〜 ちょっとパロってみました 〜
” 第1話 ”
これはとんでもなく、読むも無惨なお話です。
他人事だと笑ってはいけません、明日は貴方かも。
私の友人が”雲上ブランド”バセロンのピボテッドデテントクロノメーターを購入し、我が家に遊びに来た。当然自慢が目的である。デテントの実物を見た事が無かった私は、相手の目的は重々判ってはいるものの丁重に接待した。どうでもよい自慢話をひとしきり聞かされた後、ようやく触らせてもらった。外観はそこそこに裏蓋を開けた。ダストカバー(中蓋のこと)にはCHRONOMETRE de POCHE 、Vacheron & Constantin 。その他にもどうやらフランス語?で ECHAPPEMENT BASCULE DETENTE A RESSORT 、Levee Repos degagement 、DIX TROUS & Deux bontre pivots en Rubie ?とある。全然理解できないが最後にはSpiral Breguet BALANCIER CONPENSE とあった。この時点(今も変わらず)では、なんやよう判らんけどバセロンのデテント脱進機で、ブレゲ巻き上げヒゲを使ったコンペンセーションバランステンプやなと理解した。
その時までは胡散臭い気持ちであったが中蓋を開けると、そのあまりの”輝き”に驚いた。それは約1世紀半も前に作られたにもかかわらず、地盤、ブリッジ、角穴車、香箱、輪列、ガンギ全てが金色に輝いているではないか。真面目に金無垢ブリッジかと驚いた。しかも止めは全てサビひとつ無いブルースチールネジ。 スミマセンっ、ピンぼけで〜す。
レギュレーターも新品の様に見事にポリッシュされている。図右下にある錘部分はダイヤかっ!と思う程であった。



次に驚いたのはガンギが動いていない様に見えた事であった(実は動いているのが、ガンギ腕の部分で分かった)。デテントは機械式だが、秒針がクォーツの様に動くためであったのだが、なにせ初めて見た私には感動的であった。
非常に興味を持った私は、自分のデイトナを友人に人質ならぬ”ものじち”として預け、1週間味わった。見れば見る程可愛くなるものである。1週間後には針の形状まで気に入っていた。明日返さなければならないある朝、どうしても使いたくなり仕事に持参した。最後の1日を満喫したい私は、ポケットの中で感触を確かめるようにほくそ笑んでいたが、ふと財布を出そうとした際にな、なんと一緒にポケットから飛び出!して床に・・・・・・・・(真っ白)・・・・・(真っ白)・・・・・・・・・(真っ白)・・・・・・・・・・。はっと思った瞬間には、床に散らばったガラスの破片と、欠けたエナメルダイヤル、秒針も落下時刻を示したまま停止していた。『大事な時計なんでしょう』と秘書さんの心配そうな声に、『形あるものはいつかは壊れるよ』と嘯きながら必死で涙を堪えてホウキでガラスを掃いた。独りで掃いた。エナメルものを落とした事がある人なら解ってもらえるだろう。一生懸命掃除しながら、その時計と今まで大切に扱ってこられたであろう方々に心から詫びた。いろんな想いが廻り、その日が一日チョーブルーであったことは言うに及ばず。その後3度の修理にトライするも落下前とは雲泥の差。上述の理由からお勧めできない状態となった。しかし肝心の機械は致命的なダメージが無かったらしく、今も正確に元気である事に少し慰められている。
PS1: デテントは修理してくれる所を探すのがチョー大変。私は5件回りました。修理費もスンゴイよ!グスッ PS2: ”ものじち”のデイトナは、返ってくる事は無かった(・・・)。 PS3: 私がJ&Lさんの懐中ポーチに飛びついたのは言うまでも無い。


