迷子
えーと、これで何回目なんだろう
ココに来るのは
「あの・・・・」
そう声を掛けた僕に掛けられた人物は”またか”と、そういった顔をした。
さっきから何度も同じことを問いかけてしまってるから
そんな風になる気持ちもとてもわかるんだけど。。。
でもやっぱりそんな態度をとられちゃうと悲しいかな
「・・・・・・・・・・」
なんだか次の言葉が言えなくて俯いて黙っていたらポンと頭に手を乗せられた。
びっくりして顔を上げるとそこにはさっきまでいなかった人が立っていた。
「越前。友達を泣かしちゃいけねーな。いけねーよ」
えっと、この人は誰なんだろう?
きょとんと見る僕にその人は「どうしたんだ?」とにこっと笑いかけてくれる。
この人を最初見たときに大きくて体格もしっかりしてて、
遠めに怖そうな人かもしれない
そう思っていたことが間違いだったことに気づく。
怖いなんてことは全然なくてそれどころかとても気さくな先輩みたいだった。
「桃先輩。別に泣かせてなんてないスよ」
そういって、越前君がぶすっとふくれてそっぽを向いた。
そうだね、僕まだ泣いてないから。。。泣きそうだけど
それに同じクラスなんだけどちゃんと話すのは今日が始めてで、まだ友達というわけでもないんです。
残念ながら・・・
いろいろクラスの中でも越前君は有名で一度話してみたいと思っていたのだけど
まさかこんなね、僕が馬鹿だって披露してしまうようなことで話することになるとは思わなかった。
神様なんていないんだって、思わず恨んでしまった。
「で、どおしたんだ?」
「あの。。。保健室までの道がわからなくて」
「保健室?怪我でもしてるのか?」
「いえ!僕、保健委員なんです。今日それで仕事があって」
「それでここにいるってことは迷ったんだな」
そういって、その先輩は丁寧に教えてくれた。
「ありがとうございます!」
と僕はえーと。。桃先輩?と越前君に深々と頭を下げて教えてくれた方向にと歩いていった。
「桃先輩」
「なんだ?」
「あいつ。。。また戻ってきますよ」
「はっ?何でだ?」
「・・・なんででしょうね」
「おいっ、意味深な台詞吐いて立ち去るのはやめろ。。越前!!こらっ!!」
そんな会話が僕が立ち去った後で交されていたなんて全然知らない
「・・・・えーと」
何でだろう?さっきの桃先輩が教えてくれた通りに来た筈なのに
今、僕が居る場所って
「どう見ても校門だよね?」
。。。僕ってなんでこんな方向音痴なんだか
にしても学校内で迷子になるなんてどうなんだろう。
このままじゃ委員の仕事始まっちゃうよ!
と、振り返って校舎の時計を見て僕は泣きそうになってしまった。
何故なら時刻はとっくに過ぎていたから・・・どうしよう
「そこの君。どうして泣きそうな顔してるにゃ?」
えっ?それは僕のこと?
びっくりして振り返ればそこには3年のバッチをつけた人が居た。
「あ、あの・・・」
「英二、いきなり話しかけたらびっくりするよ・・・・ごめんね、びっくりしたよね」
最初に声を掛けてきた人の後ろからもう一人3年の人が現れた。
そしてその人は僕の顔を見てびっくりしたように表情をする。何だろう?
「あれ?間違ってたらごめんね。。。君、さっきもここに来てなかった?」
そう聞かれて・・・その人の顔をまじまじと見てしまった。
「どうやら当たっていたみたいだね」
「不二ー、どーゆーことにゃ?」
「この子、さっきもここに来て、キョロキョロした後に来た道を戻っていったんだよ。
さすがにそれを2回くらいみればね」
。。。。。どうやらこの先輩には僕が何度も迷ってここに来ていたことをしっかりと見られていたようで
もう一人の先輩はその話を聞いて感心したように僕を大きな眼でじーっと見てきて
居心地が悪い。
「ほらっ、英二。そんなに見ないの。怯えてるでしょ」
「にゃ!?ごめんにゃ!!えっと、で、どこに行きたかったの?」
「えーと」
僕が答えようとした時に、
「どうしたんだ」
背後から声が掛かった。
そのとても聞き覚えのある声にそーっと振り向けばそこには
「「手塚!!」」
僕が「生徒会長さん!」と声を上げる前にさっきまで話していた先輩二人が声を上げたので
僕はなんとか押し留まることができた。
そしてそのことに心の中でホッと息を吐き出す。
だって、僕は生徒会長さんのことを知ってるけど生徒会長さんは知らないんだからいきなり呼びかけられてもびっくりさせるだけだ
ろうし
そう思っていたら生徒会長さんの後ろからまた違う人が顔を出した。
「不二に英二、その子はどおしたんだい?」
その人はとても面倒見良さそうな顔をしていた。
「迷子になったらしくてね、何処に行くのか聞いていた所だよ」
「迷子か、青学は広いからな」
「そうそう、オレだって1年の頃はよく迷ってたにゃ」
「英二、それは自慢して言うことじゃないよ
「それで何処に行くんだ」
集まった3年の先輩達に囲まれて、僕の頭の上で会話していたと思ったらいきなり話しかけられて(それも生徒会長さんから!)
僕はすぐに返事が出来なくて、さらに息もつまったような感じになってしまった。
「ほらっ、手塚の聞き方が怖いから怯えさせてしまってるよ」
「あっ、そ、そおゆうわけではないです!!」
にこにこ笑顔の・・・不二と呼ばれた先輩が言った言葉に僕は慌てて反応する。
「怖がらなくても平気にゃ。。。オレ達だってたまに怖いしね」
そういって最初に話しかけてくれた英二先輩?が僕にぎゅっと抱きつきながら話しかけてくれた。
そして最後に表れた面倒見よさそうな先輩に何処に行くのかを聞かれて。。
わかりやすく教えてもらって僕は何度も何度も頭を下げてその場から立ち去った。
「あの子、また戻ってきたりしてね」
「そんなに迷ってたのか?」
「みたいだよ。今ので3回目。」
「そうそう、泣きそうな顔して放っとけない感じだったにゃ」
「英二、気に入ったみたいだったな」
「可愛いかったからにゃー♪」
「お前達そろそろ部活に行くぞ」
そんな会話がやっぱり僕が立ち去った後に交されていたなんて全くもって知らない
「・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい(TT)」
もう僕って奴は本当にどうしようもない
目の前には”やっぱり来たか”みたいな顔をした越前君と苦笑する桃先輩の姿。
この二人にも、さっきの先輩達にもとっても親切にしてもらったのにそれに報うことが出来ない自分がふがいない
ここに穴でもあったら飛び込んで上から土を被せて貰うのに・・
「ね。桃先輩。言った通りでしょ」
「あー。えー・・・まー、慣れるまではこんなこともあるから気にすんな。な?」
桃先輩がひきつった笑顔で慰めてくれるけど。。。僕はさらに落ち込んでしまう。
「ねぇ」
どうしたらいいんだろうと俯いていたら目の前に手が差し出された。
よく見るとそれは越前君の手で。。。
「手」
「えっ?」
手がどおしたんだろう?と考えてたらいきなり腕をとられた。
そのまま越前君は僕をひっぱってズンズンと歩いていく。
「おいっ、越前。どおしたんだ?」
「このままじゃまた戻ってくるだろうからこのまま保健室まで連れてって来るっス」
「あぁ、そうだな。その方がいいな。」
ということだから越前にまかせとけ!そういって桃先輩がにこにこと手を振っている。
でも僕はまだ展開について行けずぼけっと越前君に引っ張られていくままだった
「ねえ」
「あっ、え?何?」
「ちゃんと道覚えなよね」
あぁ、そうだよね。今日だけでどんだけの人に迷惑掛けたか。
本当にごめんなさい
「どうしても覚えれなかったら俺の所に来ること。」
そうしたら連れて行ってあげるから・・・その言葉に僕は目を見開いてしまう。
「あんだけ迷う姿をみたら心配で部活に集中できないから」
そう言ってくれる越前君に僕は
「ありがとう!!」
感謝の言葉を述べる。
こんな馬鹿な僕を呆れずに・・・呆れてはいるだろうけど見捨てないでくれて本当にありがとう!!
「」
感謝の気持ちでいっぱいになってる僕を呼ぶ声が聞えて、声が聞えた前方を見てみる
そこには
「海堂先輩!」
今日一緒に保健委員の仕事を行う筈だった海堂先輩の姿があった。
「海堂先輩知ってるの?」
「あっ、保健委員なんだ」
「ふーん」
僕と越前君が話してる間にも海堂先輩が近づいてきて・・・なんでか越前君と睨み合いがはじまってしまった。
「・・・・フシュー」
「先輩。同じ委員なら後輩の面倒もしっかり見といてくださいっス」
いつまで続くんだろうと思っていたら越前君は先輩にそういうと”じゃあね”とクルリとテニスコートの方にと戻っていく。
「越前君、ありがとう!!」
僕の言葉に越前君は振り返りもせずに行ってしまった。
「海堂先輩。仕事間に合わなくてすいませんでした。」
ぺこりと頭を下げた僕に先輩は頭に手を置いてくしゃっとした後
「まだ仕事が残ってる。戻るぞ」
そういって先を歩き出した。
「はい!!」
返事をして先輩に追いついてその顔を見ればなんだか安心したような表情
もしかして先輩は僕を探してくれたのかな?
心配して探してくれて、そして見つかってそれで安心したのかな?
聞いてもきっと答えてくれないだろうけどきっとそうなのだろうと思うと僕はまた感謝の気持ちで心がいっぱいになった。
今日、迷惑を掛けてしまって、でもそれでも僕につきあってくれた越前君や先輩達、
心からの感謝を!
これからもまだまだ迷子になってしまうだろうけど、その時はまた付き合ってくれると嬉しいです。
でもそんなことにならないようにちゃんと覚えなくちゃね。
まずは。。。校内地図でもポケットの中に常備しておこうかな☆