ウィーンブラスアンサンブル

先日聞かれた方も沢山いらっしゃると思いますが、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の金管楽器奏者を中心とした金管アンサンブル「ウィーンブラスアンサンブル」が来日しました。光栄にもその演奏会の中の1つに一緒に演奏させていただく機会を得ました。私には「涙が出るほど素晴らしい」演奏でしたが、人それぞれ色々な感じ方をされたと思います。「とても柔らかい音がした」「ホールが響きで満たされた」「お金を返して欲しかった」などなど様々ですね。いずれにしても私たちが、音楽をやるうえで、楽器を演奏するうえでとてもためになるヒントを与えてくれたと思います。

まずこれはメンバーの一人、トロンボーンのバウスフィールド氏自身の言葉でもあるのですが、金管アンサンブルをやっているとかラッパを吹いているとかそういうことではなく、「音楽をやっている」ということです。吹奏楽をやっていたり、音大で楽器を専攻している学生さんの中には、このごく当たり前のことを不思議に思う人もいるかもしれません。楽器をうまく吹くことが目的ではなく、美しい音楽をやることが目的です。そのためにはどういう「音」で音楽をやるのかが、最も重要なことですよね。
彼らは常に「響き」を利用して音楽をやっています。しかし彼らはそれを特別な意識を持ってやっているのではないでしょう。彼らはあれが「音」だと無意識に思っているわけです。音楽をするということはあの「音」でやることを意味するのでしょう。
例えば同じドイツ語圏の他の金管アンサンブルでも、この点で明らかに違っています。フォルテでも振動音を拡大しているのではありません。私はこのことに着目するかどうかで、我々の体の使い方に大きな差が出ると考えます。しかし私たちが振動を拡大した音や怒鳴り声も同じ音と考えてしまうと、混乱してしまいます。
吹奏楽コンクールに向けて頑張っている生徒さんの中には譜面の音をちゃんと出せて、他の人とピッチがあってリズムが合うことを目的にしている人に良く出会います。しかしそのような生徒さんにいくら技術的なヒントをあげてもなかなかわかってくれません。つまりどういう音で、どういう音楽をやりたいかというイメージが無ければ体のバランスは変わってくれないのです。

もう一つ、言わずとしれた怪物ハンス・ガンシュ氏の筆舌しがたい演奏に度肝をぬかれた方も少なくないと思います。どうしても1番を吹いているのであの輝かしくしかも響き豊かなハイトーンに注目しがちで、本番だけをお聞きになっている皆さんにはわかりずらいかもしれませんが、それ以上に我々と違っているのが胸声区、つまり低音域です。ドイツ語でsitzen、イタリア語でAppoggiare la voce、藤井先生の「管楽器の呼吸法」の中では「喉を意識的に下げている」のではなく、「喉が沈む」そしてまた「喉(音)が安定する」と表現されている部分です。ベルカントモードの基本形です。ここに彼の底力の凄さがあります。だから頭声区や美しいレガートにも差が出ます。ガンシュ氏だけでなく彼らは皆当然のごとくやってみせてくれました。
今回は私も本当にいろいろ勉強になりました。皆さんはどう感じたでしょうか?
ウィーンブラスの皆さんありがとう!Danke vielmals!

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