和田 誠 著
『装丁物語』
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何の雑誌でだったか、和田誠が " 装丁のパスティーシュ " をやっているのを見たことがある。菊池信義、平野甲賀など売れている装丁家の作風を真似た、いかにもというデザイン。
装丁にも個性があるのだと意識したのはそれが最初だった。そして著者の多才と洒落気にあらためて感心した。
和田誠らしい装丁というと、やはり細い線で描かれたイラストレーションと特徴のある描き文字だろう。笑ったような文字に力の抜けた絵は明るく乾いていて、本の中味も気軽で楽しいものに違いないと思わせる。
そのため、依頼のある本の傾向は「重厚なものより少し軽妙なもの」が多く、純文学や豪華本の仕事はあまり来ないという。
本書は、著者が装丁の仕事について語りおろした形でまとめられている。手がけた本、それぞれのねらいや作家とのエピソードをまとめた章と、素材や方法を中心に語った章とが、だいたい交互に配置された構成である。
独立した章を立てられた谷川俊太郎、丸谷才一、つかこうへい、村上春樹は、いずれも私は読まない作家のため馴染みがないが(これらの作家が好きな人は、さらに楽しめるでしょう)、その他では、そうかあれもそうだった、と思い当る本がいくつか出てくる。『きまぐれ博物誌』、『ニール・サイモン戯曲集』。『色川武大 阿佐田哲也全集』にある猫のような絵はなんだろうと思っていたが、居眠りをしているスフィンクスなのだそうだ。
紙や画材の話、写植文字の話、青赤黄の三色で色指定する話。最近はコンピュータでデザインする装丁家が多くなっているようだが、これからも著者は手仕事にこだわり続けるに違いない。
比較的軽い口調に安心してすらすら読んでいくと、最後に少し重い話題にぶち当る。バーコード問題である。
流通を改善する名目で、いつのまにか本のカヴァー裏につけられるようになったバーコード。コンビニで本が売られる時代だから、これも「有り」かと鈍感になっていたが、確かに醜い上に、2つも入れなければならない理由がわからない。
1冊だけ、決められた通りにバーコードを入れた装丁をして自己嫌悪に陥った著者は、出版社と粘り強く話し合うことで妥協点を見い出そうとするが、それ以来、装丁の仕事が激減したという(このあたり、騒音と戦う中島義道と共通するものがある)。
収録された図版の中では、ヌーヴェル・ヴァーグの作家たちを撮った写真を使っている、映画評論家山田宏一の『友よ映画よ』が、実に格好良い。68年のカンヌ映画祭で、会場を占拠してディスカッションするトリュフォー、ゴダール、ルイ・マルらの上半身が暗い会場に当てられたライトの中に浮かびあがっている。
いかに表4でも、ここにバーコードが付けられていたとしたら台無しだっただろう。
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1997年12月 (株)白水社
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