グリセミック指数 Glycemic Index ( GI )
Human Nutrition Unit, School of Molecular and Microbial Biosciences, University of Sydneyのホームページより。
グリセミック指数は、食後に血糖値を上昇させる程度による炭水化物のランキングであり、0から100までの目盛りで示される。
グリセミック指数の高い食品は消化吸収が早く、血糖値の変動をきたしやすい。 グリセミック指数の低い食品は消化吸収が遅いことから血糖値とインスリン濃度の変動が少なく、健康維持に有利なことが知られている。
グリセミック指数の低い食品は、糖尿病のI型でもII型でも血糖と脂質のレベルを改善する。 これらの食品は食欲と体重をコントロールするのに役立ち、インスリン・レベルとインスリン抵抗性を下げる効果がある。
ハーバード大学衛生学教室の研究によれば、II型糖尿病や心臓の冠動脈疾患のリスクは食事全体のグリセミック指数と密接に関連している。 1992年にWHOと国連食糧農業機構(FAO)は、先進工業国の人々が糖尿病、冠動脈疾患、肥満など富裕層に共通する疾患になることを予防するため、低グリセミック指数の食事を基本とするように勧告している。
グリセミック指数の測定
一晩絶食した健康人に10〜50グラムの炭水化物を含む食品を食べさせる。 指尖血液サンプルを15〜30分ごとに採取し、2時間の血糖曲線を描く。 試験食を摂ったあとの血糖値の上昇を反映させるために、この曲線下面積area under curve ( AUC )を計算する。 試験食の曲線下面積を、同量のブドウ糖摂取後に描かれる曲線下面積で割って100倍した値が、グリセミック指数である。 標準食品を用いることが、被検査者の身体的な特徴による交絡(confounding)の影響を差し引くために不可欠である。 各食品のランク付けとして、10人の被検者で測定したグリセミック指数の平均値が発表されている。
参考食品 試験食

ブドウ糖、グリセミック指数=100 レンズ豆、グリセミック指数=40
参照食品と試験食の炭水化物(でんぷん質と糖類)は等量でなければならない。
食品のグリセミック指数は食品メーカーにとっても重要な意味を持っている。 オーストラリアの市場に出ている食品の栄養表示パネルには、グリセミック指数が表示されたものがある。 食品のラベルに見られた複合炭水化物、砂糖などの用語は、今日では栄養学的、あるいは生理学的にあまり意味をもたないものとみなされる。 WHOや国際食糧農業機構はこれらの用語を取り除き、その食品に含まれる炭水化物の量とグリセミック指数を表示することを勧告している。 併しながら食品のグリセミック指数のランキングは生理学的に試験されるべきであり、現状では全世界でも限られたセンターでしか正当なテストをしていない。 シドニー大学の人類栄養部門(Human Nutrition Unit)は20数年にわたりグリセミック指数テストの最先端にあり、数百の食品のテストをして来た。 ジェニー ブランド・ミラー(Jennie Brand Miller)はアメリカ臨床栄養学雑誌の1995年と2002年に発表された国際グリセミック指数表の著者代表である。
ジェニー ブランド・ミラーの、「The New Glucose Revolution」、「The New Glucose Revolution Life Plan」その他の糖尿病、心冠動脈疾患、肥満対策の本は、1996年から素人だけでなく健康管理者たちにも読まれ、170万部も出版されている。 英国版は1997年、北米版は1999年6月から発売され、オランダ、フランス、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、スペイン、ポーランド、日本語版も出版されている。 これら全ての出版物において最後部には600種類以上の食品のグリセミック指数表が載っている。 その多くはHuman Nutrition Unitで試験されたものである。
グリセミック指数シンボル・プログラム
消費者が食品のグリセミック指数を知るために、2002年にはオーストラリアでグリセミック指数シンボル・プログラムが発足した。 このシンボルを持つ食品は、公認された研究所で正規な検査を経たことが保証されている。
グリセミック指数は何に役立つか?
グリセミック指数の高い食品は、特に太りすぎで座業の人にとって有害である。 主に低グリセミック指数の炭水化物を摂ることに切り替えれば、ブドウ糖はゆるやかに血流に流れ込み、エネルギーバランスがとれて、食間に満腹感を持つようになる。
低グリセミック指数の炭水化物を摂れば、体重のコントロールが出来る。
低グリセミック指数の炭水化物を摂れば、体のインスリン感受性を高める。
低グリセミック指数の炭水化物を摂れば、糖尿病のコントロールを良くする。
低グリセミック指数の炭水化物を摂れば、心疾患の危険性を低くする。
低グリセミック指数の炭水化物を摂れば、血液中のコレステロールを下げる。
低グリセミック指数の炭水化物を摂れば、PCOS症状(多嚢胞卵巣症候群?)を改善する。
低グリセミック指数の炭水化物を摂れば、空腹感をへらして満腹感が持続する。
低グリセミック指数の炭水化物を摂れば、身体的な耐久力を保つ。
高グリセミック指数の炭水化物を摂れば、運動後に炭水化物が再補充される。
どのように低グリセミック指数食にスイッチするか?
基本的には高グリセミック指数食を低グリセミック食と取り替えるに過ぎない。 食品の種類を数えたり計算をする必要はない。 健康な低グリセミック食を摂っていることを確認するだけである。
朝食にオート麦、大麦、ふすまなどの穀類を摂る。
全粒、石挽きの粉、酸いパン練粉を用いる。
ジャガイモ消費量を減らす。
果物と野菜を充分に摂る。
米食を摂る。
パスタ、ヌードルを摂る。
ビネグレット・ドレッシングで味付けしたサラダ野菜を充分に摂る。
グリセミック指数( glycemic
index, GI) とブドウ糖負荷( 糖質負荷指数、 glycemic load, GL) はどこが違うのか?
グリセミック指数は食品中の炭水化物の血糖値を上げる潜在能力を表現するものである。 実際の血糖値は食品の質と量によって決まる。 血糖値に対する食品の影響は ブドウ糖負荷=(グリセミック指数÷100 )× 炭水化物の量 と言う式で予測できる。 つまり、ブドウ糖負荷は食品のグリセミック指数に基づいた全体としての血糖反応を規定する。 例:スプーン一杯のジャム(グリセミック指数=51)では、 ブドウ糖負荷=(51 X 5)/100=2.5 である。 例:1単位のブドウ糖負荷=1 グラムのブドウ糖。 一回の食事、或いは一日の食事、或いはそれより長い期間のブドウ糖負荷を合計することができる。 典型的な食事では一日100 GL単位(60〜180)である。
ビール、ワイン、蒸留酒などのアルコール飲料のグリセミック指数は? アルコール飲料はきわめて少量しか炭水化物を含んでいない。 実際、ビールには100mlあたり3〜4グラムの炭水化物が含まれているが、大抵のワインや蒸留酒は炭水化物を含んでいない。 10オンス(約280 グラム)のビールには約10グラムの炭水化物があり、同量のソフトドリンクでは36グラムの炭水化物が含まれている。 ビールは血糖値を僅かに上昇させるだけである。 馬鹿げたアイデアだがビールを大量に飲めば血糖値が上昇するだろう。
何故、同じタイプの食品でグリセミック指数に変動があるのか? 例えば、焼いたジャガイモのグリセミック指数が何故56から111まで2倍も変動するのか? グリセミック指数のデータベースは世界各国でのグリセミック指数の検査結果で再現性を確認している。 白いパン、胚乳パン(wholemeal bread)、リンゴ、コーンフレーク、朝食用シリアルなど、どこで誰が調べようと同じ結果を得る。 ばらつきがあるとしたら4つの可能性がある: 1)テストグループの中には我々ほどの経験がない、あるいは不正確な所がある。 彼らは静脈血を用いているので、毛細血管血液よりも変動性がある。 我々が或る製品をテストするときには繰り返しをして結果は±5%である。 これは蛋白質、脂肪、線維などの栄養物データと同様である。 2)ジャガイモ、米、オート麦は種類によって変動があることは事実である。 種類によってでんぷん質(アミローゼ、アミロペクチン)の含有量が異なり、でんぷん質のゼラチン化の程度に違いがある。 果糖などの糖質では、溶液の濃度が胃内容物の排出速度の違いを生ずるので、グリセミック反応も違ってくる。 更に稀釈された溶液、例えば500ml中25グラムの果糖では、250ml中25グラムの果糖よりも高いグリセミック指数になる。 しかし果糖は どのように消費しても非常に低いグリセミック指数を呈する。 3)メーカーはしばしば脂肪含有量を減らすことなどによって製品の表現(formulation)を変える。 脂肪を減らせばグリセミック指数は増加する。 メーカーは処方、或いは供給元の異なる素材で著しい変化を生じるならば、製品を再テストすればよい。 4)或る食品はII型の糖尿病患者でテストされている。 これらの値は健康人の場合よりも高くなる。 データベースでテストの構成に関する情報をフォローするべきである。
何故パスタのグリセミック指数は低いのか? パスタのグリセミック指数は、パスタの練粉にあるスポンジ様の蛋白質(グルテン)分子の網目の中に、ゼラチン化していないでんぷん質顆粒を物理的にとり込んでいるので低い。 パスタはこの点で独特である。 その結果、パスタは形や大きさが違っても、グリセミック指数はかなり低い(30〜60)。 アジアのウドンなどの麺類や米のバーミセリも低あるいは中間のグリセミック指数である。
野菜でも高グリセミック指数のものがある。 糖尿病患者はこれらの野菜を避けるべきか? 明らかに、そうではない。 ジャガイモや穀類と違って、これらの野菜は炭水化物の含有量が非常に低いからである。 それはグリセミック指数が高くても、 糖質負荷指数-=((グリセミック指数÷100)×一食分の野菜中の炭水化物) が低いからである。 野菜は炭水化物の量が少なく、微量の他の栄養物を含んでいるので、 食べたいだけ食べてよい。
高脂肪食の中にはグリセミック指数の低いものがある。 これはその食品について誤った有利な印象を与えないか? その通り。 特にその脂肪が飽和脂肪であるならば誤りである。 ポテトチップスやフライドポテトのグリセミック指数は焼きジャガイモよりも低い。 食品中に脂肪が多いと胃からの排出が遅れて、その食品の消化速度も遅れる。 しかしその食品の飽和脂肪は心疾患のリスクを高める。 食品中の脂肪の種類を知ることが、それを全く避けることよりも重要である。 アボカド、くるみ、豆類などの食品のなかには良い脂肪が含まれているが、乳製品、ケーキ、ビスケットなどには飽和脂肪酸が含まれている。 特別な場合以外にはケーキやビスケットを食べないほうが良い。
健康を保つためには毎食低グリセミック指数の食事を摂る必要があるか? それは違う。 糖質負荷の影響を減らす低グリセミック指数の食事の効果は、次の食事まで持続するからである。 このことは、前日に低グリセミック指数の夕食を摂った後の朝食や、低グリセミック指数の朝食を摂った後の昼食に当てはまる。 この予想外の有利な効果は“second meal
effect” と呼ばれる。 しかしこの効果を過信してはならない。 我々は毎食少なくとも一つの低グリセミック指数の食事を摂ることを勧める。
大抵のパンやジャガイモのグリセミック指数は高い。 私の好物を止めるべきだろうか?
パンやジャガイモはグリセミック指数が高いけれど、あなたが全体としてグリセミック指数を下げる目的を持っている場合にも、高炭水化物、低脂肪食で主要な役割を担っている。 健康のためには、炭水化物のおよそ半分だけについては、高グリセミック指数から低グリセミック指数に切り替える必要がある。 勿論、パンやジャガイモの中には低グリセミック指数のものもあり、グリセミック指数を下げるためには出来るだけそうしたものを優先するのが良い。
牛肉や鶏肉、魚、豆腐、卵、ナッツ類、種子類、アボカド、イチゴ類の果物、野菜、ワイン、ビールや蒸留酒はグリセミック指数の表にないのは何故か?
これらの食品は、炭水化物を全く含有しないか或いは余りにも少なすぎるので、スタンダードの方法ではグリセミック指数をテストできない。 グリセミック指数は炭水化物の質の尺度であって、量の尺度ではない。 本質的にこれらの飲食物は単独では血糖値にほとんど影響を与えない。
血糖値を正常に保ち、体重を減らすために、なぜAtkins食のような低炭水化物食を採用しないのか?
最近の研究ではAtkins 食のような低炭水化物食は、従来の低脂肪食よりも体重減少の速度が速い。 そのメカニズムは恐らく一日のインスリン値が低く、低グリセミック指数の食事が奏功しているメカニズムと同様に、カロリーとして脂肪を余分に消費するからであろう。 我々は、低炭水化物食においてパン、ジャガイモ、米、穀類や果物などが不必要に制限されて、炭水化物の代わりに飽和脂肪を長期間にわたって用いれば問題を生じる、と考えている。 低グリセミック指数食は低脂肪と低炭水化物の中庸に行き当たる。 あなたは炭水化物を摂って良いが、注意深く選ばねばならない。
テストを充分長期間行えば、曲線下面積は非常に高繰りセミック指数食でも低グリセミック指数食でも同じにならないだろうか? 食品中の炭水化物の量が同じだから、曲線下面積も結局は同じになるだろうと、多くの人は考えている。 しかし、体は腸からブドウ糖を血流に取り入れるだけでなく、血液からブドウ糖を取り出しているのだから、そうはならない。 突然の洪水よりも穏やかな雨が庭に良く利用されるのと同様である。 体はゆっくりと消化された食物を急速に消化した炭水化物よりもより良く代謝できる。 急速に放出された炭水化物はシステムを溢れさせ、体は血液から充分早くブドウ糖を取り出すことが出来ない。 丁度、豪雨の後では水位が急に上昇するように、血中のブドウ糖レベルも急上昇する。 同量の雨が長期間にわたって降れば、地面に吸い取られて水位は上昇しない。
グリセミック指数は食事量を倍にすれば増えるか? グリセミック指数は食事の炭水化物量が倍になっても同じである。 グリセミック指数は「同じ量」の炭水化物を含む食品の相対的なランキングであるからである。 しかし、もし倍量の食事を摂れば、血糖反応は高くなり、基準値に戻るまで余計に時間がかかる。
私は最近糖尿病に加えてグルテン性腸症(celiac disease 、gluten sensitivity)と診断された。 低グリセミック指数で、小麦の入らない食品を探す事は困難である。 何か良い智恵は? あなたが思っている程大変でないのでは? アジア系の食事・・・インディアン・ダール、米食とスターフライ、寿司、麺類などはグリセミック指数の低い食品である。 米で作ったバーミチェリ麺、或は小豆、低グリセミック指数の米などを選びましょう。 ジャガイモでなくサツマイモを、またグリセミック指数にこだわらずあらゆる種類の野菜を選びましょう。 果物とグリセミック指数の低い乳製品を選びましょう。 乳製品を摂れるならば、乳製品のグリセミック指数が低い利点を利用しましょう。 乳糖不耐性があれば、生菌ヨーグルトと果糖を加水分解した牛乳を摂りなさい。 アイスクリームでさえラクターゼ数滴を飲用してから食べることが出来る。
菜食主義者に低グリセミック食はふさわしいか? 菜食主義者はもともと多くの低グリセミック食を摂っているので容易である。 大豆、レンズ豆その他の豆類はすべてグリセミック指数がもっとも低いものである。 我々の本で述べてきた殆どすべての低グリセミック指数食は菜食主義食の一部として相応しいものである。 動物性食品は一般に高脂肪、高蛋白であり、殆どグリセミック指数はない。 菜食主義者は炭水化物を多く、蛋白質がやや少なく摂っているので、グリセミック指数に注意するために全粒穀物や豆類を追加していくことが必要である。
コーヒーは、砂糖やミルクを加えなければ炭水化物を含まないのでグリセミック指数表には載っていない。 またカロリーもないので、体重コントロールには影響がない。
追加:
グリセミック指数は炭水化物の多い食品にのみ適用される。 大抵の野菜は炭水化物が少なく,ジャガイモを除けば、一般にグリセミック指数が低い。 あなたはグリセミック指数を考えることなく野菜をたらふく食べ、抗酸化物質や微量栄養素を補給するのが良い。
グリセミック指数の表
補足: 日本糖尿病協会 河合勝幸氏の解説
以前は砂糖などの少糖類を吸収の「速い」糖質、複合糖質のデンプンなどを「遅い」糖質としていました。 しかし今では食物繊維が少ないデンプンはむしろ「速い」糖質と考えられています。その例がベークド・ポテトです。
ベークド・ポテトは指数95と蜂蜜並の数値です。指でつぶれるように柔らかく焼いたポテトのデンプンは、既にブドウ糖の小さな結合であるデキストリンに熱分解されていて、唾液の消化酵素に素早く分解されてしまいます。 胃の中に入っても15〜30分間は酵素作用が続くそうです。 健康な人にマッシュポテトを与えた実験では、食後わずか15分の間にデンプンの80%が麦芽糖に変わっていたのですから、まるで水飴を食べたようなものです。
砂糖(スクロース)が70となっていますが、1981年のカナダのジェンキンスの発表では59ともっと低い数値です。 砂糖はブドウ糖と果糖が結合したニ糖類なので、分解して吸収する時に果糖の影響が強くでるのです。 ブドウ糖は小腸上皮細胞において、能動輸送といって、エネルギーを使ってまでも積極的に吸収しますが、果糖は促通拡散輸送という、拡散による消極的な吸収となります。
吸収速度はブドウ糖を100とした場合に果糖は43とされます。 ですから全く同じ化学式で同カロリーのブドウ糖と比べると、グリセミック指数だけは100に対して20と特に低くなるのです。
更に果糖の甘味度は砂糖の1.5倍もあるので、同じ甘さなら使用量が6割強で済む利点もあります。その分だけ低カロリーになりますし、血糖にも悪さをしないので、欧米の健康食品店では肥満や糖尿病に向く甘味料として人気があります。