| カメラのはなし |
ここでは、写真撮影でよく生じる失敗や、疑問について述べてみる。
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| 写真1 (1987年撮影) |
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| 写真2 (1987年撮影) |
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| 写真3 (1983年撮影) |
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| 写真4 (1983年撮影) |
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| 写真5 (1973年撮影) |
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| 写真6 (1976年撮影) |
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| 写真7 |
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| 写真8 |
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| 写真9 |
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| 写真 10 |
人間の目は便利なもので、自動ズーム機能が付いている。カメラのズームレンズのように物理的に像が拡大することはないが、われわれの目はかなり狭い範囲だけを注視することができる。 このとき、像が拡大されることはなくとも、心理的にはかなり像が拡大されたように見え、そのため、一点を注視しているときには意外とそれ以外が見えなくなる。これが写真を撮るときによくある、しかしカメラマン本人にとっては意外な失敗を招く原因になる。
写真を撮るときに、ファインダーの中で被写体のみに注視してしまうと、ファインダーに写りこんでいる背景がどの範囲なのかにまったく注意を払えなくなってしまう。たとえば、可愛いい我が子の写真を撮ろうとするとき、写真1のように、我が子の表情ばかり に注視してしまうと、写真上の赤丸のようにしか見えなくなり、それ以外の背景が白枠の範囲になっているのか、その外のどこになっているのかに注意を払わないままシャッターを切ってしまう。その結果、写真1のように表情を窺うには子供が小さ過ぎる写真になってしまう。しかし、カメラマンの脳裏に残っているのは写真1の赤丸のようにズームアップされた表情で、仕上がった写真ではその表情を窺うことができずにがっかりすることになる 。
上記の失敗を避けるには、カメラを構えたら、常に最初にファインダーに写っている背景に目を配って、どの部分を切り取るかを決め(これをフレーミングという)、それから被写体の特定の部分(この場合は表情)に目を移してシャッターチャンスを待つという手順を身につけるように心がけて置くべきだ。もちろん、カメラマン自身が移動する、あるいは被写体が移動した場合は、その度に上記を繰り返す 必要がある。
写真教室の講師たちは、これをより簡単に「常に一歩踏み込んで、シャッターを切る」というように教えているようだ。写真が出来上がってからがっかりすることになるのは、いつも踏み込みが足りず、被写体が小さく写ってしまった場合ばかりだからだろう。踏み込みすぎて被写体がフレームからはみ出してしまう場合は、ファインダーを覗いていれば、誰でもすぐに気が付く。写真1も、もっと踏み込んでいれば、写真2のようになったのだ。
上とは逆の状況もたびたび生じる。
よく、ある種のイベント等に参加したときなどに 、記念写真の撮影を依頼されることがある。そのようなときに、よくある写真が写真3のようなものである。写真を頼んだ当人は、そのイベントを、もっともよく表している看板等を見つけると、その前に立ち、そして、写真を撮ってくれと依頼する。カメラマンはその看板等がうまく納まるように後ずさりして、写真を撮ることになる。このため、看板や建物が大きいと遠くまで離れなければならなくなり、結局人物が小さくなってしまうのだ。
この場合も、人の目が狭い範囲を注視できるため、被写体がファインダーの中で小さくなってしまっていても、あまり違和感を感じずに、ついシャッターを切ってしまう。しかし、落ち着いてファインダーのフレーム全体を見れば、人物が小さくしか写 っていないことに気付くはずだ。カメラマンが後ずさり しなければならないような状況では、被写体の人達にも一緒に移動してもらうべきである。これでやっと、写真4のような人物を識別できる写真にすることができる。
被写体が子供の場合、写真を何気なく撮ると、当然のように子供を見下ろすアングルの写真ばかりになりやすい(写真5)。このアングルの写真は、子供を「小さくて、可愛い存在」と して表現したものになる。すなわち、カメラマン側が主体の世界の表現だ。 通常、写真を見る人たちは子供のかわいさを求めていることが多いので、これでも悪くはない。
しかし、子供には子供の世界があり、感情がある。それを重視した写真にしてみたい場合は、写真6のように子供の目線に合わせたアングルで撮影 してみることをお勧めする。こうすると、今度は子供が主役の世界の表現になる。写真2も同様であるが、子供と同じ目線のアングルで捕らえると、子供のかわいさばかりでなく、この子は 今何を思っていたのだろうと、子供の気持ちを思いはかってみたくなるような写真になる。
同じことはペットなど動物写真でもいえる。
よく何かの拍子に、人物写真 (ポートレート)の撮影を依頼されることがあろう。こんなときは、光のよく回っている(直射光ではない)場所を探し、カメラ内蔵のストロボも使わない方がよい(スナップ写真風でよい場合なら別だが)。バックは明るすぎもせず、 暗すぎもしない、模様の無い壁などのある場所を探す。これらの条件を全て満たす場所となるとなかなか見つからない。そんな場合には、人物を無理して壁際に立たせず、絞りを開けて背景をぼかすことを考えてみよう。このためには背景が出来るだけ均一な模様になる場所がよい。後ろが壁の場合でも、あまり壁に近づけない方が、壁の汚れや被写体の影が出ないので好ましい結果になる。
また、人は誰でもカメラの前に 出ると緊張する。このため、普段の表情と写真の表情が大きく変わる人がいる。私の先輩に、写真を撮ると、いつもギョロ目を剥いた怖い表情になってしまう人がいる。このような人の場合、昔なら「フィルムを入れたばかりだから」と空取りのふりをして、「さあ撮りましょうか」という前に何枚か撮っておくと、その中にいい写真が撮れていることが多かった。当然、空取りのふりをするわけだから、ファインダーを覗いてはいけない。このためには、三脚を使い、まず最初に、フレーミングを決めておかなければならない。
私のギョロ目の先輩は、これで本人も多いに気に入るポートレートが撮れ た。どのくらい気に入っていたかというと、その後、この先輩が海外に出張する際、「万一のことがあったら、彼(私)がいい写真を持っているから」と周囲に言い残して出国したというほどである。
ディジタルカメラではフィルムの空取りの手は使えないため、ピントや露出を設定している(実際はAF、AEを使うにしても)ふりをするしかないだろう。いずれにしても、ポートレートには三脚を使い、 フレームの設定がすんだら、撮影者はカメラを覗かず、談話しながらリモコンで撮影することにすれば、相手の緊張を軽減させることができる。
本来、ポートレートの実例を示したいのだが、いちいち、被写体になった人たちの承諾を取るのも面倒なので、文章だけで済まさせて頂く。
一般に写真7のような 「接写」をしなければならないのは、オークションに出品するものの写真を撮ろうとする時などであろうか?あまり大きくなく、奥行きのあるものを、全体がボケないように撮影したい場合、ピント合わせをどうすればよいかに悩むことがあろう。
結論から言うと、『カメラレンズの特性』の「被写界深度」で述べたことにヒントがある。被写体のもっともカメラに近い点と、もっともカメラから遠い点が、レンズの被写界深度に収まるようにピントを合わせて撮影すればよいということ である。
ここではマクロレンズを使用した例で説明するが、この程度だと標準レンズでも使用できるだろう。ただし、ズームレンズだとレンズの鏡筒に被写界深度を示すマークが付いていないので少し工夫が必要になる。また、被写界深度を利用するには、手動ピント合わせおよび絞り(Av)優先機能が使用できること、かなり絞り込む場合が多いので明るい光源が使用できること、ブレを防ぐために三脚を使用できることなどが必要になる。
まず、フレーミングを決めて、被写体のもっとも手前の点にピントを合わせてみよう。そして、レンズの距離指標(写真 8の1番下のレンズ鏡筒の◆マーク 。レンズによって異なる)の指す距離目盛を読む。この場合、距離は写真のように 0.5m と読める(正確には小数点「.」の位置)。次に、被写体のもっとも奥の点にピントを合わせて、距離目盛を読む (写真8の1番上のレンズ鏡筒)。この場合距離は 0.6m (正確には数字「6」の位置)であった。
被写体のもっとも手前が 0.5 の小数点「.」の位置、もっとも奥が 0.6 の数字「6」の位置でピントが合ったなら、距離目盛の 0.5 の「.」と 0.6 の「6」が距離指標(◆)から均等に離れるようにフォーカスリングを回転させて、それぞれの上にある被写界深度のF値の数字を見る(写真 8の中央のレンズ鏡筒)。この場合、 両者ともほぼ 11 と 22 の数値の間の縦線(|)に一致している。これは f/16 に対応する線である。そこで、ピントをこのままにし、絞りを f/16 にセットして撮った写真が写真7である。これで被写体全体にピントのあった写真になっている。
さて、ではズームレンズで焦点距離が変わるため、一定の被写界深度の目盛りを書き込 まれていないレンズを使用する場合はどうすればよいか? またコンパクトカメラで距離目盛が読めない場合も同様である。これを考えるにはまず、被写界深度の性質を理解しておく必要がある。それらは、
@ 被写体が同じ距離にある場合、絞りのF値が同じでも、焦点距離の短いレンズほど被写界深度が深くなり、焦点距離の長いレンズほど被写界深度は浅くなる。(だからズームレンズでは被写界深度のマークを刻めない)。
A レンズの焦点距離が同じ場合、絞りのF値が大きいほど被写界深度が深くり、絞りのF値が小さいほど被写界深度は浅くななる。(f/8を超えると解像度が落ち始めることも忘れてはならない)。
B レンズの焦点距離が同じ場合、絞りのF値が同じなら、被写体の距離が遠くなるほど被写界深度が深くなり、被写体の距離が近くなるほど被写界深度が浅くなる。
この様子を写真 9のレンズの鏡筒で確認してみよう。レンズの鏡筒の写真をみると、絞りが f/22 のとき、被写界深度が 1〜2m になるようにセットされている。この状態で、距離指標(◆)の指す距離を読むと、1.3m 程度であることが分かる。 この状態は、距離 1〜2m の範囲に奥行き 1m の被写体があり、その全体が被写界深度に収まるようにするには、1.3m、すなわち 1〜2m の手前から 1/3 の点にピントを合わせて、絞りを f/22 にセットすればよいことを示している。
これは一般的にいえることである。したがってズームレンズの場合、写真8のように被写体全体の手前から 1/3 の点にピントを合わせて、被写体の大きさに合わせて絞り込めば、全体にピントのあった写真が撮れるのだ。問題は絞りをどう決めれば良いかだが、この場合、f/8 から始め、1段ずつ 絞込みながら、3絞りほど異なったF値で撮影してみて、もっとも仕上がりの良いものを選ぶことにすればよいだろう。
また、 コンパクトカメラで距離目盛が読めず、絞りも自由に設定できない場合は、できるだけ明るいところで、被写体全体の手前1/3のあたりをファインダーの中心に持ってきてシャッターボタンを半押ししてピントを固定し、それからフレーミングを決めて撮影すればよい。
被写界深度は広角側のほうが深くなるため、接写の場合は、つい広角側を使いたくなる。しかし、広角側では遠近感が誇張されて被写体が歪んで写るので注意を要する。写真 7は35mmフルサイズでは80mm相当の焦点距離であるが、これを 50mm 相当の焦点距離のレンズで撮影したものが写真10である。写真 7(あるいは写真8)と比較して、奥へ行くほど細まっていく感じが強調されているのが分かるだろう。
『カメラレンズ』の「レンズ の画角とパースペクティブ(遠近感)」で説明したように、広角レンズで遠近感が強調されるのは、画角が広いためということより、被写体に近づかなければならないためという理由の方が効いている。接写のように、通常より被写体に近づかなければならない撮影では、標準レンズでも遠近感が強調されやすくなる。したがって、接写では、標準レンズより焦点距離の長めのレンズの方が自然に見えるのだ。
奥行きのあるものは 80〜100mm 程度の焦点距離を使用したほうが、自然に見えることを覚えておくと良い。特に単焦点のマクロレンズを購入する場合は、十分に検討して焦点距離を決めるようお勧めする。最近はズーム レンズでも接写ができるものがほとんどであるし、性能も実用上十分であるので、マクロ専用レンズを購入する必要はないのでは、とも考えている。
ここで、ファインダーを覗きながらのピント合わせについて一言。昔、カメラマンが自分でピントを合わせなければならない時代には、ファインダーにピントを合わせやすいようにする工夫がされていた。 一眼レフの場合は、ファインダーの中心部の小さな円形の内部を上下に二分し、それぞれを逆方向の傾きの斜面 (プリズム)で掘り込み、ピントが合っていないと縦線状の模様の横ずれが拡大されて表示されるようにするとか、同様の範囲内の表面に微小なプリズム状の構造を連続して配置し、ピントが 少しでもずれると模様が荒れて見えるようなファインダーが多かった。 またレンズシャッターカメラの場合なら、カメラボディの水平に離れた 2 点 から見た像を重ね合わせ、ピントが合った点で両者がピタリと重なり合うとか、ピントが合っていないことを強調してくれていた。しかし、機械任せの自動焦点合わせが蔓延した現在では、ただ単にレンズの像をスリガラス状の板に結ばせるだけのものが多くなっている。このため、最近のファインダーには微妙なピント合わせに耐えられるものは少ない。代わりに、液晶画面やPCに接続してそのモニター上で拡大して見られるようにしたり、専用のフォーカシングスクリーンを別売りで準備しているものがある。
そんな状況で、ファインダーでピントを合わせる方法を紹介しておこう。フォーカスリングを回していくと、ボケた像が次第にピントが合っていく。しかし、ピントが合っているように見える範囲 は意外と広い。どこでもっともピントがあっているのか判断しにくい場合は一旦やり過ごして、再びボケ始める点までリングを回す。ボケ始めたと思ったらリングを戻して、反対側で同じ程度にボケる点を探し、両者の真ん中にフォーカスリングをセットするという方法だ。