3. 前十字靱帯再建術
ACL reconstruction
前十字靱帯損傷(Anterior cruciate ligament;ACL)の保存療法の成績は不良であることから、前十字靱帯再建術は古くから行われて来ました。ずっと以前には外科的メスを受け入れないとまで信じられてきました。1895年Robsonが初めてACL修復術を、1917年にHey Grooveが腸脛靱帯を用いたACL関節内外再建を初めて報告し、以来多くの先人たちの懸命な努力が積み重ねてきました。多くの再建材料、色々な再建ルートが編み出され、かつ関節内外再建術、ダイナミックな再建術なども行われてきましたが、1970年代まで決して満足できる結果とは言えませんでした。そして1980年代に人工靱帯が開発され、その再建術は世界的に行われるようになりました。今日人工靱帯のみを用いたACL再建術は世界的にもあまり行われなくなりましたが、その考え方や手法がその後のACL再建術の飛躍に貢献したことは間違いないと思われます。1980年代後半から、今日多く行われるACL解剖学的再建術の色々なテクニックや技術が徐々に開発されてきました。注目すべきものは、inside-out technique法(Rosenberg 1984)、Interference screwの発明(Kurosaka screw 1987)、4重折りハムストリング腱法(Friedman 1988)、ループエンドボタンの発明(Rosenberg)などです。2000年代になり、2重束ACL再建法が開発され、今日広まっています。 

新鮮前十字靭帯損傷は一部を除き、ギプス固定では治癒しないこと、放置した場合3−5年で二次的半月板損傷、さらにそれ以上の年数で変形性関節症変化の合併率が高くなることから、青年〜中年で活動的な方に手術的治療が行われます(Scavenius 1999)。複合靭帯損傷や半月板損傷合併例は手術が第一に薦められます。1990年代から手術成績の向上とリハビリの早期回復から、ACL再建術は今日膝関節外科手術の中でも最も頻繁に行われる手術となっています。手術方法はこの15年でさらに進歩し、関節鏡を用いて小さな傷(3-4cm)で手術が行えるようになりました。

再建する材料として、今日の主要なものは以下の通りです。  再建材料は日本では(1)と(2)が主流です。再建材料が同じでも、その固定方法にも多くの方法があります。
(1)骨付膝蓋腱 (Patel 2000Shelbourne 1997)
(2)多重折り半腱様筋腱・薄筋腱 (Barret 2002Scranton 2002
(3)骨付大腿四頭筋腱 Chen Ch 2004
         
再建材料の違いによる手術結果は、骨付膝蓋腱と多重折り半腱様筋腱の成績はあまり変わらないと報告されています(Corry 1999)。 前十字靱帯は細かくみると2つの線維に分かれており、近年はこれらの2つの線維を再建する方法が行われるようになってきています(Muneta 1999, Yasuda 2006)。1本再建と2本再建で結果はかわらないという報告もあります(Hamada 2001)。しかし、より解剖学的な再建に近づくことは理にかなっていると思われますので、1本再建より2本再建が圧倒的に結果が良好ならこの方法が主流になると思われます。現在では2重束再建法が一般的になっております。

前十字靱帯再建術の成績は5年で85-90%程度です。男女では女性の方が関節が柔らかいせいからか、やや成績が落ちます(Gobbi 2004)。スポーツ選手では前の競技への復帰率は70%程度にさがります(Gobbi 2003)。今の方法でもまだまだ完全に解決しているとはいえません。そのひとつは腱を骨内に通すために骨トンネルの拡大が起こることです。大腿骨側で60%程度、脛骨側で40%程度拡大します(MaCB 2004)。直接成績の低下と関連はしないと言われますが、これらの発生もなくすことは確実な手術法につながっていくと思われます。一方、損傷から手術までの期間が長くなるにつれて成績が低下することも報告されています(Laxdal 2005)。これは長期に前十字靱帯損傷膝のまま経過しますと、二次的に半月板損傷や変形性関節症変化が起きてきます。これら二次的変化をきたさない内に手術をされることが勧められます。

膝蓋腱と半腱様筋腱の関節鏡視下再建術の7年の調査(Roe 2005)から、いずれも成績に差はなかったものの、変形成変化の合併は膝蓋腱法で45%、半腱様筋腱で14%と膝蓋腱法で多くなっています。従ってRoeは半腱様筋腱を用いたACL再建を勧めています。膝蓋腱法ではanterior knee painが604例中34%にも合併するとの報告もあります(Kartus 1999)。











ACL解剖図(側面所見)



膝蓋腱法

【リハビリ】 再建術の入院期間は1週間程度です。ただし、今の方法でもスポーツの再開は4-6ヶ月後、完全復帰も
        6-8ヶ月以上かかります。今後はこのスポーツ復帰までの期間の短縮できる方法の開発が待たれます。
手術当日 簡易膝固定装具にて帰室
1日目 車椅子移動 or 免荷松葉杖歩行、筋トレ開始
3-5日目 膝屈曲練習開始(自動膝屈伸練習装置)
7日目 装具装着下歩行器or松葉杖荷重歩行 以後退院許可
【長期成績】
前十字靱帯再建術の長期成績は、過去に多く行われた関節内外再建術では近年多く報告されています。Ait Siら(Ait Si 2006)の報告では、膝蓋腱を用いたACL再建+関節外腱固定術の103膝の17.4年の結果は、88%が優良で、50%以上の関節裂隙の狭小化は4.7%のみであった。一方、腸脛骨靱帯を用いた関節内外再建では24年でLysholm score優良は88%であったが、中高度の変形性関節症は71%にも合併していたという報告(Yamaguchi 2006)もあります。恐らく、これは関節外の非解剖学的再建靱帯が変形性変化を増加させたことが考えられます。
膝蓋腱を用いた関節鏡視下ACL再建術67例の10年成績(Salmon 2006)でも、96%は正常かほぼ正常であったが、75%に変形性変化が見られ、これは内側半月板切除例に多かったと報告されています。

【小児ACL損傷】
小児のACL損傷は骨端線が開いているために保存的治療が行われることが多かったのですが、長期成績から結果は不良であることがわかってきました(Utukuri 2006)。
 ☆ 膝関節専門外来
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