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湘南旅日記

 

最初と最後が、ちっとも湘南じゃないのですが…

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 9月12日 (金) 

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11:00 上野 

 横浜で泊まったが、海も十分眺めたし横浜美術館では観たい展示をやっていなかったので、上野の東京国立博物館へ。前日に続き、午前中から強い陽射しで暑い。最初に平成館の特別展Tアレクサンドロス大王と東西文明の交流Uを観る。

 アレクサンドロス大王が生まれる前の紀元前6世紀頃から始まって、在世中の前4世紀を中心に、大王の遠征によってギリシア・ローマ文化や様式が東方へ伝播していった様子を、パキスタン、インド、中国、さらに日本に至る文物の展示によって明らかにした大規模な構想の展覧会。

 モノは主に彫刻。そして宝飾品、ローマ時代の金貨なんかもあった。洋の東西で、彫刻に使うものの材質が違い、それにしたがって受ける印象も違うのがおもしろい。ギリシア、ローマはなんといっても大理石。そして東に移るにつれて片岩などの石、粘土、漆喰、木とだんだんやわらかな材質になっていく。

 かなり理想化されているに違いないが、大王自身を象った像をみると、なかなかの美男だ。しかし、ギリシア彫刻は、東洋人から見ると、顔のつくりが立派すぎる。私が一番気に入ったのは、ガンダーラ出土の2〜3世紀頃の小ぶりな女性像頭部で、端正なマスクと頭髪や骨格の繊細さは、西洋と東洋がちょうどよく混じりあった中庸の美しさに思えた。

 

 せっかく来たので常設展示も観ることにする。日本古代の展示室で、埴輪を眺める。私は動物埴輪が好きだ。最近も北海道の遺跡で、海獣の埴輪が始めて出土したというニュースをやっていたが、動物埴輪はどれもユーモラスな表情を浮かべていて、古代の人々がそこに込めた意味は様々なのだろうが、見ていて単純に楽しい。ここには、犬や馬、鶏、水鳥、そして私のお気に入りの猿などの埴輪がある。猿の埴輪は、少しもの哀しげで考え深そうでなんだか惹きつけられる。

 本館は日本美術の流れを古代から近代まで紹介するという企画展示で、ここで目についたのは、鳥獣人物戯画絵巻の丁巻。素早いタッチで、公家や武士、僧侶などの風俗を描写した絵。丁巻(ウサギや蛙が角力をとったりしている有名な甲巻に比べるとニ級品扱い)とはいえ、高山寺の印を押した本物を見る事ができ、ラッキーだ。しかしTNMには甲巻の一部もあるはず。いつか観てみたい。

 ついでに欲をかいて、東洋館も。ここまでくると、もう館内の客は各展示室に1人か2人というくらいに減ってしまうが、じっくり観るには最適の静けさ。博物館はやはりこうでなければ。

 もうたいがい疲れたことでもあるし、本当にお目当てのものだけにして中国陶磁の展示室へ直行する。足利義政ゆかりの青磁茶碗T馬蝗班Uをはじめとする宋代の青磁、それに油滴天目茶碗。国立館だけあって、国宝、重要美術品がそれこそゴロゴロしている。インド美術の展示室で仏頭も観たかったが、時間が来たので割愛した。

 

 

 9月11日 (木) 

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12:30 湘南国際村

 正午に面接授業が終了し、山を下りる前にもう一度見晴らし広場に登ってみた。それまでの3日間は、天気は良かったが海上は水蒸気に覆われてぼんやり霞んでいたのに、この日初めてクリアに晴れわたり、江ノ島から伊豆半島、そして雲の上に浮かぶ富士のシルエットまではっきり見えた。青い海に点々とヨットの白い帆が並んでいた。

14:00 北鎌倉

 主な荷物は宅配便で送り「いざ、鎌倉へ」。しかし、暑すぎた。山の上はまだしも風が吹いて涼しかったのだが、下界に降りてくると蒸し暑い空気がわーんと襲いかかってきて、冷夏に鈍った体にはことのほか応える。

 北鎌倉駅からすぐの円覚寺は、境内に入れば木が多いから涼しいかと思えば、参道は真上からの陽射しに照りつけられて、やっぱり暑い。木陰を選んで歩くが、それでも汗だくになる。広大な敷地に、寺社が点在しているので鐘楼や幾つもある塔頭などポイントから次のポイントまでは登ったり降りたりけっこう歩かなくてはならない。樹木が多く、初秋の花も咲いているし、見た目の風景は涼し気なのだが。

 ここでの目的は、夏目漱石が参禅中に滞在したという帰源院。小説『門』の中に、この寺での参禅体験が描かれている。公開していないので、庭の手前から眺めるのみだが、薄紫の芙蓉が爽やかに咲き、奥まったところに白壁のお堂が見えていた。

15:00 由比が浜

 鎌倉から江ノ島電鉄に乗って、由比が浜へ。小さな電車の中は冷房が効いていてほっとしたのも束の間、すぐに着いてしまう。高台にある鎌倉文学館を訪ねた。展示されている近代以降の鎌倉に縁りのある文学者の原稿(本物ではなく複製が多い)や初版本などはあまり興味をひかれるものはなかったが、旧加賀藩主前田家の別荘だったという昭和初期の建物はア−ルデコ様式で、建物と庭の眺めのほうが価値がある。

 旧邸の応接室や主寝室だった部屋の張り出し窓から、由比が浜沖の海にヨットが浮かんでいるのが見える。映画監督小津安二郎のスケッチブックが展示されており、開かれたページの風景画がなかなか綺麗だった。

16:30 七里が浜

 再び江ノ電に乗り鎌倉高校前で降りる。ホームの向こうは、もう海。サーファー達が、ウミガメの子みたいに水と戯れていた。かなり高い波が立っている。

 駅周辺は、しばしば映画のロケ地に使われることで有名。当日もちょうどテレビドラマの撮影をしていた。タレントの顔には疎い私なので、なんという女優かわからなかったが、買い物帰りの自転車に乗った登場人物が海辺の道を走るシーンだったようだ。セーターにジャケットという服装だったから冬の初め頃の放映なのだろう。

 

 9月10日 (水) 

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18:00 城が島

 夕方、三浦半島の先端にある城が島へ行ってみる。横須賀から京急久里浜線で終点の三崎口へ、そこからさらにバスで30分。着いたときには、すでに日没間近だった。海岸は岩礁の多い変化に富んだ磯が続いている。海水浴シーズンは終了し、時間も時間なので人影は疎らな、もの寂しい風景。城が島灯台の建つ丘に登り、夕陽が海に沈むのを眺める。人懐っこい茶虎の猫がしきりと足にすりよってきた。

 

 9月9日 (火) 

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 20:30 横須賀ヒューマックス・シネマズ

 チャン・イーモウ監督初のアクション映画『英雄−HERO−』を観る。CGや特撮を駆使したコスプレ(時代劇)、ジェット・リーをはじめ欧米でも知名度のある中国系人気俳優を並べた豪華キャスティング、音楽タン・ドゥン、撮影 クリストファー・ドイル、衣装ワダ・エミと、これでもかとばかりに一流どころを揃えて、アメリカ資本を投入した超大作。チャン・イーモウというと、『菊豆』などから最近の『至福の時』まで、これまでは近現代の中国庶民の哀歓を描いた小規模で作品性の高い映画がほとんどだったので、このド派手な製作とイーモウ監督の相性はどうなんだろう…と半信半疑で、隣で上映していた『座頭市』にしようかと迷いつつチケットを買った。

 しかし、心配は杞憂。全く破綻のないエンタティンメント映画になっていました。さすが。

 秦の始皇帝暗殺にまつわる伝説は中国ではポピュラーな題材のようで、つい数年前にもチェン・カイコ−監督が映画にしたばかりだ。この『英雄−』は、史実に基づいたというよりはファンタジー色の強いオリジナルなストーリーという感じがした。中国を統一して皇帝を名乗る前の秦王を亡きものにするという同じ目的のために、互いに闘う4人の刺客の物語だ。見どころは、なんといっても舞踊のように美しい殺陣のシーン。雨垂れが落ちる寺院の中庭で、広大な白い砂漠で、落ち葉が降り注ぐ銀杏の森で、繰り広げられる剣戟とカンフー・アクションにはため息が出る。いかにも中国映画らしい大袈裟なワイヤー・ワ−クには笑ってしまうが、それらを含めてとてもよく出来ていた。

 ただ、よく出来ていた分、チャン・イーモウらしさは希薄だったような気がする。次回作に期待。

 

 9月8日 (月) 

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 17:00 葉山町湘南国際村

 8日から11日まで、仕事関係の通信講座面接授業のため、宿泊地の横須賀からバスで30分ほどの研修センタ−へ通う。葉山の海岸から2キロほど入った小高い山の上にある。

 周囲は、広々とした敷地に企業の研修所や大学の研究施設などが点在している。見晴らしの良い場所に公園があり、夕方行ってみたら、真っ赤な太陽が海に沈むところが眺められた。

 遊歩道が整備され、まばらに建つ戸建て住宅に住む人々が、犬の散歩をしたりベンチで寛いだりしている。夏は比較的涼しく冬暖かな、長野県とは正反対の気候。老後、こんなところに住んだら快適だろうな。

 

 9月7日 (日) 

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 11:30 丸の内

 久しぶりの東京。2時からのコンサートをひとつ聴くことにして、その前に思い立って出光美術館へ行く。ここは質の高い所蔵品展を常時開催していて、いつ行っても ハズレがなく、時間調整に非常に重宝する美術館だ。休憩コーナーからは皇居の広大な緑地も見渡せる。

 今回は、江戸名所図屏風展が半分、江戸期の僧侶仙涯(辞書にないので仮に使いましたが、涯の文字はさんずいがありません)の飄々とした禅画、日本・中国の陶磁器が残りの半分という展示だった。肉筆風俗画で「読書美人図」というのがあり、気に入ったので簡単にスケッチする。

 14:00 築地

 浜離宮朝日ホールで、中谷佐和子ピアノ・リサイタル。よく知らない演奏者だが、バッハのイタリア協奏曲をやるということで行ってみた。

 ホワイエに足を踏み入れたとたん、ちょっといつもと違う雰囲気。花束を持ったお客がやたら多いのだ。それに、家族連れ。なごやかに歓談する人々。うーむ、これはどうもピアノ教室の先生の発表会に紛れ込んでしまったようだ、とそのとき気がついた。

 ピアニストは、若くたいそう綺麗な女性。こんな先生にピアノを習ったら楽しいことだろう。バッハの他には ラヴェル、ラフマニノフなど洒落た選曲で、演奏はグ−ルドに比べるとやや冗長かなとも思ったが、気持ち良く聴くことができた。ただ演奏後に延々と続く花束贈呈は、部外者には少し退屈だった。

 19:00 六本木

 いったん、横須賀まで行ってホテルにチェック・インし、また戻って六本木のライブスポットで某作家(fp)のジャズ・ライブを聴く。ピアノトリオ+女性ボーカルという編成。非常に多才な作家さんで、これまでにもロックやシャンソンなどのライブに度々出演しているのは知っていたが、今度ジャズに初挑戦するという告知をホームページで見て、行ってみたのだ。

 ボーカル、ドラム、ベースはプロ奏者ということもあり、アドリブは少ないものの、ノリのいい手慣れた演奏と進行だった。福麻さんというボーカリストが、深みのあるたっぷりした声を聴かせてくれた。

 しかし、ここでも30人ほどのお客のほとんどが(当然のことながら)ジャズ愛好者というよりは作家さんのファンで、一種独特の雰囲気。要するに、ファンの集いのよう。私自身、この作家の書くものは好きで公式ホームページもたまにチェックしたりしている訳だが、どうも慣れないせいか、場の空気になじめませんでした。観察している分には、面白かったけれど。

 

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