ティム・バートン著 「オイスターボーイの憂鬱な死」
見捨てられた、惨めな、異形の、そして透明な
ティム・バートンの名前を知らなくとも、ジョニー・ディップ主演の「シザーハンズ」という不思議な映画を見たことがあるという人は多いでしょう。創造主である博士の急死で、ぬくもりのある人間の「手」をもらいそこね、触ったものすべてを傷つけてしまう鋏の手(シザーハンズ)を持った男の子が、古い城から人間たちの住む町におりてきて、一度は受け入れられたものの、その「異形」のゆえ、愛するものまで傷つける結果となり、再び独りの世界に帰ってゆくというお話でした。奇妙で、グロテスクで、やがて水のように悲しいティム・バートンの世界が、広く一般に知られるようになった作品です。
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また、「ナイトメア・ビフォー・クリスマス」は、美術品のような人形アニメーション。ハロウィンタウンのかぼちゃの王ジャックが、自分は見たことのない、「クリスマス」を自分の手でつくろうと、やっきになるお話です。邪悪なものである彼の手にかかると、美しいはずのクリスマスは、どんどんおそろしいものになってゆきます。
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さて、いよいよ「オイスターボーイの憂鬱な死 THE MELANCHOLY OF OYSTER BOY & OTHER STORIES」です。目次をのぞくだけでも、この本の色あいを感じていただけるかもしれません。
スティック・ボーイとマッチ・ガールの恋/ロボット・ボーイ/じーっと見つめる女の子/両眼に釘がささった男の子/たくさん眼のある女の子/ステイン・ボーイ/オイスター・ボーイの憂鬱な死/ヴードゥー・ガール/ステイン・ボーイの特別なクリスマス/ベッドに変身した女の子/有毒少年ロイ/ジェームズ/スティック・ボーイのクリスマス/まんまるチーズ坊や/ミイラ少年/ガラクタ・ガール/針やま女王/メロンヘッド/スー/ジミー、みにくいペンギンのこ/黒焦げ少年/いかりの赤ん坊/オイスター・ボーイのおでかけ
ああ、なんだか…書いているうちにお腹のあたりが苦しくなってきました。
こんなもの、子どもに読ませてはいけません。でも、ちょっと待ってください。そもそも子どもとは、そんなに美しくて当然のように幸せなものなのでしょうか…???。
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マッチ・ガールを愛したスティック・ボーイはほんとに燃えてしまい、ロボット・ボーイの頭からはワイヤーやチューブが突き出ていて、親であるスミス夫妻は彼ゆえに口論が絶えず、彼はごみ箱とまちがえられながら、成長していく。ステイン・ボーイの唯一の特技は汚いしみを残すこと。オイスター・ボーイは生臭くて、親にはまともな名で呼んでもらえない。ヴードゥー・ガールは、人が近づきすぎるとピンがハートを深く突きさす。それが絶対に解けない呪いだと、彼女は知っている。有毒少年ロイは排気ガスならよいけれど、きれいな空気で死んでしまう。黒焦げ少年はクリスマスに小さなプレゼントをもらって混乱し、暖炉のすすと間違えられて、道に掃き出された。………。DESERTED。
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かわいそう、と言うことばではうまく処理できないのです。そんなにかんたんに対象化してしまえない存在がそこにあります。見捨てられて、徹底的に惨めな存在は、それでもたしかに(あるいは惨めであればあるほどたしかに)生きています。そして彼らが自分と遠くかけ離れているようには、どうも思えない。これこそが生きている存在のありさまなのだという気がしてくる。バートンが、あのようなものばかりを、いとおしむように繰り返し描く気持ちが、そのまますーっとこちらに入ってくる。酷薄で美しい細い線。淡いけれど強い色。暗紅色の血と、深く、どす黒く、闇をかかえこんだ、<しみ>や<すす>。…うーん、やはり子どもには読ませられない。それと、やたら傷つきやすい人にもね。
1999.5.31.Mon.
Tim Burton (1958 - )
Occupation: Director, Producer, Animator, Screenwriter
Born: 8/25/1958, Burbank, CA
Education: California Institute of the Arts, CA (animation)
Tim Burton is the young director known for his comic-strip visual sensibility感受性 (rooted in his early apprenticeship修業時代 as a cartoonist and a Disney animator) and black, surreal超現実的な humor.
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