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傀儡のいざない
著者:ゆうりんさま
「勝利のポーズ、決めっ!!」
新皇・京極を倒し、全員無事ミカサに帰ってきた大神とメンバーはいつものかけ声をかけた後、それぞれに談笑し笑いあい、艦内は明るい雰囲気に包まれていた。
マリアはカンナと話をしながらふと、大神の方を見て眉をよせる。
大神は具合が悪そうに顔をしかめ、手を額にあてて少し身体を屈めていた。
「隊長、どうかしましたか?どこか具合でも悪いのですか?」
心配な面持ちで大神に近寄ったマリアはそう声をかけて顔を覗き込む。
「ああ‥いや、何だか身体が重く感じて変な気分なんだ。大丈夫。すぐに直ると思うよ」
大神は笑って答えたが、その笑顔が引きつってて無理に作ったものだとマリアはすぐに看破し、不安な口調で再度言葉をかけた。
「ご無理なさらずにあちらの部屋で休まれたら如何です?隊長」
その様子に気づいたみんなが大神とマリアのまわりに集まり出す。
「大丈夫ですか?大神さん。顔色悪いですよ」
「そや。少し休んだ方がええんとちゃう?」
「無理だと感じた時に身体を休めておかないとあとで支障をきたすよ、隊長」
さくらと紅蘭、それにレニがそれぞれ声をかける。
大神は心配そうに自分を見つめるみんなの顔を見渡し、照れた様子で何でもないと手を振った。
「少尉、我慢は禁物ですことよ。わたくし達に遠慮なさらずにお身体を養生なさった方がよろしいですわ」
「すみれの言う通りだよ、お兄ちゃん。さあ、行こ!」
滅多に人前で見せない優しい表情で真心のこもった親身な言い方のすみれや、しっかりと手を握り奥の部屋につれていこうとするアイリスに引っ張られ、大神の表情がフッと和んだ。
みんなで心を一つにし力を合わせ、とてつもない強敵をやっつけたのだ。無事帝都の平和を守れたこと、そして全員無傷で帰って来れたこと、それがみんなの心に大仕事をやり遂げたという安堵感と高揚感が溢れていてせっかくの楽しい雰囲気に包まれた空気をちょっと調子が悪いだけの自分の為にぶち壊したくない、と大神は思った。
だがその決意も米田の鶴の一声であっさり翻す。
「大神!何をグズグズしてる。明日からおめぇには山ほど仕事が待ってるんだ。早ぇとこ身体を休めてこい!命令だぞ」
「は‥はい。了解しました!」
慌ててそう言い一歩前に足を踏み出した時、頭の中で何かが蠢き、急に目の前が真っ暗になってしまった。みんなが自分のことを呼ぶ声を聞きながら大神は意識を失い、その場に倒れ込んでしまった。
数時間後―――――
医療ポッドで精密検査をされた大神は戦いの連続で霊力の使いすぎと極度の疲労で休養が必要だと判断され、後は何の異状も見つからなかった為、隊長室に運ばれた。
倒れたまま、まだ意識を戻さず自室のベットで昏々と眠り続ける大神を心配したメンバーが見舞いに行きたいと言い出したが、マリアがそれを引き止め諫めた。
「隊長には静かでゆっくりとした休養の時間が必要だと思うの。あなた達が押しかけて目を覚ましたりしたら隊長のことだもの、すぐに起き上がって仕事をしかねないわ。それじゃあちゃんとした休養にならないし、みんなだって悪いなって思うでしょう?」
マリアの言葉にカンナがうんうんと頷いてその言葉に付け足しをする。
「マリアの言う通りだぜ。隊長は今まで結構苦労してたからなあ。こんな時くらいゆっくり休ませてやろうぜ。なあ、みんな」
二人の説得に渋々納得したメンバーはそれぞれの部屋に戻っていった。
マリアも自室に行きかけてふと、足を止め隊長室を振り返る。頭の中で何かが引っかかった。自問自答してみるがさっぱり満足のいく答えが得られない。思わず困惑の表情が顔に浮かぶ。
「どしたんだい?マリア」
そんなマリアの様子にカンナが声をかけた。
「ううん…何でもないわ…」
その何かがしこりとなって残ったが、マリアは頭を振りカンナと共に廊下を歩いて自室に戻った。
丁度その頃、隊長室で眠り続ける大神の身には恐ろしい異変が起こっていた。
真っ暗闇の混沌とした中、大神はゆっくりと意識を取り戻し辺りを見回す。
(ここは…どこだ…?)
キョロキョロと見渡しさっぱり訳が分からず、しばらくぼんやりしているとふいに頭上から掠れた男の声が聞こえてきた。
「ここは主の意識の中。大神一郎とやら、主の体は仲々居心地が良いぞ。この身体、我の大願成就の為に存分に使わせて貰うことにした」
何処からともなくクックックと身の毛もよだつような笑い声が聞こえ、空寒い波動がひしひしと伝わってくる。
「誰だ!出てこい!!」
勝手な言い分に怒りを露わにした大神が大声を張り上げたところ、目の前に薄ぼんやりとした影らしきものが現れ、それは徐々に人の形をとり始めた。
顔中皺だらけで左目には眼球が無く、眼窩がぽっかりと穴を開きそこから血の糸が垂れている。頭髪はなく右手には数珠、僧の衣の上にボロボロになった袈裟を身に纏っているところから辛うじて坊主だということは分かったが、所々破けている僧衣から見える体のあちこちには殴られた痕が残り、変色していたり血がこびり付いていてまるで私刑を受けたと思うようなそのあまりにも酷たらしい姿に大神は一瞬絶句する。だが、残った右目は異様なほど爛々と光り輝き、口元に笑みを浮かべたじろぐ大神を見据えて立っていた。
「お前は…誰だ?」
ようやくその一言を言った大神は相手の反応を待ちながら、この事態をどう切り抜けるか目まぐるしい考えを張り巡らせていた。
坊主姿の男は含み笑いをしてゆっくりと口を開き、生前の自分の過去を語り始める。
「生身の身体が在ったときは皆、我のことを大僧正鴛該と呼んでおった。愚民共は我を敬い、我の力を恐れておったわ。念じるだけで岩を砕き、風を起こし、どんなものも自在に操ることができた。武士共は戦に勝ちたいが為にこぞって我の力を求め、平伏し、この国は我の思うまま、手中にあるも同然であった」
鴛該は当時を思い出しているのか嬉しそうに皺だらけの顔を醜く歪ませる。
悪霊というものは得てして自分の力をやたら誇示したがるものである。それだけの力量があることを見せびらかし、相手を怯ませて優位に立ち、思う通りに丸め込むのが常套手段なのだ。大神も危うくその術中にはまってしまうところだったがフッと笑いを浮かべ口を挟む。
「だったらその姿は何だ。とても敬れたまま死んだとは思えないがな。大方そのあくどい力を恐れた人々にやられたんだろう。無念の想いを捨て、いい加減成仏したらどうだ」
言い当てられて口惜しいのか、鴛該はキリリと歯がみをしたがすぐ元の不敵な笑みの表情に戻り、邪気を含んだ声で言った。
「ふん、こざかしい若造めが。そんな口を叩けるのも今のうちだけよ。主のこの体は我の思うがままだ。主らが新皇を倒し、封じこまれていた我を解き放ったが為に己の身をなくすことになった悔しさを存分に味わうがよい……時は来た。今こそ積年の怨みを晴らし、我の力を愚か者共に示す機会が巡ってきたのだ。わーっはっはっは‥」
悪霊・鴛該は積もりつもった怨念のため見境がつかなくなり、世の人々を不幸に陥れようと画策している様子だった。
「そんなことはさせない!」
大神は渾身の力を振り絞って鴛該に近づいて行こうとしたが、何故か体は言うことが聞かなくなり、意識がどんどんと薄れていく。
「バカめが。主は霊力を使い果たし、おのが力の半分も使えない状態だ。故にこの身体の隅から隅まで全て我の思うままよ。傀儡に成り下がった哀れな人形の主に感謝するぞ」
鴛該の言葉を聞きながら、薄れゆく意識の中で大神は抵抗できない自分の不甲斐なさを悔やみ、メンバーや米田達の顔が次々浮かんでは消えていくのをぼんやりと感じ取っていた。
(みんな、すまん。今の俺にはどうすることもできない…)
その時金の髪をなびかせ、穏やかな翡翠の目で見つめて優しそうに微笑むマリアの姿が突然心の中に映し出された。
(マリア マリア マリア――――)
その切なく溢れんばかりの思いを最後に大神の意識は奈落の深い底へと落ちていってまった。
深夜、マリアはベッドのなかで急に目を覚ました。
(何だろう。この異様なまでの胸騒ぎは……)
起き上がってしばらく考えた後、マリアは手早く服を身につける。
どうにも嫌な予感は修まりそうもない。しかも常に隊長の顔が脳裏に浮かんでくる。
他の人間なら思い過ごしで片づけるものをマリアは冷静な考えで重大なことが起こりつつあると判断した。
それはいわば戦いのなかで培われ、自然と身についていた戦士故の鋭いカンと幾多の戦火をくぐり抜けてきた彼女の危険を察知する霊力が働いたものに違いなく、そして今までその直感は外れたことがなかった。
慎重にエンフィールドを胸元にしまい込み、そっと自室を出て大神の部屋の前に立つ。この不吉な予感が思い過ごしであることを願いつつ、小さなノックをして返事がないのを確かめると静かにドアを開けて音を立てないようにノブを回して閉め、ゆっくり室内に入っていく。
月明かりのなか、ベッドで大神は眠っていた。どこにも変わった様子はみられない。
(何だ。やっぱり私の勘違いだったんだわ…)
ホッと安心してベッドに近づき、大神の寝顔を覗き込む。愛しい思いを込めてその寝顔を見つめていると、突然大神の目がパチッと開いた。マリアは慌てて声をかける。
「あ‥その‥隊長の事が心配だったものでこんな夜遅くにお邪魔をしてしまいました、すみません。私、自室に戻りますので。では失礼します、お休みなさい」
そう言って出ていこうとするマリアの腕を掴み、自分の方に引き寄せると大神はその唇を強引に奪い我が物とした。
「う‥んっ‥」
目覚めていきなりのこの行為に驚いたマリアだったが、やがてその感触にうっとりと酔いしれ身も心も溶けそうになりかけた瞬間、頭の中で警鐘が鳴り響き、何故か目の前の大神が全然別の人間に見えてハッと我に返る。
「あなたは…誰なの?」
慌てて離れ、戸惑いと驚きの声で尋ねるマリアに今まで優しい表情をしていた仮面をかなぐり捨て、不気味な目の光を放ち、凄まじいまでのオーラを辺りにまき散らかせた怨霊が表面に現れて変貌を遂げる。
「クックッ‥この男が強く思う女だからうまく丸め込もうと思ったが、やはり見抜かれてしまったか。なまじ霊力が強いのも考え物だな、おのが命を縮めることになるのだから」
渇いた調子でしゃべるこの声も身体も間違いなく大神のものだったが、中身は別の人物がいるように思えてマリアは再度尋ねた。
「もう一度訊くわ。あなたは誰なの?隊長がどこにいるのかいいなさい!」
相手は何も言わずすっと手を上げ、マリアに向かって目には見えない力を放出した。
「あうっ!」
マリアはその力によって床に投げ出され、身体に強い衝撃を受けた。悪霊はベッドから降りて倒れ込んでいるマリアを小馬鹿にしたような目で見つめ話し始める。
「聞きたいならば冥土の土産に教えてやろう。我は大僧正鴛該。長きに渡り暗闇に封じ込まれていたが、先の戦いで抜け出ることができた。これからはこの身体を使い、我が怨念を晴らすことに決めたのだ。まず手始めにここの連中を皆殺しにして地階にある光武とやらのジョウキキカイを操ることにしよう」
この悪霊は大神の身体にぴったりと入り込んでる為か記憶や情報を全て把握しているらしく、得意そうに残酷な笑みを浮かべてそう言った。もう大神の面影はどこにも残っておらず、皺だらけの顔を引きつらせて口を開きかけた時、一瞬にしてその顔は元の大神の顔に戻っていた。
「マ‥リア‥聞こえるか?俺だ…」
苦しそうな表情で途切れ途切れにしゃべるその声にマリアは瞬時に大神だと理解し、立ち上がって返答する。
「た‥隊長?本当に隊長なんですね?」
せきこんで訊くマリアの問いに頷き、大神は辛そうに続けて話す。
「もう‥あまり時間が‥ない。悪霊に身体を奪われてしまって、もうすぐ意識まで奴に支配されそうなんだ。その前に…君に頼みがある」
「待ってて下さい。今、みんなを呼びにいきますから。きっと何とかなる筈です」
その確たる保証はどこにもなかったが、もう自分だけでは対処しきれないと感じたマリアは思わずそう口走るしかなかった。
「だ‥めだ。そんな余裕はもうな‥い。こいつは俺の身体を使ってせっかく平和になった帝都をめちゃくちゃにする気なんだ。そんなことをする前に俺を…撃ってくれ、マリア」
「なっ‥何ですって!?」
大神の最後の一言が信じられなくてマリアは悲痛な叫び声をあげた。
「こいつは俺の身体の隅々までぴったりと憑依している。だから俺が死ねばこいつは行き場を失い消滅するだろう。頼む、マリア。俺の意識がまだ保っていられるうちに……早く!」
「できません!!」
即答でマリアは答えた。たとえ悪霊に支配されていても目の前にいるのは愛しい、自分の命よりも大切な恋人なのだ。撃てるわけがない。震える声でかぶりを振り、マリアは縋るような目で大神を見つめていた。
大神の顔は更に苦痛で歪み、それでも精いっぱい力を振り絞ってマリアを説得する。
「このままだと奴は俺の身体を使って君を手にかけてしまう。それだけは…耐えられないんだ。そんなことをさせるくらいなら俺は……」
突然くるりと表情はおぞましいものに豹変した。
「ふん、閉じこめたつもりが想いが強すぎて出てしまったか。だがどう足掻いてももう手遅れだ」
そう言った後、一瞬だけ大神の顔が戻り、マリアに向かって力いっぱい叫んでいた。
「隊長命令だ!撃てっマリア!」
その言葉につられて右手はエンフィールドを探り、狙いを定めて引き金に手をかける。
「ほう‥撃てるのか、我を。だがお前には決してできまい。この身体を殺せばお前の愛しい男も一緒に地獄行きだ。それでも撃ちたければ撃つがよい」
絶対撃たないという自信を持って鴛該は面白そうに笑い、更に挑発するかの如く両手を広げて撃たせ易いポーズをとる。
(だめ‥できない。私に隊長を撃つことなんて…どうすれば‥どうすればいいの?)
如何なる事態をも冷静に判断して対処するマリアもさすがにこの状況下ではパニック状態に陥り、愛銃を構える手もブルブルと震えていた。その様子を見てせせら笑いをしながら鴛該はマリアに近づいていく。
「撃たぬのか?ならばこの場でお前を楽にしてやる。死ねえいっ!」
その時、マリアの心の中に強い声が飛び込んできた。
(撃つんだ!マリア!!)
「いやあぁぁぁぁっ!!」
シンと静まり返った帝劇に心が張り裂けんばかりの悲しい悲鳴と銃声が鳴り響き、みんなが飛び起きて騒ぎが起こったのはそれからしばらくたってのことであった。
「いやあ、あの時はどうなることかと思ったよ」
次の日の午後、大神はベッドの上でマリアが皮を剥いて差し出す林檎を美味しそうに頬張り、少し照れたように笑った。
マリアは林檎の皮を剥く作業をいったん休め、心からすまなそうに大神に話しかける。
「本当に……すみませんでした。いかに命令とはいえ、隊長に向けて銃を発砲するなんて…よくあんなことができたものだと今考えただけでもゾッとします」
マリアは昨夜の出来事を振り返り、大神が無事に生きて目の前で微笑んでいることに改めて幸せを感じていた。
マリアが放った弾は大神の左胸の心臓位置に近い脇腹すれすれに飛んでいったのだが、てっきり撃たれたとカン違いした鴛該は驚きのあまり大神の身体から抜け出て、空中に浮遊したところをすかさずありったけの霊力をこめて悪霊に向かい弾を撃ち続け、鴛該をその怨念ごと消滅させたのだった。
しばらく呆然としていたマリアはハッと我に返り、大神に駆け寄って安否を確かめたが、何処にも異状は無く、差しのべた手を握り返していつもの笑顔を浮かべる大神に心から安堵のため息を洩らした。
それから銃声を聞きつけ、みんなが何事だろうと駆けつけたので大神とマリアは事の詳細を説明したのだった。マリアが大神に向かって撃ったことを聞くと全員唖然と驚いていたが、傷もなく無事であることから納得して安心し、活躍した二人にそれぞれねぎらいと暖かな言葉をかけて円満解決となった。
次の日から大神はメンバーの見舞い攻めにあい、午後の静かな時間になってマリアが林檎を抱えてやって来たのだった。
「まだ…お身体の調子が戻ってなく、ゆっくりとした休養が必要なことは分かっていましたがどうしても一言、昨夜のお詫びを言いたくて来てしまいました。すみません」
「ああ。身体の方がちょっとだるいだけで他は何ともないさ。それよりどうして謝る必要なんかあるんだい?あれは突然の逼迫した事態であってマリアは俺の命令に従っただけじゃないか。でも‥あの時は俺もてっきり心臓を打ち抜かれたと思ったよ」
マリアは少し微笑み、そしてちょっぴり悲しい目をして視線を落とす。
「私は‥あなたを撃つなんてこと、どうしてもできませんでした。でも命令を受けた以上実行しなければならないし‥そのジレンマに悩んでとっさにあのような方法をとったんです。それこそ一か八かの賭でしたけど」
「うん。さすがマリアだ。ありがとう」
大神は腕を伸ばし、愛おしそうにマリアの頬を撫でたあと頭を引き寄せて軽い口づけをする。
しばらくしてマリアはふっと顔を曇らせ、小さくつぶやく。
「でも私、隊長に銃を向けたこと、やっぱり気にかかってしまいます。部下として任務を全うしたとしてもあなたの恋人としては失格なんじゃないかってふと思ってしまって…」
大神は溢れんばかりの優しい笑顔でマリアの顔をじっと見つめながら言った。
「君はその銃で俺を守ってくれたじゃないか。どうしてそれが失格になるんだい?マリアは俺にとって最高の部下であり、最愛の恋人なんだよ。それはいつまでも変わることはないさ」
その言葉を聞いてポッと顔を赤らめるマリアに悪戯っぽい表情を浮かべた大神が続けて口を開く。
「う〜ん、でも何だか今ひとつ調子がでないんだ。ねえ、マリア。今日は君にいっぱい甘えちゃってもいいかな?」
「はい、もちろん」
即座に二つ返事で答え、微笑んでうなづくマリアに大神はまず手始めに口移しで林檎を食べさせてくれとねだった。マリアはしばらく黙って顔を真っ赤にして大神を見つめていたが、やがておずおずと小さく切った林檎の端を口にくわえ、そっと唇に持っていった。
「うん、美味しいよ。じゃあさ、今度は……」マリアの手を取り、自分の下半身に移動させていく。
マリアは慌てて手を引っ込ませ、更に顔を赤く染めてたしなめる。
「隊長、何をなさるんですかっ!こんな時に。しかもまだ昼間ですよっ!」
そんな怒った様子のマリアを気にも留めず、大神はつらっとした顔で答える。
「だって今日一日は甘えてもいいんだろ?俺、まだ少し身体がだるいからマリアが積極的になってリードしてくれたら嬉しいんだけどな」
何の屈託もない子供のようにニコニコと無邪気に笑って言う大神にマリアは一つため息をつき、窺うようにじっとその顔を見つめる。
「…?何だい?」
「隊長。今度は色情霊が憑いた、なんてことないですよね?」
思わずクスクス笑い、大神はすぐさま切り返す。
「だったら確かめてみてよ。俺を死ぬほど気持ちよくさせてくれたら霊がびっくりして飛び出すかもな」
「隊長!何てこと言うんです!」
不謹慎な云いようにマリアが再度大神をたしなめる。
「ごめん、冗談だよ。でも…いいだろ?マリア」
漆黒の瞳でせがむように熱く見つめ、普段はこんな風に甘えた顔を見せない大神にマリアは仕方ないといった表情でそっと小さく「今日だけですよ?」とささやいた。
大神はカーテンを閉め、ドアに鍵を掛けて近づいてくるマリアを嬉しそうに眺めていた。
Fin.
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相互リンクの記念に、かようなSSを頂戴しました♪ ゆうりんさん、相変わらずお上手ですねぇ。前半ホラー・アドレナリン系かと思わせておいて、後半一気にラヴラヴに持っていく辺り、よく出来ています(^^)。すっかり楽しませて戴きました♪
みなさんもこの後の展開は気になるところかと思いますが、ゆうりんさんはしっかり書いてくださっています♪ た・だ・し、お子ちゃま方はご遠慮くださいね。ここから先はオトナの時間です(^^;。このページのどこか(ってバレバレだけど・・・(^^;)にリンクが埋め込んでありますので、オトナの方はどうぞ楽しんでってください。
その際、使用上の注意を良く読み、用法、用量を守ってお楽しみくださいねっ♪

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