ンジャメナ発モザンビーク行切符
-THE TICKET TO RIDE FROM N'DJAMENA TO MOZAMBIQUE-

ロベルト・メダッジョ(掲載No.46)


目にうっすらと笑みをたたえながら白い粉末を鍋に入れる男を見たのはつい最近のことだ。

「どうしたの?」僕が尋ねる。
「アーモンド臭がたりなくって」男は答える。
彼が鍋にいれたのはアーモンドエッセンスの粉末だった。彼は知ってか知らずか、ジャガイモの芽を無心についばんでいた。
僕はピンときた。「おめー死ぬ気だろ」
「ああそうさ、オレは死ぬ気さ。オレを止めるならオレが死んでからにしろよ。」
両手を大きく拡げて胸を突き出しながら答えた。
「死ねねぇよ、ジャガイモの芽じゃ。」僕はそう言いながら砒素の粉末を彼に与えた。
「一昔前、若い女性の間では砒素の服用がはやっていたのさ。病弱な女は美しかったんだよ。そして時がくれば静かに、眠るように息絶えるのさ。砒素を服用すれば顔色はぐんぐん青くなり、透き通るような白さが手に入る。乗るかい?」
「ありがとう。」一言だけ言って彼はそれを鍋に放り込んだ。
「フン、素直になれよ。まったくそんなでかい鍋で喰うなんてどうかしてるぜ。」
「でかいのはオヤジゆずりさ。」
「よくいうぜ。アーモンド臭が足りない、って言ったよな。これ使えよ。」
僕はペンダントから大きめのカプセルを取り出し、彼に渡した。
「青林檎ソーダか、どうかしてるぜ。おたくイカれてんのか?」
「いや、パパに会いたいだけさ。」
「なら言うことはないな。」
「ああ、僕はもういくぜ。達者で。」

日は暮れかけていた。
「オレは死なない。お前の影を忘れるまではな。」
彼はそう叫ぶと鍋に青林檎ソーダのもとを振りかけ、片栗粉、各種スパイス、タマネギ、豚の小間切れ、ジャガイモ、ニンジンを入れ、コトコト煮立て帰路についた。

「デーデー、ポッポー」
鳩がバササ、と飛び去った。

訊きたいことは山ほどある

そっとしておこう