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花めぐり
   野崎茂太郎

彼岸花

 彼岸花は私が古代の植物に興味を持つきっかけになった花で、その今昔を調べるといろいろと不思議なところがあります。呼び名も今は彼岸花か曼珠沙華にまとまってきましたが、この花ぐらい方言の多い花はありません。200種とも、人によっては400種あるとも云いますが、江戸末期の本草書「重修本草綱目啓蒙」には、当時各地で呼んでいた面白い名前が48種載っています。

マンジュシャケ  京 シビトバナ  京 テンガイバナ  京
キツネノイモ   京 ヂゴクバナ カラスノマクラ
ケナシイモ キツネバナ  備前 サンマイバナ  勢州
ヘソビ   勢州 ホソビ   勢州 シタカリバナ   松坂
キツネノタイマツ  越前 ステゴノハナ  筑前 ステゴグサ  筑前
キツネノシリヌグヒ  越前 シタマガリ  江州 ウシノニンニク  江州
シタコジケ  和州 ヒガングサ  仙台 セウゼウバナ  仙台
クハエンサウ  仙台 ワスレグサ  仙台 ノダイマツ  能州
テクサリバナ  能州 テクサリクサ  播州 フジバカマ  播州
シビレバナ  赤穂 ヒガンバナ  肥前 ドクスミラ  肥前
キツネノヨメゴ  肥前 オホスガナ  熊野 オオヰヰ  熊野
マンジュサケ  熊野 ユウレイバナ  上総 カハカンジ  駿州
スズカケ  土州 ウシモメラ  石州 ハヌケグサ  豊後
ジュズバナ  予州 イチヤニョロリ  今治 ホドヅラ  松山
テアキバナ  笹山 キツネノアウギ  濃州 ウシオビ  濃州
イツトキバナ  防州 ヤクビョウバナ 越後 ハミズハナミズ  加賀

 代表的なものを挙げたのでしょうが、皆さんに故郷ではどう呼んでいたのでしょうか。しかし、見た通りシビトとかキツネ・カラス・ステゴ・ヅゴク・ドク・シビレ・ユウレイ・ヤクビョウなど、芳しくないものばかりです。大昔から人の近くで鮮烈な赤を燃やしてきたわりには、好かれない花だったことが分かります。庶民の目は花の感じを正確にとらえていて、この方言のなかにも昔のなぞをとく鍵があるのですが、それはまた別の機会に書きましょう。
 *先日の植物観察会で、彼岸花の方言を教えてほしいというご要望がありましたので、季節をはずれましたがこれを載せることにしました。
                 (岳友  2001年11月号より)