ナツメグ
-NUTMEG-
★第一回人気投票 最優秀妄想作品賞受賞作品★
| 以前、ここの破壊工学というコンテンツで「ナツメグでオレを壊す」というコーナーを見かけたことがある。 ナツメグ、その文字に惹かれて俺はマッシュルームを掘る豚の如く読むことに没頭した。 読んでチビった。どうやらナツメグとは有害な物質を含んでいたらしい。 小学生の頃、俺は今よりもっと頭が悪かった。そんな時、祖母に薦められたのがナツメグである。 「考え事をする時はナツメグを食べれば良い案が浮かぶものだ」 そう言われて素直に毎日数十個という数のナツメグを食い散らかしていた。 これで頭が良くなるだろう。そう信じて疑わなかった。 それからしばらくして、俺も人並みに中学という場所に行くことになった。 するとどうだろうか、テストの点は常にトップクラス。当たり前のように解ける数式。 そして他人とは明らかに違う発想。まさに輝いていた。人は俺を「煌き戦士」と呼ぶようになる。 おお、これはまさしく祖母の言いつけを守りナツメグを食べていたおかげだ! そう感じた俺はより一層ナツメグというドラッグの魔力に引き付けられていった。 そんな夏のある日曜日、俺はナツメグを一袋食べ終わり、昼寝をしようとしていた。 すると突然ひどい頭痛に襲われ、みるみる意識が遠のいていったのだった。 目を覚ましたのが20時間後、ほぼ一日眠っていたことになる。しかも場所は中央病院のベッドの上。 周りを見ると親族が勢揃いして俺を覗き込んでいる。何事であろうか? 母が最初に口を開き、俺に言葉を投げかけた。 「いい?もう一度答えてごらん。今は大阪は朝ですか?夜ですか?」 いったい何だ?意味が全然わからない。なぜこんなことを聞くのだろう。 何度も何度も聞かれるので、俺は「朝」と答えた。当然の如く。 でも外は夜である。なぜ朝と答えたのか? そう、俺は静岡と大阪に大きな時差が存在すると思っていたのだ。 いや、正確に言えば”何かにそう思わされた”のだ。 俺だってそれくらいの常識は知っていた。だけどどうしても静岡が夜なら大阪は朝だとインプットされている。 後から母に聞いた話によると、俺は寝ていたはずの20時間、ずっと目を閉じたまま誰かと話をしていたらしい。しかも俺は”ナツメグ”を相手に話していたそうなのである。 誰が何を尋ねても、俺は「今ナツメグと話してるから邪魔しないで」と言っていたらしい。 当然そんな記憶は俺には無い。そしてそのナツメグに「日本の西と東では12時間の時差がある」 と教えられたと言っていたらしい。これはナツメグの魔力なのか、それとも幻覚なのか? どちらにせよ、その現象にナツメグが何らかの関わり合いを持っていた可能性は否定出来ない。 だから人体に毒だと言われていてもおかしくは無い。破壊工学を読むまでは全然気付かなかったことである。 まぁ、ナツメグを食べて壊れると言うなら俺は8歳の時から既に10年以上も壊れているということになるのだろう。 確かに思い起こせば俺の幼少時代には謎の行動が多かった。授業中に突然 「乞食パンを作らなきゃ!」 と切羽詰まった様子で叫び、調理室に駆け込んで一人呆然としたこともあるし、深夜、電気も付けないで何も見えないはずの部屋で”ストップ乳がん”のポスターを無意識のうちに描き上げたこともあった。 ナツメグ、ヤバイッスよ。ところで今も売ってるんでしょうかね? 全然反省してないで、今もなお食べてみたいという衝動に駆られるんですが。 |