南 伸坊 著 

     『装丁/南 伸坊』 

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 南伸坊という人を、私はイラストレーターだとばかり思っていた。おむすび型の顔で、その自分の顔を絵に描き、エッセイもたくさん出していて、コスチュームプレイが好きな人、奥さんの名前は文子さん、という認識だった。(主として『歴史上の本人』〈JTB出版〉からのイメージだ。) 

 しかし、そもそも南伸坊は装丁家だったのだ。この本で初めてそのことを知った。

 本書では、まず見開き2ページに自身が装丁した本についての文章があり、次の見開きに前のページで書かれた本のカラー図版が載っている。(最後の方を除いて1ページに1冊というスペースの使い方は、かなりもったいないが。)

 全部で110冊の装丁の印象は、あのにこにこした顔や面白おかしいエッセイからの想像とは違い、意外にも端正である。決して奇を衒ったデザインではない。

 ひねった笑いや騙し絵のようなトリックが仕掛けられているものが多いのだが、デザイン自体は簡素で主張しすぎない。晶文社の本などには、その作風がよく似合っている。

 タイトルや著者名の字体に明朝体が多用されているのも、そうした印象の一因となっている。

 南伸坊がデザイナーになろうと決心したきっかけは、小学校5年の時に " 親戚のお姉さん(ものすごく美人)が美術大学の図案科に通ってて、床の間に「永」の字の明朝体のレタリングをしたのを飾っていた " のを見た時からだったという。

 感心するのは、説明を聞かなければ気がつかないような凝ったことをしているところだ。しかも、値段の高いハードカバーだけでなく文庫でも惜しみなくやっている。

 自分は「装丁家」なんていう立派そうなものではなく、馬丁や園丁のような「装丁」という職人だ、と言っているだけあるのだ。

 一連の「明解さん」本や赤瀬川原平『老人力』のようにベストセラーになったものもあれば、とても面白いアイディアなのに評判にならなかったらしい本もある。売れても売れなくても、著者にとっては大切な作品だ。

 アイディアを出し、デザインを決める過程や装丁の技法的な部分、作家、編集者とのやり取り、駆け引きが書かれていて、本づくりの裏話としても楽しめる。
 また、その結果どんな本が出来たかが合わせて眺められるので、中味にも興味がわき、読んでみたいと思わせる本も多い。その点では、本書は恰好のブックガイドともなっている。

 意識的に眺めることなどあまりなかった装丁だが、デザイナーは物としての本をつくるために、こんなにいろいろ考えているのかと思うと、書店などでも装丁者の名前に関心が向くようになった。

 もう一つ、意外だったのは南伸坊が中国風が好みだということ。なるほど趣味で集めたという陶人形や図版が表紙に使われているもの、文人画風のイラストの本がしばしばある。私も中国ものが好きなので共感を覚えた。

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 2001年3月(株)フレーベル館 発行

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