| カメラのはなし |
ここで、カメラでフィルムあるいは撮像素子上に像を結ぶ原理を考えてみよう。
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図1 |
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図15 |
まず光は直進することを理解しておく必要がある。次に、私たちが物を見るためには光源が必要であることを理解しよう。昼は太陽が光源になってくれる。しかし、夜になって、月も電灯も、ロウソクすらもないとなると何も見えなくなってしまう。
このことから、われわれが物を見るということは、物が光源から出た光を反射し、その反射光を見ていることを教えてくれる。しかも、通常、物はどの方向から見ても同じように見える。したがって、物は光源からの光を四方八方に反射していることを示している(図1)。
そこで、四角の箱の内面を真っ黒に塗り、その1面の壁をすりガラスあるいはトレーシング・ペーパーのような半透明なスクリーンで置き換え、反対側の壁に画鋲などで小さな穴(ピンホール)を開け 、暗い部屋から、その穴を明るい外界に向ければ、かなり暗 くはなるが、スクリーンに外界の風景が、上下左右反対に映し出されることだろう(図2)。これが、ピンホールカメラあるいはカメラオブスキュラとよばれるものである。このとき、穴を大きくすると像は明るくなるが、像のボケがひどくなる。穴が小さいほど像のボケは小さくなるが、像が暗くなる。
ピンホールを使えば、レンズを用いなくても、像を結ばせることが出来ることは、興味深い。その原理を図2で説明してみよう。
たとえば、図の矢印 AB の先端 A から四方八方に反射されて直進している光のうち、ピンホールを通 り抜けられたものがスクリーンに映ることになる。このとき、ピンホールの大きさに応じて、点 A の像は A' から A" の円形の範囲に映るため、像は多少ボケることになる。矢印の根元 B やその他の部分も同じようにスクリーンに映し出され、全体の像が映ることになる。ピンホールが小さくなればボケは小さくなるが、像が暗くなる。
ボケが小さく、しかも明るい像が得られるようにするにはレンズを使用する。
レンズは一般に、表面が球体の一部を切り取ったような曲面を有するガラス製の円盤である。周辺から中央に向かって厚みを増す「凸レンズ」と、周辺から中央に向かって厚みが減っていく「凹レンズ」がある。
上記のような構造のレンズでは、光の通り方に一定の規則が生じる。
まず凸レンズには光を一点に集める性質がある。たとえば、太陽の光を虫メガネ(凸レンズ)に当て、太陽と反対側に紙を置いて、虫メガネと紙の距離を調節すると、太陽が一番小さく映る場所がある(紙が燃え始めるので注意)。このときの紙に太陽が一番小さく映る点を「焦点」という (図3)。このときレンズは太陽の像を紙の上にもっともはっきりと映していることになる。このとき太陽からの熱線(赤外線)も一点に集中するため、紙が焦げてしまうわけである。
このときレンズの中心と焦点までの距離を焦点距離という。ただし、物体がレンズに近い場合、その像が紙にもっともはっきり映るときのレンズと紙の距離は焦点距離とは異なってくる。あくまでも太陽のように無限遠にあるものの像がはっきり映る距離が焦点距離である。この焦点距離はレンズを裏返しても変化しない。また図3でレンズと垂直にレンズの中心を通るように引いた直線を光軸とよぶ。
この凸レンズにレーザーポインターの光のような線状の光を当てたときの光の通り道を考えてみよう。図4に示したように、@光軸と平行に凸レンズに入った光線は凸レンズの焦点を通る(青 色の実線および破線)、Aレンズの中心を通る光線はそのまま直進する(赤色の実線および破線)、Bレンズの反対側の焦点を通ってからレンズに入った光は、光軸に平行に進む(緑色の実線および破線)。
次に凹レンズでは図5に示したように、@光軸と平行に入った光線はレンズの光源側の焦点を通る線上を進む(青 色の実線)、Aレンズの中心を通る光線はそのまま直進する(赤色の実線)、Bレンズの反対側の焦点に向かってレンズに入った光は、光軸に平行に進む(緑色の実線)。
凸レンズから焦点距離より離れた位置に物体を置き、反対側にスクリーンを置いて、レンズからの距離を調整すると、図6のようにスクリーンに物体の像が映る位置が見つかる。この位置では、たとえば被写体の天辺の1点から出た光線のうち、上記の凸レンズの、@レンズの光軸に平行に進みレンズの反対側の焦点に向かうもの、Aレンズの中心を通りそのまま直進するもの、B物体側の焦点を通りレンズを出てから光軸に平行に進むものの全て(赤、青 、各色の実線)が、 スクリーン上の1点で交わることが分かる。光線がすべて1点で交わる、すなわち1点に集まるということは、そこに光の出発点の像が現れることになる。物体上のすべての点を出た光線が、それぞれに対応したスクリーン上の 1点に集まるので、スクリーン上には物体の全体像が現れる。このようにスクリーン上に映し出される像を実像という。 このとき、@、A、Bに当てはまらない光線(青 色の破線)も、@、A、Bの光線が交わる点で交わることになることを理解しておくことが今後重要になる。
また、図7のように、レンズが物体の像を結ぶとき、物体からレンズまでの距離を a、レンズから像までの距離を b とし、レンズの焦点距離を f とすると、これらの距離の間には
の関係が成り立つ。
一方で、凸レンズから焦点距離より短い距離に物体を置いた場合や、凹レンズの場合はレンズと物体の距離に関係なく、レンズを通った後の光線が、レンズからの距離が離れるにしたがって、互いに離れ離れになっていく (図8、図9)。このような場合、レンズが物体の反対側に像を結ぶことはない。そこでレンズから出た光線をその物体側で延長してみよう(図 8、図9の破線)。こ うすると、物体側で1点で交わる点が存在することが分かる。これは、レンズが無いものとして考えると、光線はあたかもこの交点から出てきているように見える。すなわち、レンズを通して、実際には存在していない物体を見ているのと同じになる。これにより、凸レンズの場合は、レンズの向こう側に実際より大きい物体があるように見え、凹レンズの場合はレンズの向こう側に実際より小さい物体があるように見える。このように、 実際には存在しない物体が像として見えるものを虚像という。
また、ピンホールの穴が小さくなると、像が暗くなるといったが、これは物体の1点から四方八方に反射した光のうち、ピンホールを通過できる量が穴が小さくなるほど少なくなるためである 。ピンホールの代わりにレンズを使うと、レンズは広い面積の光を一点に集めるために、ピンホールより圧倒的に光 の量が多くなり、より明るい像が得られることになる。この様子を、図2と図6で黄色で塗りつぶした領域で比較してある。
ロウソクに火をつけてテーブルの上に置くと、ロウソクの近くに比べ、遠くなるにつれ暗くなる。これは、距離が離れるにしたがって光が広がり、光の量が薄まっていくためである。
これと同じことが、レンズで結ばれた像にも生じる。たとえば図10は一定の明るさの像をレンズから b の距離に結ばせた場合(A)とその2倍の距離 2b で結ばせた場合(B)を比較したものである。(B) の像は (A) の2倍の大きさにな り、面積は4倍になる。同じ明るさ(光 の量)の像が、4倍の面積として結ばれることになると、同じ面積当りの光の量は 1/4 に薄まるため、像の明るさも 1/4 ということになる。 以上から、被写体の明るさが同じなら、レンズが結ぶ像の明るさは、レンズから像までの距離の2乗に反比例することになる。
一方で、レンズは光を集めることができる。被写体で反射され、四方八方に広がっている光をレンズの面積で受け止めて、スクリーン上の1点に像を結ばせることになる 。したがって、レンズの面積が大きいほどより多くの光をかき集められることになり、像の明るさはレンズの面積に比例することになる(図11)。
レンズの結ぶ像の明るさはレンズの集光能力を反映するものであるため、これを「レンズの明るさ」といってもよいだろう。
上で述べたことをまとめると、レンズの結ぶ像の明るさは、レンズから像までの距離とレンズの面積で変化する。これを「像の明るさはレンズから像までの距離の2乗に反比例し、レンズの面積(の1乗)に比例する」と 表現すると、距離が2乗で面積が1乗で、バランスがとれない表現になる。そこで、レンズの面積の代わりにレンズの直径 D を考えると、面積は直径の2乗に比例するので、「像の明るさはレンズから像までの距離の2乗に反比例し、レンズの直径の2乗に比例する」となってバランスが取れる。
さてここに、直径(口径)が 1 で焦点距離が 1 のレンズがあるとしよう。ここでレンズの口径と焦点距離の比 D:f をとると、1:1 になる。これに対し、口径が同じで、焦点距離が 2 のレンズでは D:f が 1:2 になり、このレンズは最初のレンズより焦点距離が 2 倍になったため、明るさが 1/4 になる。しかしこのレンズの口径を 2 にできれば、明るさが 4 倍に増し、D:f も 2:2 = 1:1 となって、最初のレンズと明るさも D:f も同じレンズということになる。
したがって、この D:f でレンズの明るさを表すことができる。この D:f を「口径比」という。この場合、D には、レンズの物理的直径より、レンズが通過させることのできる、レンズへ入射する平行光線の光束の直径(有効口径)を使用する。 またレンズが 実際に像を結ぶ位置は、被写体とレンズまでの距離で変化し、実際の像の明るさも変化するため、レンズの明るさを比較できるように、レンズが無限遠にある物体の像を結 んだときの明るさで比較することにする、すなわち像の位置が焦点距離 f の場合で比較する方法を採用している。通常口径比は、D の値が「1」になるように換算され、レンズの鏡筒に「35mm 1:1.4」あるいは「1:1.4/35」のように焦点距離とともに表示されている(図12)。口径比の右側の値が小さいほど、レンズは明るいことになり、一般には「3」以下のものを、明るいレンズという。
カメラレンズには、図13に示すようないくつかの羽根を、リング上に配置されたピン(図の緑のリング上の赤い点)と各羽根上のスリットによるリンク機構で、リングを回転させると羽根が開閉するようにし、それによって羽根の開口面積が変わるようにした仕組みの「絞り」がついている。この絞りでレンズの実効的口径を変化させて レンズを通過する光の量を調整するのである(図14(A)、(B))。
絞りには1.0、1.4、2.0、2.8、4.0、5.6、8.0、11、16、22、32、…のような値がついている。 この数値の列は、一つ右に移動するたびに、ルート2(1.4142)倍ずつ増している。これは図2で示したように絞りによってレンズの実効的口径 D を変化させたときの、
で求められる F 値で絞りの効果を表したものである。絞りでレンズの実効的口径を変化させたときの口径比の逆数を表しているといってもよい。なぜ逆数をとるのかといえば、口径比では口径に対応する値が常に「1」なので、焦点距離に対応する値そのものだけで表せるようになるからだ。たとえば口径比が「1:2.8」なら F 値は「2.8」となる。
また「f/2.8」のような表し方もあるが、これはF値の式の右辺をそのままの形で書いたものである。
絞りがもっとも開いた状況では、レンズ自身の口径を全く遮らないようになっている。 この状態をレンズの開放という。この状態は、そのレンズのもっとも明るい状態で、これを 「開放 F 値」と呼び、レンズの明るさを示す口径比と同じ意味 になる。
絞りを 1 ステップずつ閉めていくと、絞りの値はルート 2 倍で増えていく。これは、レンズの実効的口径がルート 2分の1 で減っていくことを表す。実効的口径がルート 2分の1 で減っていくことは、絞りの開口面積 が口径の 2 乗に比例することから、面積は 1/2 になっていく。レンズを通過する光の量は面積に比例するため、絞りが1段絞られるごとに、光の量は半減することになる 。
カメラのシャッターには、絞りと同じような構造で、レンズの中に組み込まれるレンズシャッターとよばれるものと、二組の幕をフィルムあるいは撮像素子の直前で、横方向あるいは縦方向に走らせるフォーカルプレーン(焦点面)シャッターがある。
レンズシャッターは完全に閉じることの出来る絞りが一定時間だけ開くものと考えればよい。通常、動作時には完全に開くのだが、場合によっては設定された絞りの直径までしか開かずに、絞りの役目も兼ねるものもある。
一方、フォーカルプレーンシャッターは図15のように、フィルムあるいは撮像素子の直前に、何枚かの板状の幕を置き、通常は光を遮っており、シャッターボタンを押すとこれが上下方向に走り、フィルムあるいは撮像素子に像を露光させるものである。幕が上から下に走り抜けるには 1/250 秒程度を要するので、それ以上速いシャッタースピードになると、先に移動を開始して露光を開始した幕(先幕)が、まだ移動している間に、後からフィルムあるいは撮像素子を覆うための幕(後幕)が移動を開始する。このため、速いシャッタースピードのときは一定幅のスリット(隙間)が移動することになる。このため、光る時間が1/500秒以下とごく短いストロボを使うときには、両方の幕が完全に開くシャッタースピード(1/250 秒以下、カメラによって変わる)を使用しな いとスリット状の画像しか記録できないことになる。
シャッタースピードの刻みは1秒、1/2秒、1/4秒、1/8秒、1/15秒、1/30秒、1/60秒、1/125秒、1/250秒、1/500秒、1/1000秒と1/2倍刻みになっている 。したがって、シャッタースピードの1刻みは露出時間を 2 倍ないし 1/2 倍にする調整効果を持っている。