| カメラのはなし |
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図 1 |
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図 2 |
話を簡単にするために白黒ネガフィルムで考えよう。 フィルムに適当な強さの光を当てて、これを現像すると、光が当たった部分が黒くなる。その時の黒さ(濃度)は、フィルムに照射された光の強さと光が当てられていた時間(露光時間)のそれぞれに比例する(単純な線形比例というわけではないが)。すなわち、光の強さが一定なら露光時間が増すほど濃度が増し、露光時間が一定の場合は、光の強さが増 すほど濃度が増す。したがって、ある光の強さとある照射時間で一定の濃度になった場合、その光の強さを半分にし、露光時間を2倍にした場合、濃度は元のものと等しくなる。これを写真フィルムの「相反則」という。また、「光の強さ×露光時間」を「露光量」という (図1)。
写真の適正露出とは、フィルム上に映った画像のもっとも明るい点と、もっとも暗い点の露光量が、フィルムが作ることのできる最大濃度および最小濃度に対応する 露光量の間に入るように、光の強さや露光時間を調節することである。これは真夏の海辺のシーンであろうが、夜間の室内のシーンであろうが、同じである。同じフィルム を使うなら、シーンの明るさがどうであれ、その像の露光量が同じになるように調整しなければならない。
フィルムには感度というものがある。フィルムの感度とは、フィルムが一定の濃度になるために必要な露光量で決められている。 ちなみに英語ではフィルム感度のことを「film speed(フィルム・スピード)」という。これは一定の光の強さを与えた場合、フィルムの濃度が増す速さを表している。濃度が増すのが速いほど(すなわち少ない露光量で黒くなれるほど)、感度の数値が増える。
フィルムの感度は ISO 100 とか ISO 200 とかで表されている。感度の数値が 2 倍になると必要な露光量は半分になる。すなわち、ISO 100 のフィルムでシャッタースピード 1/125秒、絞り f/8 で適正な濃度になる仕上がる場合、ISO 200 のフィルムなら、1/250秒、f/8 と半分の露光量で、ISO 400 のフィルムなら、1/500秒、f/8 と 1/4 の露光量で、同じ濃度になる。したがって、感度の高いフィルムは、暗い所での撮影のみでなく、動きの速い被写体をブレさずに撮影するため、速いシャッタースピードを使いたいときなどにも使用する。
ここでファインダーに映っている景色、すなわち被写体とその背景を含めて「シーン」ということにする。カメラが撮影するシーンは、光源からの光を反射してある明るさ(輝度)を保っている。シーンの各部の反射率は高々0〜100% であるから、シーンへの照度が分かればシーンの輝度分布も決まる。カメラのレンズはこのシーンをフィルム上に像として映すため、像の各点の明るさは、対応するシーンの各点の輝度に比例したものとなる。
フィルムの感度が決まると、そのフィルムで扱える露光量の範囲が決まる。したがって、撮影しようとしているシーンへの照度、あるいはシーンの輝度が与えられると、これを絞りとシャッタースピードで調整して適正な 範囲の露光量になるように調整しなければならない。このとき、写真フィルムには、相反則があって、たとえば 1/125秒、f/8 と 1/250秒、f/5.6 は同じ露光量となる。フィルムの相反則はかなり広い範囲で成立するが、シャッタースピードが数秒以上に長くなったり、1/1000 より短くなったりすると成り立たなくなる。これを「相反則不軌」という。
写真フィルムの箱には、「露光ガイド」と称して、たとえば図 2のような表が掲げられている。これは自動露出や露出計が使えないカメラで写真を撮るときの、露出の目安を示しており、春または秋の季節の、日の出 3 時間後から日の入り 3 時間前に適用できるとされている。図 2は ISO200 の感度のフィルムの例であるが、シャッタースピードを 1/250 秒とすると、絞りの値は、快晴のときは f/16、晴なら f/11、明るい曇りなら f/8、曇り/日陰では f/5.6 と書かれている。表の「快晴」、「晴」、「明るい曇り」などは景色が天光によって照らされている明るさ(すなわち、シーンへの照度)を示 している。
ちなみに、露光ガイドは、フィルムの感度が異なっても、シャッタースピードを変えればそのまま使える。たとえば ISO 100 の場合は図 2の半分の 1/125 秒とし、 ISO 400 の場合は倍の 1/500 秒とするという具合だ。
上述の露光ガイドのもとになっているのは、「サニー 16 ルール 」あるいは「f/16ルール」とよばれているものである。「サニー」とは「Sunny:日がよくあたっている(快晴)」のことで、このルールは快晴ならシャッタースピードを ISO 感度に合わせ(ISO100 なら 1/125秒、ISO200 なら 1/250秒)とし、絞りを f/16 にすればよいというものだ。
季節や時刻に左右されるものの、条件が同じなら、太陽の明るさはかなり一定しており、これに雲の状況を加味すれば適正露出を決められる。露出ガイドの「快晴」、「晴れ」、「明るい曇り」、「曇り・日陰」の判断基準は影である。縁まではっきりし た影が出ていれば「快晴」、曇りとはいえないが縁がはっきりしない影になれば「晴れ」、雲が多くなり、影がかすかに出ている程度ならば「明るい曇り」、影が見えない状態ならば「曇り」と判定し、この順番で絞りを1段ずつ開けていけばよい。
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表1 |
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図 3 |
露出計などによく「EV 値」という数値が使われている。これは Exposure Value (露出値)を略した用語である。現在一般的に使われている EV 値とは、表1のシャッタースピードと絞りの組み合わせを示すものである。表の黄色の各欄に書き込まれている値が EV 値である。端的にいえば、シャッタースピード 1 秒と f/1.0 の組み合わせを EV = 0 として、絞りを 1 段絞るか、シャッタースピードを 1 段速めると、EV 値が「1」増え、しかも、同じ露光量が得られるシャッタースピードと絞りの組み合わせが同じ EV 値 になるように工夫されている。
また EV 値は、被写体の照度、輝度を表すこともできるのだが、最近ではこの概念が一般的でなくなったため、照度や輝度を表す EV 値を使用する場合、ISO感度を 100 とした場合の EV 値などという表現を用いている。
露出計はシーンへの照度、あるいはシーンの輝度を計って露出を決めるものであり、前者を「入射式露出計」、後者を「反射式露出計」という。「カメラの自動露出装置」は反射式露出計と同類である。
もともと、カメラが記録するのは、シーンから反射された光である。シーンの中でもっとも明るい点と最も暗い点の輝度が分かれば、それぞれがフィルムの最大露光量、あるいは最小露光量 の間に収まるように露出を決めた方が適正な露光が得られる。これはシーンの特定の部分の輝度を測れるスポット型反射式露出計を使えば可能であるが、露出決定にかなり手間がかかることになる。
したがって、通常の反射式露出計ではほぼ標準レンズの画角と同等の範囲の、あるいはこれと同類のカメラの自動露出装置ではファインダーに映っているシーンの、平均的明るさを測り、シーンの平均的反射率を 18% と仮定して、フィルム上でも像の平均濃度が反射率 18% の濃度(灰色)に仕上がるように露光量を決めている。 平均的反射率を 18% というのは、さまざまなシーンの反射率を実際に計ってみた結果、平均がこの程度であったために経験的に決められたものだ。この反射率を「標準反射率」といっている。反射式露出計では、この仮定のために、画面全体が白でも黒でも、灰色に仕上がるように露光される。これが、画面全体の反射率が偏ると露出が不適切になってしまう理由だ。
このような場合は、市販されている反射率 18% の「標準反射板(グレーカード)」を被写体の位置に置いて、その露出を計って適正露出を判断することが可能である。しかし、わざわざグレーカードを準備する必要もない。フィルムメーカーのコダックのマニュアルでは、手のひらで露出を測り、それより1絞り開けるか、シャッタースピードを1段遅くした露出を選べばよいといっている。 一般的な人の肌は、かなり標準反射率に近いのだが、肌の色が異なる場合もある。それでも、手のひらの色はそれほど違わないということだろう。しかし、手のひらは反射率が少し大きいので、実際の撮影には1絞り分の補正が必要ということだ。また、シーンの背景の反射率が偏っていても、被写体が中庸な反射率の場合は、被写体に露出計を近づけて露出を測るようにしてもよい。
反射式露出計は、図 3のように、カメラレンズの近くから、シーンの注目すべき部分に向けて使用する。したがって、わざわざ被写体に近づかなくとも、あるいは被写体に近づけないときでも、使用できるのが反射式露出計の利点である。
入射式露出計は、照明光の照度から露出を決定するものだ。その結果、写真にはシーンの各部の反射率にしたがった明るさが記録されることになる。このため、反射式より正確だといわれている。しかし、無闇と信頼するのも問題がある。たとえば木陰で憩う人物を、直射日光を受けている背景も含めて撮影する場合などには、木陰と直射日光の両方の照度の中間で露出しないと、背景が白くとんでしまうなど、照明にむらがある場合等には注意が必要になる。
入射式露出計には受光部が平板状のものと、半球状のものがある。平板型受光部は、複数の光源を使用した照明の場合に、被写体の位置から各光源に向けて、照明光の 強さの比率を測ったりする用途に使用する。また被写体自身が平板状のものの場合には、そのまま露出計として使用してもよい。これに対し、被写体が3次元的な一般の場合は、半球(光球ともいう)型の入射式露出計を使用した方がよい。
入射式露出計は図 3のように、被写体の注目すべき部分の近くに置き、受光部をカメラのレンズに向けて使用する。したがって、被写体に近づけないような状況では入射式露出計が使えない。また被写体自身に発光するものが含まれている場合も使用できない。
カメラの自動露出装置で露出を決める場合 は、上記の反射式露出計とまったく同じ注意が必要となる。また、自動露出機構で平均測光、部分測光、スポット測光などが選べるようになっている場合は、上記で説明した特徴を参考に、シーンの性質に合わせて選択していただきたい。露出をカメラの自動露光装置に頼っていいかどうかが迷われるような状況については、実例とともにその対策を『光と影の協演』 に示してある。
また、同じ EV 値のシャッタースピードと絞りの組み合わせから、どれを選ぶかは、
@動きの速い被写体で、ブレさずに撮影したい(速いシャッタースピード)か、わざとブラす(遅いシャッタースピード)か?
A目標の被写体だけにピントを合わせ、他をぼかしたい(絞りを開く)か、広い範囲にピントを合わせたい(絞りを絞る)か?
などを考慮して、決めることになる。
また露出計では、細かい数値まで読めるにしても、カメラで設定できるシャッタースピードや絞りの最小の調整量には限度がある。昔はシャッタースピードは 1/60 秒から 1/125 秒など 1EV 単位、絞りでは f/5.6 から「半絞り」 開く、絞るなど 1/2EV 単位だった。しかし、デジタル全盛の現在は、シャッタースピード、絞りとも 1/3EV 単位が珍しくなくなった。 これ以上細かい調整はできないわけだが、実際には、1/3EV 以下の露光調整の写真的効果は小さいといえる。ちなみに、1EV の相違とは露光量で 2 倍または 1/2 の相違であり、1/2EV の相違は 1.41 倍あるいは 1/1.41=0.71 倍の相違、1/3EV の相違は 1.26 倍 あるいは 0.79 倍の相違である。これは、通常の感覚でいうと、意外と大きな相違に思えるが、実際に仕上がった写真を見た場合、大きな違いには見えない。これは視覚の反応が対数的なためである。
写真を撮影する場合、露出計やカメラの自動露出装置に任せきりでもよいのは、開けた風景のときだけといってよい。開けたとは、周りに何も閉じ込められていると感じるようなものがないという状況だ。周りを 木で囲われた公園などは、すでに開けた風景とはいえなくなる。このような場所で、空の青さから、木陰の暗さまで忠実に写真にするには無理が生じてくる。対象が人程度の大きさであれば、レフ板などで暗い部分に光を補って全てをフィルムに納められるのだが、広大な風景ではなすすべもなくなる。そんなときは、自分が訴えたい点が明るい部分(ハイライト)にあるのか、暗い部分(シャドウ)にあるのかで、反対側を切り捨てる決断が必要になる。
またシーンの中に発光体が含まれるような場合も、露出決定が困難なシーンになる。発光体を除けば、平均的な露出ですむ場合も、発光体がシーンの平均的明るさをどれだけ超えるものであるかが問題になる。明るすぎる発光体であれば、平均に露出を合わせれば、発光体がカラフルであっても単に明るい(白い)点としてしか写らなくなるだろう。こういうシーンで試みることができるのは、発光していない部分に 、必要最低限の照明を与えることだろう。
逆光のシーンも、露出決定が困難なシーンである。「逆光」という言葉は、背景に発光体が含まれこともあるということまで意味する。こうなると上と同じように考えるべき問題であるが、背景の明るさ が極端でなければ、主たる被写体だけで露出を測って撮影してみる手も残っている。
さらに、すでに述べたように、反射式露出計あるいはカメラの自動露出装置を使用する場合には、シーン全体の明るさが白や黒に偏った場合は、露出補正が必要になる。しかし、 実際のレンズを通してみた、被写体の像の明るさを測る、カメラの自動露出装置以外の場合に、露出補正が必要になる もう一つの場合がある。それは接写の場合である。
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グラフ |
カメラレンズが結ぶ像の明るさは、『カメラ とレンズ』で述べたように、レンズの口径とレンズから像までの距離で変化する。しかし、レンズから被写体までの距離が、焦点距離の 10 倍以上の場合(焦点距離 50mm の標準レンズで50cm以上の場合等)は、これがほとんど目立た ない。このために、カメラレンズの明るさを表す F 値を、実際のレンズから像までの距離でなく、焦点距離を使って表すことができるのだ。
しかし、これが接写で、レンズから被写体までの距離が、焦点距離の 10 倍以内に近づくようになると、レンズから像までの距離が長くなり、この距離による像の明るさの変化が無視できなくなる。したがって、このような場合 には、カメラのレンズを通して露出を測る自動露出装置以外では、露出補正が必要になる。
もし、使用するレンズがマクロレンズであれば、多くのマクロレンズでは像倍率(被写体の像の大きさと実際の被写体の大きさの比率)の目盛りがあるので、グラフから補正すべき EV 値が求められる。横軸は像倍率 m で、たとえば像倍率 が 1 の撮影をする場合(等倍撮影)、補正すべき EV 値は「2」になることを示している。縦軸の EV 値は負の値として示してあるので、これはシャッタースピードを 2 段遅くするか、絞りを 2 段開かなければならないことを示している。
またグラフの縦軸の太線の目盛り線は 1/2EV の刻みで、細線の補助目盛り線は 1/3EV の刻みで示してある。