ぬくもり


作:高槻摩莉愛様


「隊長って暖かい・・・」
俺の腕の中でプラチナブロンドの可憐な少女がそう言った。
俺の大事な宝物。マリア・タチバナ。
「そうかな・・・?」
そう言う俺に、マリアは無言で頷いて胸に顔を埋めた。
「ずっと・・・一緒ですよね・・・」
「勿論だよ」
不安そうにたずねるマリアに俺は微笑んでそうこたえた。
その言葉を聞いて、嬉しそうに俺を見上げるマリアの顔にかかった長い前髪に触れた。
「伸びてきたな。少し切ったほうが良い」
「だめ・・・だって隊長が綺麗だって言ってくれたから・・・伸ばしてるの」
首を振ってそう言う。
そう言えば出会った頃そんな事を言ったような覚えがある。手入れはされてなかったが腰まで伸びたプラチナブロンドに目を奪われたのは事実だった。
そんな事まで覚えているのか・・・
「マリアの髪は短くても綺麗だよ」
その髪をすくってキスをすると、マリアは嬉しそうに微笑んだ。

マリアと出会ってからもう5年になる。
出会ったころはガリガリに痩せた体と、深い緑色の瞳が印象的だったのを覚えている。
正直、こんな子供が戦場に出ても犬死するだけ・・・・そう思った。
実際何度も「おまえのような子供を戦場には立たせられない」と、誰もがマリアにそう言った。別に戦場に出なくとも他にここでやることはある。
しかし、マリアは聞かなかった。
大人たちの目を盗んで、勝手に武器を持ち出しては一人で訓練していた。
それを見つけてはこっぴどく怒ったりもしたのだが、それでも凝りもせず何度も何度も同じ事を繰り返した。
不思議だった。何がこの少女をそこまでさせているのか。
別に自分から危険な場所に飛び込まなくても良いのではないか。どうしてそんなに死に急ぐような真似をするのか。
その思いもマリアの今までの生い立ちを聞いて納得した。
日本人だというだけでスパイの疑いをかけられた母親。その母親をかばったせいで皇帝の逆鱗に触れた父親。親子三人で流刑されてからは酷い目にもあっただろう。
「パパもママも何も悪い事してないのに・・・」
そう言って流した涙を見たとき、あまりにもまっすぐな気持ちに心を打たれた。
きっと何を言っても子の少女は聞かない。それならば戦場に立たせてしまおう。そして、自分が全力で守ろう。そう思った。
その時からマリアの事が気になっていたかもしれない。
しかし、最初は確かに「妹」みたいな存在だった。その感情が、俺の中で少しづつ変化していく。
日を追うごとに強くなってくる気持ち。それは「愛情」。
それに気付いた時は、14歳も年下の、まだ子供の域を出ていない少女に抱いた自分の気持ちに戸惑い、焦った。
じぶんの気持ちから目をそらし、心の奥に気持ちを押し込めた。しかし、逆に気持ちは強くなっていく。
それでも、必死に隠そうとした。
それも、マリアの申し出で終わりだった。
マリアから想いを告げられたときは、本当に嬉しくてマリアを強く抱きしめた。

「・・・ちょう・・・隊長・・・」
「えっ?あっ・・・ああ・・・どうした?」
「ちゃんと私の言うこと聞いてました?」
昔を思い出していた俺に、ちょっと拗ねたような顔でそう言う。
「ご・・・ごめん・・・聞いてなかった・・・」
「もうっ、考え事してたんですか?」
「ちょっとな・・・」
自分の存在を無視して、考え込んでいた俺を面白くないと言った風な表情で見つめる。そんなマリアも可愛いと思いながら顔をのぞきこんで聞いてみた。
「・・・で、何て言ったんだ?」
「えっ?・・・すっ・・・好き・・・って言ったの・・・・」
顔を赤らめながら微笑んでそう言った。
「・・・・・隊長は?」
少し恥ずかしそうに俺を見つめる瞳もまた愛らしい。
「ん・・・?好きだよ」
マリアは事あるごとに俺に言葉を求めてくる。もう、何度も同じ言葉を与えているのに。
でも、それでマリアが安心するのなら何度でも言ってあげたいと思う。それに、その後嬉しそうに笑う笑顔も見たかった。
かなり重症だ。自分でもそう思う。
そんな自分に苦笑している俺を、マリアは不思議そうに見つめた。
「どうしたのですか?」
「いや、なんでもないよ」
と、微笑んでマリアの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「隊長!!またそうやって子供扱いして」
「あはは・・だって、子供だろ」
ちょと意地悪っぽく言って駆け出す。少し怒った表情をしてマリアが追いかけてきた。
「もうっ・・・隊長」
追いついたマリアが背中にしがみついた。
「やっと捕まえた・・・・」
そのまま、背中に顔を埋めた。
「隊長・・・やっぱり暖かいよ・・・」
背中から回したマリアの腕に力が入る。
「おまえも・・・な」
その腕をほどいてマリアのほうを向きもう一度抱きしめる。
小さなぬくもりに触れ、心が愛しさでいっぱいになった。

fin
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 某チャットにて、高槻さんから頂いてしまいました♪ 高槻さんはご自身でもクワッサリーやユーリー隊長のコスをなさるほど、クワッサリー時代のマリアが大好きな方です。
 なかなか可愛らしいマリアで、ほんとにいいですよね♪ ウチのクワッサリ〜も可愛らしく育てねば…
 楽しいお話をありがとうございました♪ 掲載遅れてすみませんm(__)m


亭主敬白