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1. 変形性膝関節症

変形性膝関節症は軟骨の劣化や摩耗により、軟骨が消失する病気で、男性より女性に圧倒的に多くみられます。若いときに比べ、中年以後体重の増加された女性に多い傾向があります。変形性関節症は痛みがでてはまた無症状になるを繰り返しながら、5年から10年以上の経過で徐々に進行する病気です。変形性関節症が高度になり、O脚になりますと病気の進み方も急に早くなります。軟骨は今の再生医学をしてもまだ完全な回復は望めない物質です。 

変形性膝関節症は他人事のように思われがちですが、高齢になりますと確実に進みます。特に中高年でスポーツなどをやられている方は注意が必要です。40-50歳台の関節鏡検査で、無症候例でもすでに変形性関節症性変化が始まっていることを多くの例で見てきました。65歳以上の高齢者ではたとえ症状がなくてもX線では70%に変形性変化が見られます(Lawrence 1989)。

近年骨粗鬆症も予防が必要であると言われていますが、変形性膝関節症でも
関節軟骨サプリメント で栄養を補うなどの必要性が今後高まると思われます。同時にあまり積極的に手術が行われなかった中程度の変形性関節症も、手をこまねいて保存的治療を行うだけでなく、より生物学的に直す手術法の広まりがみられます。
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変形性膝関節症の評価は、立位(片足立ち)でのX線で骨と骨の隙間(軟骨の厚さ)が通常6mm程度が3mm未満では軟骨の摩耗が著しいと判断されます。変形性関節症の進行度は関節裂隙の距離6-5mm;軽度、4-2mm;中程度、2mm未満;高度と診断します。

右のX線写真例は内側が骨と骨が接触し、きわめて高度の変形性膝関節症です。外側はほぼ正常の関節の隙間を呈します。手術中所見では内側は軟骨は消失し、軟骨下骨が露出しています(矢印)が、外側はほぼ正常な軟骨(やや黄色)を呈します。
【保存的治療法】
軽度−中程度の変形性関節症例には体重減量、筋力訓練、リハビリ、消炎鎮痛剤、ヒアルロン酸注射、足底板装具などの保存的治療が有効です。しかしながら、磨耗した軟骨は元通りになっているわけではありませんので、当然再発する可能性はあります。

とくに初期変形性関節症ではマッサージに通ったりするのみで、特別な治療をしなくても時間がたつと自然に痛みは取れ,、あるいは数週間の整形外科での治療で大抵痛みは治ります。しかし、時々痛みがでてはとれるを繰り返していくうちに、徐々に痛みの程度が増し、また痛む期間も長くなっていきます。変形性関節症が高度になるまでに通常5−20年もの長い期間かかります。O脚になると痛みはとれにくくなり、病気の進行も急に早くなります。

車のタイヤがすり減るのを食い止めるためには、乱暴な運転、悪路を走らないことが必要であるように、膝を大事に、無理しないことが大切です。また日頃から膝関節サポーターなどで膝を保護するとともに、 関節軟骨サプリメントなどの栄養を補給することも大切と言えます。



【手術的治療】
保存的治療に抵抗する症例や高度の症例では手術的治療が適応となります。

1.軟骨形成術
変形性関節症の軽度から中程度の症例に適応があります。剥離しかかった軟骨をきれいに形成したり、合併する半月板変性断裂部を切除する手術です。一般にデブリードマン手術と言われます(Jackson2003)。入院は5-7日程度です。

我々は新しい考え方による独自のデブリードマン手術を開発し、80例以上に行ってきました。最長20年以上の経験から変形性関節症の比較的軽いうちに
新デブリードマン法を行うと変形性膝関節症の進行をストップさせることが判明しています。これは車のメインテナンスと同じで、早いうちに対処するのがよく、いい膝を長持ちさせるためにこの手術は有用です。長期間経ち、変形が高度になり、大きな手術しかなくなってしまう前に行うのが理想でしょう。当初は傷は2-3cmで行っていましたが、最新の方法では特殊器具を用いて関節鏡視下に行えるようになり、傷も1cmが2ヶ所、入院は4-5日程度で杖無しで退院できるようになりました。
膝の痛みがでて整形外科のクリニック治療を続けているにもかかわらず、3-6ヶ月くらい経っても治らない方は是非この治療をお薦めします。是非我々にご相談下さい。


2.高位脛骨骨切り術 (→HTO)
変形性関節症の中程度の症例で内反(O脚)変形を呈した50−60歳台の方に適応があります。膝の下部(外側楔状脛骨骨切り術)で骨を切ってO脚を反対の軽度のX脚に変える手術です。180−190度になったFTAを170度の外反位にもっていき、荷重を外側に移す手術です。

完全な骨癒合までに最低2ヶ月程度かかるため入院が6-8週間と長期にかかるのが欠点です。経年的に徐々に効果が低下する傾向がありますが、10年で80-90%に良好な結果を期待できます(Pfahler2003, Aglietti2003)。しかし、膝の曲がりは正座はきついとしても145-150度位にはなり、日本人の畳の生活でも全く不自由のない状態まで回復するのは利点です。中等度のOAなら走ったりもできますので、この方法が適応であれば人工関節より薦められます。


近年、内側で脛骨の骨切り部を開大して固定する方法が広まってきています。中程度の症例であれば、この内側オープン楔状骨切り術(Staubli 2003, Stoffel 2004)が薦められます。術後の回復は従来の外側楔状骨切り術より格段に早く、腫れも少ないため、当院では2004年末より使用を開始しました。

変性した軟骨を修復させるための多くのテクニックが実用化されてきています。Microfracture technique(Steadman 2003), abrasion arthroplasty(Johnson 2001), 培養自家軟骨細胞移植(Peterson 2002) などがあります。しかし、少しでもO脚になった場合、これらの手術を行ってもどうしても患部に強い負荷がかかりなかなか良好な修復が行われません。高位脛骨骨切り術に、これらのテクニックを合わせた方法の報告が始まっており、より良い結果が期待されます(Steadman 2005)。



外側楔状脛骨骨切り術


外側楔状脛骨骨切り術




内側オープン楔状骨切り術
3.人工関節置換術(→TKR
変形性関節症が高度になってしまった症例では、60−80歳の方は膝人工関節(TKR)の適応です。近年は80-85歳の方が多くなっており、心臓や重度の糖尿病がなければ問題なくできます。最高齢は87才の女性で3年たった今も元気に外来に来られます。術後は2日目に歩行器を用いて両足で歩行することができ、2-3週間程度の入院で杖なしで退院できることが最大の利点です。

人工膝関節手術は40年ほど前から行われるようになり、20年程度の耐用年数があります。変形性関節症に対する成績は、10年で95-98%(Schroder 2001Khaw 2001)、17年で92%(Gill 2001)と、極めて安定した成績が報告されています。自身の経験症例で緩みのために再手術となった例は幸いありません。初回手術での完全で注意深い手技により、間違いなく良い結果が得られます。

人工膝関節の欠点として、膝の曲がりは平均110−120度(まっすぐが0度、正座が155度)程度です。しかし、われわれの施設では平均120-140度です。正座もできる例もあります。われわれは年間80-100例程度の人工膝関節手術を行っており、自験例は合計1200例以上になります。現在の人工関節は、MISという小皮切テクニックも多用し、術後ケアシステムも最新の方法を取り入れ、格段の術後の改善を見ており、2週間で自信を持って帰れるまでになりました(TKRページ参照)。

術後は杖も不要で、ハイキングはもちろんゴルフやスキーもされる方も多くなっています。早くに変形が高度になり、50歳代で両側人工関節を行い、キオスクのお仕事をその後10年間全うされた患者がいます。


4.骨軟骨移植
膝関節の荷重面でない場所から直径4-7mm程度の骨軟骨柱を幾つか採取し、欠損した軟骨部分に隙間なく移植する方法で別名モザイクプラスティーと呼ばれ、ここ10年で著しく進歩した最新の方法です(Hangody2001)。しかし、変形の高度の症例には適応はありません。通常40才以下の限局性の軟骨欠損で、面積が4a平方メートルまでの例に適応とされます。荷重は3−4週間後から許可します。

モザイクプラスティーの成績は、831例の平均10年の調査(Szerb 2005)で、大腿骨では92%、脛骨では87%、膝蓋大腿関節では79%に良好と報告されています。若いスポーツ選手の軟骨欠損に対して、術後3年の調査で、microfracture techniqueは52%、mosaicplastyは92%のスポーツ復帰率であったと報告されています(Gudas 2006)。


5. 慢性関節リウマチRA):
慢性関節リウマチの内科的治療法も大きく進歩してきました。しかし、残念ですが、高度に関節の変形が進んでしまう例も多くあります。リウマチでは関節全体の軟骨が障害を受けることが特徴です。したがって、軟骨形成術、高位脛骨骨切り術の適応はほとんどなく、大抵人工膝関節手術が適応となります。

30歳代女性 
向かって左の右膝は内側、外側ともに
軟骨の隙間がなく、さらに骨内に
めり込んでいます。
術中所見
内側、外側ともに軟骨は大きく欠損していました。
人工関節設置後
左の症例の人工関節手術所見です。
治療費について 人工関節手術や、ほかのすべての手術についてもすべて健康保険が適応されます。
さらに高額療養費制度が適応になりますので、実際の健康保険適応分のお支払い金額は1ヶ月で
最高10万円程度です。

一般:自己負担限度額 80100円+(総医療費−267000円)x1% と計算されます。
実際には先に総医療費の3割をお支払い頂く場合(2-3ヶ月後に保険機関から返金)と自己負担限度額のみお支払い頂く場合とがあります。各医療機関にて違いますので窓口で聞いて下さい。
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