写真の説明
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
(銀塩写真 から転送,抜粋)
写真の原理
光に対してレンズやカメラ等の機器を用いて、屈折、遮断等の光学的な操作を行い特定の波長の光に感光する物質(感光材)に照射し、感光させる。
感光させた感光材に対して、必要ならば現像等の可視化や定着等の感光能力の消失等の操作、焼き付けや印刷等により明暗の反転や拡大を行うなどして、最終的な画像を得る。
得られた画像は再び光を当てて鑑賞する事が可能である。
銀塩写真の原理
ハロゲン化銀は光を与えると銀イオンが還元され、イオン化されない銀ができる。感光して銀になってもそのままでは画像にはならない。感光した部分にある銀はごく少量のため、適当な量まで銀を増やす必要がある。これは現像液で行う。また、感光しなかった部分はそれ以上感光しては困るため、不要な部分の銀分子は取り除く必要がある。これは定着処理で行う。
ハロゲン化銀は感光するとき、波長を吸収する領域は青色によっている。そこで、可視領域にわたって感光させるために感光色素を用いて本来の吸収波長以外にも反応が起こるように設定する。まず感光色素が光に反応し、色素の電子がハロゲン化銀へ移動することによってハロゲン化銀の直接の感光と同様の変化が成立する。可視的な電磁波の特定の波長領域にのみ感光するようにし、三原色に対応するように感光層を重ねるとカラーフィルムになる。
半導体撮像素子の原理
CCDの場合、半導体撮像素子に入射した光子がpn接合に入ると電子が発生する。量子効率は銀塩写真のハロゲン化銀の場合よりもはるかに高いため、高感度である。発生した電子を走査することでAD変換器へ送る。VHS等、アナログ式の場合は電荷量に応じて信号の強弱を記録媒体に記録する。(シャノン=ハートレーの定理)
ビジコン管の場合、光電面に入射した光子によって電位が変化し、走査することで電位の強弱を記録媒体に記録する。
相反則と相反則不軌
基本的に写真の感光量は光の量(単位時間あたりの光の量×光が当たった時間)によって決まる。これを相反則という。ただし、感光量は入射した光の量にどこまでも比例するのではない。未露光部はベースフィルム以上淡色にはならないし、感光するハロゲン化銀は限られているから一定以上の光を当ててもそれ以上濃くならない。従って、光の入射量と画像の濃さをグラフにするとシグモイド関数のようになる。変化の中間部は直線的であり、この部分の傾きのことをガンマという。
露光時間が極端に短かったり長かったりする場合には、相反則が成立しないことがある。これを相反則不軌という。カラーフィルムでは更なる別の問題をも生む。色毎に相反則不軌の状態が異なるため、カラーバランスが崩れるのである。
長時間露光においてはまた別の問題がある。現在利用可能なデジタルカメラでは画像に熱雑音と製作不良から発生するランダムノイズが乗る。一部のデジタルカメラでは長時間露出する際のノイズを軽減する機能が付いている。非常に長い時間露光する場合、ノイズが最終的な画像に影響しないようにディテクターを低温で動作させる必要がある。ただしフィルムの長時間露光では、粒状性は変化しない。
なお、冷却することで長時間露光時の相反則不軌を低減できることが、経験的に知られている[要出典]。相反則不軌は天体写真を撮る時などに大きな問題となる。1977年頃には長時間露光時の相反則不軌対策や分光感度を調整した天体撮影用のフィルムが市販されていたほどである。
[編集] 写真の撮影
35mm一眼レフ用交換レンズ(50mmF1.4)
カメラおよびカメラ・オブスクラは撮影機器である。写真フィルムまたは電子的記録カードが記録媒体であるが、ほかの方法が採られることもある。例えば、光学コピーや乾式コピー(ゼロコピー)は長期的に使用可能な画像を作るが、写真フィルムではなく静電気の移動を使っているので、電子複写(静電複写)という。マン・レイの刊行したレイヨグラフなどのフォトグラムは印画紙に投影された影でできた画像であり、カメラを用いない。スキャナのガラス面に直接撮影対象を置くことによって、電子複写を行うことも可能である。
撮影者は記録媒体を必要な量の光に露出する目的で、カメラとレンズを選択・操作できる(記録媒体として通常は、写真フィルムか固体撮像素子を使う)。
選択・操作の対象には以下のものなどがあると思われる。カメラの操作は互いに関係する。
* レンズの種類(単焦点、ズーム・バリフォーカル、一般撮影用、高倍率撮影用、ティルト/シフト、ソフトフォーカスなど)
* レンズの焦点距離(超広角、広角、標準、望遠、超望遠)
* 合焦点(フォーカスが合っている点)
* 絞り値
* シャッタースピード
* 感度
* フィルター、覆い・ディフューザー
* 記録画質など(デジタルカメラにおいて)
絞り
左側はf値が小さく、右側はf値が大きい。
フィルム面に到達する光の総量は露出時間、レンズの絞りによって変わる。この内どちらかを変えれば、露出が変わる。(物理的なシャッターがないカメラであっても)露光時間はシャッタースピードで表される。露光時間が1秒より短い場合は通常分子が1の分数で表記され、それはカメラのシャッタースピード設定ダイヤルに明記されている場合、秒の逆数で表示されている場合が多い。絞りはf値で表示されているが、これはレンズの明るさを表している。fは焦点比(focal
ratio)のfである。f値がルート2分の1倍になる毎に絞りの直径はルート2倍大きくなり、絞りの面積は2倍になる。典型的なMFレンズに刻まれたf
値は、2.8、4、5.6、8、11、16、22、32などであるが、これは数字が大きくなる毎に光の量が半分になっていくことを意味する。
特定の露出のシャッタースピードと絞り値は、さまざまな組み合わせが成立する。例えば、125分の1秒でF
8と500分の1秒でF 4では同じ量の光が得られる。当然ながら、どの組み合わせを選んだかは最終的な仕上がりに影響する。シャッタースピードの変化は対象とカメラの動き(ぶれなど)の反映の度合いを変える。絞りの変化は被写界深度を変える。
被写界深度は焦点の前後に広がるピントがあっているように見える範囲のことである。例えば大口径の長焦点レンズを絞りを開いて使用した場合、対象の目には鋭く焦点が合うとき、鼻の頭はピントが合って見えないということが起こる。反対に小口径の短焦点レンズを使用し、絞りこんで(絞り値を大きくして)遠距離に焦点を合わせて使えば、対象の目にも鼻にもピントが合って見える写真を撮影することは容易である。
大口径の長焦点レンズを使用し、絞りを開いて近距離に焦点を合わせれば、被写界深度は極端に浅くなる。反対に小口径の短焦点レンズを使用し、絞りこんで(絞り値を大きくして)遠距離に焦点を合わせれば、被写界深度は極端に深くなる。絞り値、焦点距離、焦点の位置が同じでも、レンズのF値(絞り開放時のF値)によって被写界深度は異なる。また、レンズのF値が同じでも設計・表記と実際との差などにより被写界深度は異なる。ピンホールのように、非常に小さい絞りを使うとごく広い範囲にピントを合わせることができる。これはパンフォーカスと呼ばれる。
写真の出力
材質にかかわらず、カメラが捕らえた像を最終的な写真作品にするには何らかの工程が必要である。この工程には現像と焼き付けなどがある。
焼きつけ工程では、いくつかの調整によって結果を変えることができる。こうした調整の多くはイメージキャプチャーなどで行われる調整に似ているが、引き伸ばし機を用いた焼きつけ工程に固有のものもある。大部分はデジタルによく似た調整であるが、大きく異なる効果をもたらすものもある。
調整には次のものなどがある。
* フィルム現像の内容
* 印画紙の種類(光沢の程度や質感など)
* 引き伸ばし機の方式や性能
* 露光時間
* レンズの絞り
* コントラスト
* 覆い焼き(焼きつけの一部だけ露出を減らす)
* 焼き込み(一部だけ露出を増やす)
モノクロフィルム・印画紙を参照のこと
100%コットンなどのバライタ印画紙、水彩紙を応用したプリンター用紙(デジタル用)などは独特の風合いがあり、黒や紙の白の発色、色合いはざまざまである。プリンターの高性能化に伴い、デジタルでのモノクロームプリントが多くなった。デジタル写真・デジタル化された写真においては、「カラー」から「モノクローム」への変換は容易である。実際には完全に無彩色の物体は存在しないので、「これまでの白黒写真は本当の白黒ではなかった」といった類の言明は適切性を欠く。
[編集] カラー(写真)
1910年に撮られた、プロクジン=ゴルスキーによるカラー写真。1910年代にロシア帝国各地で撮られたもののひとつ。写真はセリゲル湖の島にある、正教会の聖ニル修道院。
カラー写真は1800年代に開発が始まった。初期のカラー実験では像を定着させることができず、更に退色し易かった。初期の高耐光性のカラー写真は1861年に物理学者・ジェームズ・クラーク・マックスウェルによって撮影された。
カラー写真は、スライドプロジェクタで使うための陽画の透過フィルムとして像を撮ることもできるし、陽画の焼き付けを作るためのカラー陰画を作ることもできる。自動プリント機器の登場によって、現在では後者が最も大衆的なフィルムである。
初期のカラー写真は、それぞれ異なるカラーフィルターレンズを前面に持った3つのカメラを使うものであった。この技法は暗室や画像処理工程に3系統の処理設備を必要としたので、実用化までにはいかなかった。ロシア人写真家・プロクジン=ゴルスキーは別の技法を開発した。3枚のカラー乾板を連続して素早く撮影する技法である。当時は必要な色に対する適当な感度をもつ乳剤が知られておらずカラーフィルムを製造することができなかったため、この技法が用いられた。しかし1900年代に入ると、H.W.フォーゲルのような化学者たちの活躍により、ついに赤と緑に適当である感度を持つ乳剤が発売された。フランス人のリュミエール兄弟によって発明された最初のカラーフィルムであるオートクローム(Autochrome
Lumie`re)は1907年に市場に現れた。これは染料で染めたジャガイモでんぷんで作られた「スクリーン板」フィルターに基づいたもので、ドイツのアグフア・ゲバルトが1932年に類似のアグファカラー(Agfa
Color)を発売するまでは市場における唯一のカラーフィルムだった。1935年、アメリカのコダックが3色乳剤を採用した最初の近代的なカラーフィルム(integrated
tri-pack)であるコダクローム(Kodachrome)を発売し、1936年にはアグファのアグファカラーノイエが追従した。アグファカラーノイエのカラーカプラは、コダクロームのトライパック方式とは異なり、乳剤が層状になっており、フィルムの処理が大幅に簡略化されていた。コダクロームを除くほとんどの近代的カラーフィルムは、アグファカラーノイエの技術に基づいている。興味深い注釈として、コダクロームの開発者だったレオポルド・マンネスとレオポルド・ゴドウスキー・ジュニアはどちらも熟達した音楽家だった。また、ゴドウスキーはジョージ・ガーシュウィンの従兄弟であり、彼の父・レオポルド・ゴドフスキーは偉大なピアニストだった。インスタントカラーフィルムは1963年にポラロイドから発売された。
デジタル写真
デジタル写真は画像を電子データとして記録するためにCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサといった固体撮像素子を用いる。携帯電話などにもデジタルカメラ機能が付いているものがある(カメラ付き携帯電話を参照)。デジタル写真を写真と認めない人もいる。ただし、デジタルカメラで捉えた像は見ることもプリントすることもできる。この10年でデジタルの自動露出・自動焦点カメラは一般に広まり、フィルムカメラよりも売れている。動画撮影や録音など、フィルムカメラにはない機能を持っている機種もある他、レンズ交換式デジタルカメラの開発・普及も進んでいる。中には中判カメラ(ブローニー)に相当するレンズ交換式デジタルカメラもある。
写真処理施設からの遠隔地で仕事をする新聞記者などのカメラマンにとって、テレビジョンとの競争が激化するにつれ、新聞に載せる画像を短い時間で送付しなければならなくなった。このために、遠隔地で仕事をする新聞記者達は、一時期は小型の写真現像セットと電話線で画像を送るための道具を持ち歩くのが当たり前で、大きな負担となった。1981年、ソニーが画像撮影にCCDを使い、フィルムを用いない最初のコンシューマ用カメラ「マビカ」を発表した。マビカは画像をディスクに保存し画像自体はテレビに表示するものであった。次いで1990年にコダックが初の市販デジタルカメラDCS100を発表した。その価格は業務用でもなければ手が出ないものであった。商業的なデジタル写真がこのとき生まれたのである。
[編集] 写真の性質(フィルム写真とデジタル写真)
写真の性質はフィルムとデジタルで異なるが、共通した観点が存在する。以下、観点を幾つかの性質に分けて紹介する。フィルムとデジタル、2つのフォーマットのどちらが優れているかという議論がある。しかし、全ての観点において一方がもう一方よりも優れているとは言えない。それ故、どちらのフォーマットもそれぞれ良さがあると言うべきだろう。
[編集] 再現性
ここでの再現性は画質とほぼ同義であると考えていただきたい。写真の画質に関しては解像度とコントラスト(と色再現性)が格子と考えられる。写真の写りを判断する基準は多数あるが、分解能を挙げる。取りあえず、分解能は写真の像を成立させる構成要素の原因と考えてよいだろう。これについて、その写真が何個の画像セル(ピクセル)で構築されるかで計ろうとする試みがある。
フィルム写真とデジタル写真を比較するとき、フィルムを撮像素子の画素数に換算するとどの程度かと考えがちだが、何よりも先ず両者はあまりに異なる。最終的なプリントを鑑賞する場合、近接時の鑑賞に耐え得るのはフィルム写真ではないだろうか。「大伸ばしのプリントは近寄って眺めるものでない」と言う人もいるが、たとえば絵画を鑑賞する場合を考えると、古典絵画などは特に大型のものでも近接時の精細感のある描画に驚く場合もある。少なくとも、作品が大型であることが直接に、鑑賞において接近してはいけないことを意味することはない。フィルムとデジタルで分解能を比較をするのは容易でない。分解能の測定はさまざまな条件に依存する。フィルムの場合、フィルムの寸法・サイズ、粒状性などのフィルムの性能、用いたレンズの性能に依存する。フィルムにはピクセルが存在しないから、フィルムにピクセルが存在するものとして計測した分解能は目安に過ぎない。デジタルカメラではセンサー画像の補間に用いる画像処理アルゴリズム、センサフィルタのベイヤーパターン(Bayer
pattern)の効果、記録画質などが関係する。加えて、デジタルカメラの撮像素子や表示装置の画素の配列は、規則正しい繰り返しパターンを持つため、モアレを生じる場合があるが、フィルムの感光粒子は不規則に並んでいるためこのような現象は起こらない。
35mmフィルムカメラで撮影した写真の解像度評価はまちまちである。例えば、10メガピクセルという評価がある[1]。より粒子の細かいフィルムを使うとこの数字は上がるし、低級の光学系の使用や劣悪な照明がこの数字を下げることもあり得る。この評価は2007年の最新鋭デジタルカメラは35mmフィルムカメラよりも優れているという評価を含意している。ただし、35mmフィルムは一般消費者向けのフォーマットである。プロ向けフィルムカメラとして中判カメラ、大判カメラがある。これらに先の数値を単純にあてがうと、2007年現在の最新鋭デジタルカメラより優れた分解能を持つことになる。具体的には、645のフィルム写真は約36メガピクセル、4×5インチは約130メガピクセルである。8×10インチは約540メガピクセルになる。しかし、20メガピクセルや7メガピクセルという評価もある[2]。単純に言えば、フィルムの解像度はフィルムの感度によって変わる。
高性能レンズを用い理想的な露出で撮影した現代の超微粒子白黒フィルムの分解能は、30メガピクセル以上のファイルサイズにおいて適当な細かさが得られる。一般消費者向け35mmカラーフィルムでは12メガピクセル以上に、安価な35mmフィルムカメラ(コンパクトカメラ)でも8メガピクセル以上に価し得る。
画像の表示に用いる媒体も考慮に入れる必要がある。例えば、せいぜい2メガピクセル程度のものが主潮流であるテレビやコンピュータのディスプレイで写真を表示するのみであれば、ローエンドのデジタルカメラで出せる解像度でさえ十分と言える。4×6インチのプリントに出力する場合に限っても、デジタルとフィルムの間に知覚できる差はある。出力媒体が大きな広告版なのであれば、高い解像度をもった媒体か大きな判が必要になるだろう。
[編集] 融通性
現在ではまだ、融通性に関してはフィルムがデジタルに勝ると言える。露出寛容度とゴミ・埃に対しての比較を挙げる。
露出寛容度は、露出過多または露出不足のネガから良い画像を得る度合いのことである。デジタル画像ではわずかでも露出過多になると、ハイライトが飛んでしまう。露出不足では陰影の細部が失われがちである。しかし、フィルム、特にネガフィルムであれば、少々露出過多ないし露出不足のフィルムを使っても、正常の範囲内と言える画像が得られる。
結像面に乗った塵は、撮影者につきまとう問題である。デジタルカメラのセンサーは固定であり、デジタル一眼レフでは塵を除くのが困難である。ただし、一部のデジタルカメラにはイメージセンサーの塵を検知しセンサー上のゴミ・埃をある程度無視する機構が付いている。フィルムカメラでは画像ごとにフィルムを交換するので、塵に対処するのは容易である。その代わり、フィルムの現像工程以降でゴミ・埃が混入する危険が存在するが、いずれも正しい手順で清潔に扱えばほとんど問題は起きない。
[編集] 利便性
利便性はデジタルカメラが普及した要因の一つである。フィルムカメラでは一連のフィルムを撮影した上で現像しなければならない。そして現像を終えて初めて写真を見ることができる。他方、ほとんどのデジタルカメラは液晶ディスプレイを備えており、撮った直後に写真を見ることができる。この機能を用いれば、不要な写真の削除が可能である。
デジタルカメラの画像はパソコンで加工することが容易である。多くのデジタルカメラは画像を、センサーからの出力を画像に変換せずそのまま保存するRAWフォーマットで保存することができる。適当なソフトウェアと組み合わせれば、最終的な画像に「現像」する前に、撮った写真のパラメータ(シャープネスなど)を調整することができる。洗練されたユーザー(使用者)には、記録された画像自体を加工したり書き換えるという選択肢も存在する。
フィルムもスキャニングという工程を経てデジタル化できる。つまり、銀塩写真をデジタル写真に加工することができる。
[編集] 経済性
2つのフォーマットにおける経済的優越性は撮影のスタイルによって大きく変化するので、一概にどちらがより経済的だとは言えない。デジタルカメラは概して、似たカテゴリーのフィルムカメラより高価である。これは、撮影自体と画像の短期的な保存にほとんど全くコストが掛からないという事態で相殺され得る。だが、デジタル写真にもランニングコストはある。長期的に多数の画像を保存するなら、記録メディアなどに関する費用は甚大である。デジタルカメラにフィルムは不要だが、画像を記録するSDメモリーカードやメモリースティックなどを必要とする。それらは限られた寿命しかない。そして、デジタル画像を保存する機具を用意しなければならない。プリントが欲しいなら、自分で印刷するか業者に依頼しなければならない。さらに、デジタルカメラはバッテリーを使う。バッテリーは使うごとに劣化するものであり、充電式であっても、定期的に買い替えるものである。
他方、フィルム写真ではフィルムの取得と画像処理(プリントなど)にコストが掛かり続ける。フィルムは撮影直後に画像を見ることができないので、最終的な写真を知ることなく撮影した全てのフィルムを現像処理するのが通例である。写真の出来に応じて現像するか否かを、コマごとに決めることはできない。機材の価格については、製造撤退や機種の生産整理などが進めば、デジタルカメラより相対的に高価になる可能性はあるが、中古市場での流通量も多く、一概には言えない。また、多くのフィルムカメラもバッテリーを使い、程度の差はあれデジタル同様の消耗品出費は避けられない。
[編集] 保存性
フィルムが作るのは一次画像であり、これは撮影レンズを通った情報こそを含んでいる。オルソクロマチックのように特定の周波数領域に限られた感度またはパンクロマチックの幅広い感度といった違いはあっても、色(波長)によって対象を捉える点は同様である。現像方法の違いにより最終的なネガやポジに差は出るが、現像が終れば画像はほとんど変化しない。理想的な状態で処理・保存されたフィルムは実質的に100年以上変わらず性能を発揮する。プラチナの化合物によって発色するプリントは基本的にベースの寿命に制限されるのみであり、数百年ほどは持つ。高い保存性を欲するならば調色が必須であるという因襲があった。調色されたプリントの保存性は高い。しかし現在では、調色せずとも保存性を高める薬品が販売されている。
2007年時点で、コンピュータを中心としたデジタル媒体が登場してから50年程しか経っていないので、デジタル写真の保存性はフィルムほどには分かっていない。しかし、保存に関して乗り越えなければならない観点が少なくとも3つ存在する。記録媒体の物理的耐久性、記録媒体の将来的な可読性、保存に使ったファイルフォーマットの将来的な可読性である。
多くのデジタル媒体は長期的にデータを保管する能力はない。例えば、磁気ディスクと磁気テープは20年でデータを失う。フラッシュメモリーカードはそれよりやや短い。高品位の光学メディア(光磁気ディスク
= MOなど)はそれらより耐久性のある記録媒体だろう。記録媒体の将来の可読性も重要である。記録媒体が長期間データを保持できたとしても、デジタル技術のライフスパンは短いので、メディアを読み取るドライブがなくなることがある。
例えば5.25インチフロッピーディスク(FD)は1976年に初めて発売されたものであるが、それを読めるドライブは、30年も経たない1990年代後半には既に珍品となっている。後継の3.5インチFDもドライブを装備するパソコンは減少している。Zipは1994年の発売開始後数年で売れ行きが落ち、2007年時点ではメディア・ドライブとも入手困難になっている。
データをデコードできるソフトウェアの存続も関係する。例えば現代のデジタルカメラは画像をJPEGフォーマットで保存するが、このフォーマットは十数年前に登場した(国際標準化機構(ISO)・国際電気標準会議(IEC)で規格化されたのが1994年)。現在、厖大な数のJPEG画像が生み出されているが、100年後もJPEGフォーマットを読むことができるのだろうか。また、複数が並立しいわゆる互換性に乏しい、RAWフォーマットの将来も不確定である。これらのフォーマットの一部は暗号化されたデータまたは特許で保護された専用データが含まれているが、突然メーカーがフォーマットを放棄する可能性がある。カメラメーカーがRAWフォーマットの情報を開示しないならば、この状況は今後も続く。
デジタルにおけるこれらの障害にも対策がある。例えば、オープンでよく知られたファイルフォーマットを選ぶことによって、ソフトウェアがそのファイルを読解できる将来の可能性が増す。また、将来読めなくなるかサポートされなくなる可能性があるフォーマットでデータを保存する代わりに、品質を低下させることなく新しいメディアにコピーすることが可能である。このことは、デジタルメディアの1つの特徴である。但し、劣化を追って愉しむ文化も、存在する。歴史的写真は、時間の経過による変化をあらわす適度の劣化がなければ、その分不自然であるとも言える。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
(銀塩写真 から転送)