俳 句 幼 稚 園

        俳句入門ホヤホヤの幼稚園児です。
        メロウ俳壇に投句した句を中心に掲げました。

別室:自句自解

平成十八年の作品

神無月 アドバルーンの文字の裏見え秋日和
良夜なり身の置くところ忘れゐし
燃えさかる炎と見たり曼珠沙華
会へばすぐ残暑かこちて友も老く
長月 故里の夜のしじまや天の川
雨あとの土くろぐろとこぼれ萩
石仏の微笑みおはす赤とんぼ
それっきり台風は来ず萩盛り
白萩を蝶とも紛ふ風のあり
葉月 海へ出る道しるべあり月見草
反抗期少年黙し花茨
明日知らす劇しき色に夕焼くる
雨払ふ風ここちよし雲の峰
文月 大の字の崩るる気配大昼寝
夏の蝶白き花より翔ちゆけり
風鈴に怠惰の夢を破られぬ



平成十七年の作品

霜月 石仏は伏し目に在はし木の実降る
一望の大夕焼や鳥渡る
追ひつきし人と並びて落葉踏む
亡き友を偲びて新酒酌みにけり
葉月 うかうかと丸寝のままや明易し
ともかくも生きて残暑の日々に耐ゆ
回向してそそくさと去る盆の僧
風鈴に風のひそめる気配かな
文月 蜘蛛の囲の破るに惜しき巧みかな
見覚えのひとの真深き夏帽子
梅雨愉し家族の傘を派手に干し
穴出でし蟻にも進む序列あり
弥生 手づくりの雛に囲まれ白寿かな
スコップに土の素直や草萌ゆる
咲くはよし落つるもよしと椿愛づ
木の肌にいのちかへりてあたたかし
如月 アーケード尽きてまぶしき春の空
植替を待つ鉢並べ日脚伸ぶ
鯉の朱ほのと沈めて池凍る


平成十六年の作品

睦月 負けてやることも一興歌留多とり
元日といふ大いなるこの一ト日
ここにまた一冊了へぬ古日記
松七日ゆるむ心にねじを巻く
冬日和亀は動かず石となる
代筆の賀状の主を思ひけり
毛筆の賀状ひときわめでたかり
如月 枯尾花風の中なる二体仏
咳き込んで老ひを見られてしまひけり
気が合ふて暖簾くぐりぬ河豚の宿
水仙の香をこぼしつつ部屋移す
年月のここにはじまる初日記
ケータイで雪の深さをきくツアー
弥生 枕辺に句寄せを置きて春の風邪
下萌や足の裏より地の鼓動
屋台より出て誘はるる春の月
温む水ゆらりとあくた岸に寄す
日向ぼこ昔のことの悔ひ多し
水無月 大の字が少し動いて昼寝覚
バス降りてたちまち遠し紅日傘
そこここに心残しの更衣
羅の胸うすうして健気なり
苦吟して枕辺にメモ明易き
師走 しぐるるや小走りに行く迎へ傘
病むひとに障子閉めけり時雨らし
一握の土の温みや冬日和
美術館出て暫くの落葉径
山茶花の散りしく朝の訃報きく



平成十五年の作品

三月 父の持て帰りし話題春燈下
淡路まで海つづく日や菜の花忌
下萌を踏む足裏の踊りけり
初蝶や小橋を渡り初めしより
啓蟄のぬっと出でたる匂ひかな
四月 花に来て人に疲れてしまひけり
病むひとに手を添へ苗木植ゑにけり
囀りに導かれたる峠かな
初蝶のさまよふ路地のまぶしかり
肩越へてゆく初蝶にしたしめり
五月 風薫る柳生の里の佛たち
紫陽花の色に埋まりて佇つ女
山深く住むひとありや鯉幟
鯉のぼり尾がしたたかに屋根を打つ
六月 昼寝覚残りし夢のままにあり
更衣去年のものが合はぬなり
ひらひらと行きつ戻りつ梅雨の蝶
雨を待ちかまへてゐるや枝蛙
散策の足伸ばしたる梅雨晴れ間
十二月 古池に亀一族の日向ぼこ
極月の昼のせわしき釘を打つ
敷石を先ず濡らしたり初時雨
迫りくるニュースの重さ十二月
誰れ彼れに逢ひたしおでん煮え詰まる


平成十四年の作品

五月 風薫る見知らぬ駅に降りにけり 2
囀りや旅の目覚めのここちよし 4
一ト雨に深められたる山青葉 2
短夜を露天風呂にて明けにけり -
ほととぎす声の誘ひし径深し -
六月 更衣好みのものも古うなり 4
うすものの妻の肩先やや細し 3
昼寝覚われは宇宙に浮かび居る 2
夏布団蹴っとばしたる子の寝息 1
遠蛙過ぎこし日々に悔いも無し -
七月 墓参り藪蚊打つべし打つべからず 2
音なくて天空光る遠花火 1
水近く思ひおもひに蛍飛ぶ 1
雲の峯一つにならんとしてならず 1
曝書せむ古き日記にはかどらず 1
八月 水羊羹涼しき色をすくひけり 4
狙はれてゐるとも知らず油虫 3
台風の逸れたると聞く朝の雲 1
団扇手に撮らるる位置に直りけり 3
組み上がる鉄骨光る炎暑かな 1
九月 一望の大夕焼や鳥渡る 3
秋草を踏むまじ心急かるとも 3
道しるべ倒れしままや草紅葉 2
沈む陽に真向かふもあり花すすき 1
碑に苔のつきし重みや木下闇 1
十月 散り敷きて彩重ねたる落葉かな 6
秋思吾れ旅の枕を裏返す 4
奥の宮落葉任せや神の留守 3
台風のそれてしみじみ虫の夜 1
石仏の微笑むあたり木の実落つ 1
十一月 萩刈りてより天空の広さかな 3
清正の眼光やさし菊人形 1
冬うらら迎へし古稀の誕生日
散る萩を掃きととのへて今朝の門
仙人掌の棘の痛むや朝寒し
十二月 熱燗や話し上手に聞き上手 6
冬薔薇の色を惜しみて絵筆とる 4
着ぶくれて無口となりし二人かな 4
ししゃも焼きつつ最果ての冬を聴く 3
見る影もなく凍庭となりにける 2


       平成十三年の作品
      (◎は当月選句で最高点を得た句)

睦月 そのひとの賀状むなしく探しけり
かしこまる家族となりて屠蘇を受く
初詣茶髪の巫女の神籤引く
如月 小作りの雛に似合ひの暮らしかな
カレンダーめくれば春やルノワール
赤き実に馴れて遊ぶや寒雀
弥生 夜通しの猫の恋果つ首尾の程
卯月
皐月 愚痴聞いてやりつつ苺つぶしけり
花桐の落つ気配して逝きたまふ
便りまだ届かぬままに新茶汲む
紙兜どの児も似合ふ五月かな
水無月 青簾下げて宴の栓を抜く
紫陽花の藍に染まりて佇みぬ
夏帯を締めて鏡と対面す
文月 昼寝覚すべては遠き世のごとく
下闇の奥に小さき佛たち
開け放ち大の字になる夏座敷
葉月 雷雨来て廚の声のあわただし
雲の峯二つ並びて相寄らず
夏蝶のゆきつく果ての水辺かな
長月 バス降りて蜻蛉の群れに出逢ひけり
ここまでと別れる角に十三夜
ぎんなんの落つる音して京の宿
秋の蚊のめずらしければ追ひもせず
風呂あがり発泡酒よし秋刀魚食ふ
神無月 秋晴れや行くあてもなく靴を履く
草の花秘かに蝶を翔たせけり
ビールより菊姫がよし月の宴
飛行雲延びゆく先に花野かな
霜月 垣越しにいただく菊の手に余り
山荘は雲に目ざめて露に暮る
声あげて枯葉のあとを追ふ子かな
師走 その糸は見えず蓑虫風に乗る
ふかぶかと重なり合ふて山眠る
家ぬちに喃語満つるや冬ぬくし
熱燗を口で迎へし良夜かな


平成十二年の作品
一月 音のして賀状の気配たしかなり
元朝やまずは日の丸掲げたり
何ごとの起こらぬままに年迎ふ
暖冬や眠れる亡父の墓洗ふ
初ゆめの夢のつづきを惜しみけり
二月 息こめて世に出る構へ白椿
にほの曳く四温の水尾の消えにけり
梅が香や茶店にわかになまめきぬ
三月 杖つきてためらひ多し青き踏む
下萌を踏みてたしかな地の鼓動
囀りや気配うかがふ庭の先
五月 保津下る舟の速さや渓若葉
戸を繰れば夏のにほひのまとひけり
えにしだの黄の染む垣の広さかな
たかんなのそれと知られる京の味
六月 昼寝覚動かぬものに瞳を凝らす
児に向けるシャッターチャンス水鉄砲
ナイターや六甲颪に身震いす
車椅子擦れ違ひたる夏帽子
七月 大和路や日陰のほしき野のほとけ
あとずさりつつ手花火の児らの貌
あの音のするあたりらし遠花火
八月 大の字に天下取ったる大昼寝
予後吾れぞ炎天怖ることあらじ
やがてまた崩るる気配雲の峯
九月 試歩一歩又一歩踏む草紅葉
踊りの輪抜けて相寄る影ふたつ
白々と砂利床光り秋の川
十月 落ちぶれてにらみのきかぬ案山子かな
コスモスに隠れて在はす石佛
コスモスの波のかなたや法隆寺
秋高しこのみち真直ぐ歩かなむ
十一月 無人駅まづ出迎へは草虱
寄せ鍋に足らざるひとを懐ひけり
舞ひ舞ひてやがて落ちつく紅葉かな
もの言はぬ石に秋思や竜安寺
十二月 柚子湯して遠き日のこと思ひけり
冬日射す庭になにやら動くもの
落葉踏む吾が足音をいとほしむ
大焚火幼き声のはじけつつ


 平成十一年十一月までの分です。         
新年・冬     

                         平成十一年十二月の作品です