しなければならない状況に置かれているということに尽きます。