Ganschさんのこぼれ話

昨年の12月にオーストリアのアンサンブル「プロブラス」が来日しました。形にとらわれない自由な演奏でメンバーの個性がフルに発揮された圧倒的な演奏でした。
数少ない公演回数でしたが、私が教えている聖徳大学でも本番があり、ハンス・ガンシュさんはウォーミングアップをしながら私にいろいろな話しをしてくれましたので、その中のひとつを書いてみました。

ガンシュさんは「年をとると皆タンギングがダメになるってよく言うけど、この頃一日の吹きはじめはタンギングが遅くて困るんだよ。だからこういうパターンでさらっているんだよ。」と言って音階と分散和音を混ぜたトリプルとシングルタンギングのパターンを聞かせてくれました。そして「こうやってやっているとだんだん速く出来るようになって来て、しかもアンブシュアの無駄な力が抜けてくるんだよ。どうしてかわからないんだけれどね。」と言ってまたさらいはじめました。
あれだけ天才的な名手なのですから舌とアンブシュアの関係なんて考えたこともないのでしょうが、それらが関連性を持つためには息の流れ、喉の状態を無視できないのは今まで書いてきた通りです。
タンギングが遅い、思うように行かないというのは、舌や唇、喉などに何らかの余分な力が入っていたり息の流れがどこかで邪魔されていたりする場合がほとんどだと思います。
舌と喉は舌骨を介して直結しているようなものですから舌に余分な力が入っていれば喉にも力が入りやすいわけで、喉に力が入ればアンブシュアにも影響を及ぼしますし、その逆で喉や舌の余分な力が抜ければアンブシュアの力が抜ける場合もあるわけです。
リップスラーをフラッターをしながら練習させるドイツの先生もいますが、まさにそれを狙っていると思います。
少し前にロボットがトランペットを演奏しているのをテレビで見ました。調べたわけではないのであくまでも想像ですが、おそらく空気を送る装置や唇の役割をする部分等が完全に独立して制御出来る仕組みになっていると思われます。しかし人間は良くも悪くもそれらの器官が関連し合っているということが大きく違っていて大変重要なことだと思います。
ガンシュさんは上手過ぎて参考にならないよという人もいるようですが、私には会うたびに演奏やちょっとした話を通じて実に沢山のことを教えてくれます。今年もまた10月と12月に来日予定ですのでとても楽しみです。
皆さんもウィーンブラスアンサンブルアート・オブ・ブラス・ウィーンの演奏会へ出掛けてみませんか?
圧倒されるだけでなくひょっとすると思わぬヒントが見つかるかもしれませんよ!

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