食前のデザート
-DESSERT BEFORE A MEAL-

めだむし(掲載No.55)


 この間、初めて無脳症という言葉を耳にした。
 生まれつき大脳がないらしい。詳しいことはよくわからんが。
 それを知ったのは3日前、コンコルドがオレんちの庭に着陸したかと思ったら、黒いマントの男がある手術に立ち会って欲しいと切り出したのだ。
 アメリカの某大学病院で無脳症児からの臓器摘出を行うのだという。
 執刀医(オレを迎えに来た男)はジャックとか呼ばれていた。
 そんなことはどうでもいい。話の本筋に戻るとしよう。
 オペ室に入るとすぐさまジャックが作業を開始し、瞬く間に首から上を摘出してしまった。オレは患者の首周りを止血及びクエンチ(急冷)しながら思った。
 脳がなければ何してもいいのか?
 当然患者は死んだが、やるせない気持ちでいっぱいだった。
 冷えゆく首のない体に人間とは何か、という遠大な問いを投げかけられた。
 確かにこいつには脳がない。しかし頭が半分へこんでいること以外は普通の人間とかわらないじゃないか。
 ジャックはオレを感傷に浸らせる間もなく言った。
 「そいつをこっちに持って来るんだ」
 オレはあわててオペ台を隣の部屋に移した。
 すると、培養槽のようなもののなかに脳が浮かんでいた。
 人工骨および人工皮膚のようなものもそれぞれ用意されていた。
 ジャックは恐ろしい程の手際でそれぞれをつなぎ合わせてしまった。
 究極の臓器移植だ。
 オレはひどく混乱していた。

 ジャックは何故オレを立ち会わせたのか、人間とは、人格とは、生とは、、、、
 何一つわからないまま、中国でサルの脳味噌のデザートを食べてから家に帰った。

訊きたいこと

ごちそうさま