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2. 膝関節靱帯損傷 靱帯損傷
  
[前十字靭帯損傷] (ACL手術)
膝前十字靭帯損傷(ACL: anterior cruciate ligament injury)は、膝関節内血腫があっても骨折所見などないため見逃されることが多い損傷です。スポーツで怪我することが多く、とくにジャンプの着地時やテニスなどの捻り動作時にがくっと膝崩れするとともに、バシッと音を感じることが多いようです。当初の痛みは10−60分ほどで少し軽くなるため帰宅し様子みる方が多いのですが、徐々に関節内に血がたまり、6−12時間で痛みが極めて強くなり来院されます。 

【診断】
膝前十字靱帯損傷の陳旧例では膝関節前方動揺性テストまたは回旋不安定テスト(Jerk test)は高率に出現しますが、急性期では痛みのためにテストが困難な例が多くなります。関節内血腫と受傷機転などから前十字靭帯損傷を疑ってMRI検査、関節鏡検査を行う必要があります。


【治療】
新鮮前十字靭帯損傷は一部を除き、ギプス固定では治癒しないこと、放置した場合3−5年で二次的半月板損傷、さらにそれ以上の年数で変形性関節症変化の合併率が高くなることから、45歳以下で活動性の高い方に手術的治療が薦められます(Scavenius 1999)。複合靭帯損傷や半月板損傷合併例は手術が第一に薦められます。

手術をしない場合は運動時には、膝靱帯サポーターを必ずつけるなどの注意が必要です。前十字靱帯不全の症状は軽く膝が抜けるくらいなので軽く考えがちですが、月に1度位でも繰り返していますと、次第に変形が進み、半月板損傷も合併しますので、運動時のサポーター着用など忘れないようにしてください。しかし、数年はよくても、徐々に二次的障害が進むのは避けがたいのです。

新鮮前十字靱帯損傷例に対する一次修復術(縫合術)の成績は一定しないため、一般にはあまり行われなくなりました。修復補強術や再建術が適応となります。

 (前方からみた前十字靱帯)
(中央で割断して横からみた前十字靱帯)   .
陳旧例では主に靭帯再建術が適応となります。再建するために採取する組織として、   
(1)骨付膝蓋腱 (Patel 2000Shelbourne 1997)
(2)多重折り半腱様筋腱・薄筋腱 (Barret 2002Scranton 2002
(3)骨付大腿四頭筋腱 Chen Ch 2004
         
などが世界的に行われていますが、日本では(1)と(2)が主流です。

前十字靱帯再建術の成績は5年で85-90%程度です。男女では女性の方が関節が柔らかいせいからか、やや成績が落ちます(Gobbi 2004)。スポーツ選手では前の競技への復帰率は70%程度にさがります(Gobbi 2003)。今の方法でもまだまだ完全に解決していないのです。そのひとつは腱を骨内に通すために骨トンネルの拡大が起こることです。大腿骨側で60%程度、脛骨側で40%程度拡大します(MaCB 2004)。直接成績の低下と関連はしないと言われますが、これらの発生もなくすことは確実な手術法につながっていくと思われます。

骨付膝蓋腱と多重折り半腱様筋腱の成績はあまり変わらないようです(Corry 1999)。 前十字靱帯は細かくみると2つの線維に分かれており、近年はこれらの2つの線維を再建する方法が行われるようになってきています。1本再建と2本再建で結果はかわらないという報告もあります(Hamada 2001)。しかし、より解剖学的な再建に近づくことは理にかなっていると思われますので、今後はこの方法が主流になる可能性が高いと思われます。

手術方法はこの10年で格段に進歩し、関節鏡を用いて小さな傷(3-4cm)で手術が行えるようになりました。。再建術の入院期間は2週間程度です。どうしても退院を急がれる場合は1週間程度でも可能です。ただし、今の方法でもスポーツの完全復帰は術後数ヶ月以上かかります。今後はこのスポーツ復帰までの期間の短縮できる方法の開発が待たれます。
  骨付膝蓋腱にInterference
    screwを用いた方法



[後十字靱帯損傷]
膝の真ん中後ろに、前十字靱帯(ACL)と交差するようにある靱帯が後十字靱帯(PCL: posterior cruiciate ligament)です。前十字靱帯に比べ2倍の強度があるため、その損傷には強大な力が必要で、多くは膝の下に直接大きな外力が加わる交通外傷などによることが大半を占めます。

【診断】
前十字靱帯損傷と逆の動き、すなわち後方不安定性テストで診断します。急性期では疼痛のため筋肉性防御で診断が容易でないことがあります。麻酔下で初めて大きな後方不安定性が出現する症例も見られます。X線では所見ありません。MRI(右図)では、正常の靱帯は黒い均一な靱帯として見えますが、損傷があるとはっきり判断できます。しかし、切れていることがわかっても重要なのは後方不安定性の程度ですので、MRIそのものだけで治療方針を決定することはできません。関節鏡検査で合併損傷の確認とともに、不安定性の検討が確実です。

【治療】
後十字靱帯損傷による後方不安定性は、前十字靱帯損傷に比べその不安定性が大きいのにもかかわらず自覚的な不安定感を訴える例は少なく、スポーツ選手でも治療せずにスポーツ活動に復帰している例も少なくありません。

MRIでみた後十字靱帯
              
後十字靱帯再建術は、前十字靱帯再建術に比し成績が落ちること、不安定性があっても自覚症状の少ないことから、長い間手術は避けられてきました。しかし、近年再建技術の向上とともに、やはり高度の不安定性例ではスポーツ復帰は困難であることから、高度の不安定性例でスポーツ活動を継続する希望の高い方は積極的に手術を薦めるようになってきました。
後十字靱帯でも、使用する腱は骨付膝蓋腱と多重折り半腱様筋腱などが主流です。後十字靱帯でも最近は2本の線維を再建する2本再建が行われるようになってきましたが、あまり結果に差がないという報告が多いようです(Wang 2004)。最終結果は2年で80%程度で、ACL再建に比しやや落ちます(Chen 2002)。

スカッシュの石渡康則選手は2002年に後十字靱帯損傷を来しました。当時は全日本3位でした。当院で後十字靱帯再建術を行い、積極的なリハビリも効奏し、2004年度全日本チャンピオンの栄冠を初めて手にすることができ、現在世界サーキットを転戦中です。このように全日本クラスの選手でも手術後復活できるまでに手術も向上したことはまことに喜ばしいことと思います。

2004年全日本スカッシュ
チャンピオン石渡康則選手

[内側側副靭帯損傷]
膝の内側の安定性に寄与する内側側副靭帯損傷(medial collateral ligament injury)は、膝の靭帯損傷でもっとも多い損傷です。スポーツの怪我で膝の内側に痛みが出た場合、多くはこの靭帯損傷です。

【診断】
X線では所見ありません。膝内側の腫れと痛みと外反動揺性テストで診断できます。重傷度の診断は外反動揺性テストで見ます。1度損傷;不安定性なし、2度損傷;軽度の不安定性、3度損傷;高度の不安定性に分類されます。

【治療】
1-3度損傷のほとんどはギプス固定などの保存的治療で治ります。

1度損傷:靭帯内のわずかな損傷または出血を示します。ギプスも必要でなく、軽いサポーター装具で治療します。3−4週間で軽快します。

2度損傷:靭帯の部分断裂が疑われます。1週間程度のギプス固定→その後装具か、初めから装具治療のどちらかで対処します。腫れの程度、不安定性の僅かな差から選択します。治療には5−8週間かかります。

3度損傷:靭帯の完全断裂が疑われますので、2−3週間のギプス固定が薦められます。ギプス固定の後装具を4−9週間装着します。治療には10−12週間かかります。単独の3度損傷は大抵軽度のゆるみを残しますが、ギプス固定などの保存的治療で治ります(Ballmer 1988)。また、プロのスポーツ選手で早期の復帰をしたい場合、5-6週で復帰できたとの報告もあります(Jones 1986)。

3度損傷の中でもきわめて高度の不安定性がある例や前十字靭帯損傷合併例、半月板損傷合併例では手術的治療が薦められます。

陳旧例:内側側副靱帯は少しくらい緩くなっても通常後遺症はほとんどありません。しかし、高度の緩みが残ってしまった例では不安定感、二次的な半月板傷害による痛み例が多くなります。このような場合は再建術が必要になります。
右膝を内側から見た写真です。内側側副靱帯は大腿骨付着部から脛骨付着部まで約10cmの長さがあります。後方に三角形上に靱帯が伸びておりこれは後斜走線維と呼びます。

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