初夏の思ひ出
-REMINISCENCE OF EARLY SUMMER-

てとぅやこむろ(掲載No.43)


 あれは3週間ぐらい前のことだろうか?

 私は予備校に行くためチャリキでほっそい裏路地を春のそよ風のように走っていた。前方には三叉路がある。すると突然怪しげな影が私の高貴な視野に入ってきた。

 よく見ると新聞配達の人だった。彼もチャリキでかごには山のような新聞。しかも、彼は坂道を降りてきた所でスピードもある程度出ていた。そんな彼に、曲がり角など曲がれるはずもあるまいて。

 案の定、彼は僕にぶっついた。ちょうどハンドル同士がかすった。僕はちょっとよろけたが、元オリンピック選手でもある僕がこけるなどという人間として低級な行為に及ぶはずもあるまい。一方彼はというと、

 こけちた(筆者注:膝小僧から血が出ていたので「こけてた」でなくあえて)

 しかもかごにあるべきはずの新聞紙も吹っ飛んでいた。僕はかわいそうと思い、彼に白いハンケチを渡しこう言った(ひげをつけて)。

「全部もらおうか」

 彼はマッチ売りの少女のように口元をほころばせながら一つだけ頭を下げた。僕は新聞紙を全部拾い、予備校に向かった。振り返って彼の方を見ると、僕が見えなくなるまで頭を何度も何度も下げていた。

 さて、100部ぐらいある新聞をどうしようかと僕は思案に暮れた。

 少し行くと乞食みたいな人が現れた。彼は人差し指をくわえて何やらこの新聞を欲しいようだった。僕は何も言わず彼にあげた。すると、どこに隠れていたのか、道を覆うほどの乞食が出てきた。そして彼らは新聞を奪い合ってた。

 僕は見るに見かねて、たたいた。

 そして全部僕に返させた。そして一列にならばせ、1部ずつ配った。

 「みんな仲良く」

 と子供に教えるようにゆっくり言って、予備校へ行きました。

感動の投書

うそちゅき