マジック






「乾先輩!」

今日も朝練が終わったばかりのテニス部部室に飛び込んでくる小さな人影一つ



名前を呼ばれてそちらの方を見れば

そこにはしかめっ面で自分を見ているテニス部部長の姿

「あっ、手塚先輩、おはようございます!」

大きな声でペコリと頭を下げた

「何度も言うようだがここは部外者は・・・」

立ち入り禁止。そう言おうとした途中で手塚は足に痛みを感じて顔を顰める

そして痛みの原因を睨み付けた

睨みつけられたのはいつも笑顔を絶やさない不二だった。

なんというか、不二は手塚の足を踏みつけていたのだった。

「手塚、君だから良いじゃない?君、おはよう」

不二に挨拶されて慌ててさっきよりもさらに深く頭を下げて

「不二先輩。おはようございます!」

と挨拶をした。

不二が自分を助けてくれたということを解っていてその感謝の気持ちも込めた挨拶だった。

「で、今日はどんなのを見せてくれるのかな?」

「はいっ!!今日こそは絶対に乾先輩に見破られないものを考えてきました!!」

話を振られて嬉しそうにポケットの中をごそごそと探る。

そして探していた物を手にとって乾に向き直った。

「乾先輩、良いですか?」

わくわくとした瞳で乾を見る。そんな姿に乾は苦笑した。

「俺は良いが。手塚、構わないか?」

「時間がない。早くしろ」

「ということだ。

「はいっ!!」

では早速!と楽しそうに手品を披露する後輩を乾だけでなく部室に居た全員が楽しそうに見ていた。

この後輩が朝練が終わった頃、放課後の練習が始まる前などの合間を狙って

テニス部の部室に現れるようになったのはつい最近のこと

そして今ではこうやって手品を披露するのが恒例となっていた。

最初は何故こんな所で手品を披露?などと不思議がっていたのだが今ではすっかり毎日の楽しみの一つとなっていた。

”部外者立ち入り禁止”と注意する手塚だって実は密かに楽しみにしていることを皆知っている。

そして一番の楽しみは・・・・

。そこまでだ」

「はいっ?」

「ここでそれをやるには危険だろ。もう少し広い場所か外なら構わないけどね」

「・・・・・・・」

「わかったかい?」

「・・・・・・・・・・・乾先輩の馬鹿ー!!!!」

大きな目に涙を浮かべたかと思うと部室を飛び出していく。

ご丁寧にもしまっていたドアはこうなることを予想していたらしい部員の一人によって開かれていた。

以前、閉まっていることを忘れて思い切り激突し、脳震盪を起こして保健室に運ばれていった経歴があるための配慮だった。

「今日も豪快に飛び出して言ったね」

「そうっスね。あの勢いでドアにぶつかっちゃあぶねーな。あぶねーよ」

「の前にドアが壊れるんじゃないかな?」

「お前達・・・ドアの心配の前に君の心中を察してやるんだ」

それぞれがそれぞれの感想を述べていくのを乾は苦笑しつつノートに書き込みしつつ聞いていた。

「ところで乾。止めたのはどうしてだい?」

「あぁ。が先ほどやろうとしていたのは火を使う手品だったんだ」

「なるほど、こんな狭い部屋に大人数いる所ではそれは危険だね」

そおゆうことだ。と頷いて、書き込み終了しると”お先に”と部室を出て行った。

「そおいえばは乾に手品を見せに来てるんだよね?」

「確か最初にここに来た時はそうだったかな」

「今では僕達皆の楽しみになってるけどね」

「でもどおして乾に見せに来るようになったんだろね?」

「話はそれまでだ。そろそろ始業の鐘がなる。教室に行くんだ」

手塚の一言に皆は慌てて荷物を持って部室を出て行った。



何故乾に手品を見せに行くのか

その理由はとても簡単だった。

得意な手品をいとも簡単に見破られたから

それまで誰にも見破られることなく自分でも自信持っていたにも関わらず

それなのに乾に見破られてしまったことが悔しくて悔しくて!!

だから見返すために!!というか乾に見破られない手品を披露してやる!な意気込みで乾のいるテニス部部室に乗り込んでいく
のだ。

何故教室にはいかないのかというと・・・やはり1年が3年の教室に乗り込んでいくにはかなり勇気がいるらしい

でも自分にはその勇気がなかった。ということだろう。

じゃあさっきいたテニス部だって、ということにならないのはテニス部にクラスメイトがいるのでまだ訪ねやすいということかもしれな
い。

とにかくそんな理由で見せに行って、今まで10回中2勝8敗で負けていた。

これはもうひじょーーーーーーーーーーーーに悔しい!!

だからもっと勝敗率を上げる為に頑張らなくては!!と乗り込んでいくのだが。。。今日もまた負けてしまった。

というかいつの間に勝負事になってしまっているのかは自分では解ってないらしい

「はぁー。今日もダメだぁ」

昼休み屋上の柵にだらんと持たれながら大好きなパックのフルーツ牛乳を飲むのが日課。

そしてため息こぼして愚痴っているのも日課

・・・・・・・・なんて精神衛生上に悪い日課なんだと一人つっこみしてまたため息をつく。

飲み終わったパックをくしゃくしゃと丸めてから、ポケットに手を突っ込んで・・・

「ハイッ」

かけ声とともに出てきたのは小さな造花の花束

あら不思議。さっきまで手にしていたはずのくしゃくしゃになったパックは消えている。

「うーん・・・これだと地味?てか見てくれる人いないと寂しい(TT)」

「見てたけど、それに別に地味じゃないと思うけど」

「そお?ありがとう♪・・・・って、越前君!?」

屋上には今、自分しかいないと思っていたためにかけられた声に驚いた。

そしてその声の主がクラスメイトの越前リョーマであることに気づいてさらに驚いていた。

「えと・・・どこらへんから見てた?」

「最初から」

「うぎゃぁぁぁ」

最初っからってなんて恥ずかしい姿をお見せしてしまったんだぁぁぁ(><)

恥ずかしい恥ずかしい・・・うぎゃぁぁ!!とその場でじたばたと暴れる

そんな様子をつも愛飲ジュースを飲みながら見ていた越前はふと思ったことを口にした。

「ねえ。」

「なにぃ?」

暴れてるうちにどうやら何処か壊れてしまったらしい

そんなことを気にしていたら負けだ・・と何故かそう思って気にしないようにしつつ話を進める。

「さっきの手品。見たことないんだけど」

「あー、うん。だってやってないもの」

「なんで?」

「だって人に見せるにはちょっと地味かなー?って」

「ふーん」

「何だよー」

「さっきも行ったけど別に地味じゃないけど。」

「本当?」

「ホント」

地味じゃない。といわれてそこでうーんと考え込み始める。

「今の、乾先輩に見せてみたら?」

「えぇっ!?今のって基本だよ?すぐに見破られるよ」

「そんなことないと思うけど。俺はわからなかったし」

「えっ!?」

「解らなかったって言ったの。聞えた?」

「聞えた聞えた!!そうなの?わからなかったの?」

えぇ!!そうなんだ!!うわぁ・・・んじゃ、乾先輩にも通じるかな?

じゃあ、一度見せてみようかな?

そういって瞳をキラキラと輝かせ出したの姿を見て越前はニヤリと笑った。

「乾先輩なら、さっき部室に行くのを見た」

「えっ!?本当!!んじゃ、今から見せに行ってくるよ!!!」

ではっ!!と部室に来る時、出る時と同じく勢いよく飛び出して行ったのだけど途中停止すると越前の所に戻ってきた

「越前君、ありがとう!!これお礼!!」

そう行って先ほど出した造花の花束を越前の手に押し付けると今度こそ部室にと向っていった。

後に一人残された越前は押し付けられた花束を見て

「・・・いらないんだけど」

などとこぼしていたとかいないとか

そして乾を求めて部室に駆け込んでいったはどうやら1勝勝ち取ることができたらしく

部室の中からは「イェア!!」といった勝利の雄たけびが響き渡っていたという

 

 

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