ありがとう
「あれっ?」
鞄を開いて中の荷物を机に移す時
いつも入れてるはずのお守りがなくなってしまっていた。
そのお守りは前に住んでいた家の隣に住んでいたおじいちゃんが
引越しの日にくれたもの
僕が知らない場所、知らない道にいくとすぐに迷子になってしまうことを心配して
わざわざ手作りで作ってくれた物だった。
それを僕はココに引っ越してきてからずっと持っていて
青学に入ってからは鞄につけていた。
その今もついてるはずのお守りがない。
「どうしよう・・・」
そういえばこの間から紐が切れそうになってて取り替えなくちゃと思っていたのだけど
毎日のテニス部の練習がハード過ぎて、
家に帰ると風呂入って夕飯食べて宿題やって、その後はバタンとベットに倒れこむように眠ってしまう毎日
なかなか紐を取り替えるというそんな簡単な作業をするのにさえ疲れた身体には寝る時間が削られてしまうことを
惜しんでしまう。
それでずるずると日がたつうちにとうとう切れてしまったようだった。
朝・・・来る時はまだ着いてた。
多分学校に来る途中で落としたということはないと思う。
なんとなく朝練の為に部室で着替えてたときに見たような気がしたから
だから失くしたとすれば多分、部室か、部室から教室までの道のりの途中
途中の物好きさんでない限りは誰かが持って行ってしまうということはないだろうから
きっとまだ落とした場所にあるんじゃないかな?
それか親切な人が道の端に寄せて置いてくれてるか
先生かに落し物として渡してくれてるか
だから多分、今探しに行けば見つかると思う。
いくら見つかるだろうと思っていても時間が経つ程にその可能性は低くなっていくだろうし
ちらっと教室の前の壁に掛けられてる時計を見ればあと数分で朝のHRが始まる時間をさしていた。
どうしようか・・・と考えたのは一瞬
教室を飛び出そうとした僕に同じクラスのカチロー君とカツオ君が何処に行くのかと尋ねてきたので
振り返らずに「部室に忘れ物」と一言返して急いで教室を出て部室までの道のりを必死に目を凝らして歩いた。
そして辿り着いた部室。
ここまでの間にお守りは見つからなくて、よけてあるかもしれない端の方も見てみたけどなくて
だからきっとここにあるんだろうと部室のドアノブに手を掛けて回してみれば
ガチャガチャ
「あー、鍵しまっちゃったんだ」
そりゃそうか。授業の間は部室はしまってるものだし
鍵を持ってる大石先輩は今頃は真面目にHRに出てることだろう。
「・・・・・・教室に戻ろうかな」
今から戻れば1限目の授業にはギリギリ間に合うことだろう。
でも、でもさ。本当に部室にあれば良いのだけど。。。なかったらどうしよう?
やっぱり道の途中で落としてしまってて僕が気づかなかっただけで本当はまだ落ちたままだったら・・・
そう考えると居てもたっても居られなくてまた来た道を戻り始める。
が・・・どこをどうしたらこうなるのか、
教室に戻るはずの道のり
前を見ないで下ばかり見て、
あっちにあるかもしれない。こっちかも??もうちょっと先?
とか探しているうちに・・・
「此処何処だろう?」
やっと、最近学校内で迷わなくなったというのに
此処は広すぎるから全ての場所把握なんてまだ出来るはずもなくて
覚えた場所から一歩はずれるとあら不思議。途端に方向音痴能力の発揮となってしまう。
「授業、はじまってるから誰かに聞く・・なんて出来ないし」
確か迷子になった時ってあちこち動き回っちゃ駄目なんだよね?
その場にじっとしてるのが一番?
でも判らない場所にじっとしてるのって難しいんだ
ついいろいろと動き回ってしまう・・・ということで今回もやっぱり動き回ってしまった。
「なんか、さらに知らない場所に来てるような気がする」
うーん・・・どうしよう?
もうちょっと進んでみる?
と、一歩踏み出した途端に
「にゃ!?」
なんだか間違って猫のしっぽを踏んだ時のような声が聞えた
もしかして本当に猫のしっぽを踏んでしまったのだろうか?
慌てて足どけて見てみると、そこには人間の手!?
「うわぁぁぁ!!!ごめんなさい!!大丈夫ですか?」
なんでこんな所に人の手が?なんてことに頭は回らず
とにかくひたすら謝っていたらクスクスと少し前にも聞いた笑い声が聞えた。
あれっ?
「不二先輩?どうしたんですか?」
「君こそどおしたの?授業は?」
「えーと、訳合ってサボりです」
サボリだなんていったら怒られるかな?と思ったんだけど
不二先輩は怒るどころか笑みを深くして小さな声で「僕達もだよ」と囁いた。
僕達”も”?
それは・・・この手の人でしょうか?
って、この人は誰?大丈夫かな?
さっきから全然反応ないんですけど・・・でもさっきの声はこの人のものだよね?
でもあの声、聞き覚えあるんだけど
「、オレに気づいてくれないのは寂しいぞ?」
そう言って手の人がムクリと起き上がった。
あぁ、聞き覚えあるのは当然。この人とも少し前までに会ってたよ
「菊丸先輩もサボリですか?」
「そうにゃ!こんな天気良いのに教室で授業なんか受けてらんないでしょ」
そう言って菊丸先輩は上を向いた。
つられて空を見上げてみれば雲ひとつない快晴
「そうですね。こんな日に教室にいるのは勿体無いですね」
「そうそう!だから不二とサボってたのさ!」
でもバレたらうるさいから手塚とか大石には内緒ね?
そういって”しーっ”と唇に人差し指立てる不二先輩に僕は笑って頷いた。
「言えませんよ。言ったら僕もさぼってたことばれちゃいますから」
「そりゃそうだ!」
あはははははと小さく僕達は笑いあった。
笑いが落ち着いた頃に不二先輩が座れば?と言ったので遠慮なく座って
僕達の間にのんびりとした空気が流れた。
「そういえばはどうしたにゃ?」
「何がです?」
「君がサボるなんて今までなかったでしょ。だからどうしたのかなって」
不二先輩の言葉に菊丸先輩もうんうんと大きく頷いていた。
「えーと、大事なものをなくしてしまって・・・それを探してたんです」
「大事なもの?」
「お守りなんですけど」
「それっていつも鞄につけてた奴かな?」
「そうです!!」
知りませんか?と身を乗り出した僕に先輩達は顔を見合わせた
先に口を開いたのは菊丸先輩
「あー、やっぱしあれはのだったんだにゃ」
どーりで見たことあると思ったんだよにゃ。持ち主分かってすっきりにゃ!
と一人納得してる菊丸先輩
「あのね、僕達が部室出る時に入り口の所に落ちてるのを桃が見つけたんだよ。
でも持ち主は誰だろうってことになって」
で、君こんなのを持ってたよねってことになって
でも、渡すにしても君はもう教室に戻ってたから、じゃあ、放課後に渡そうってことになってね
今は大石が責任持って預ってるよ
そう聞いて僕は安心して息をついた。
「安心した?大石ならあとでちゃんと忘れずに返してくれるよ。
桃だったら渡すの忘れたりとかまた落としたりとかしそうだけどね」
そう言った不二先輩に菊丸先輩も「その通りにゃ!!大石だから安心するにゃ」と笑った。
僕も・・・桃先輩に失礼だから笑っちゃいけない!と思いつつも二人の言い草に笑ってしまって
桃先輩ごめんなさい!!
と心の中で謝罪して結局は笑ってしまった。
「さて、の心配事もなくなったし、これで心置きなくサボりを満喫しよう!」
「どんな風に満喫ですか?」
「ここに寝転んで空を見上げること!」
「って英二が言ってるだけなんだけどね」
「なんだよぉ!!いーじゃん!空をぼーっと眺める時間も良いもんだよ?」
じゃあ、不二だけ起きてろ!!と拗ねる菊丸先輩に僕と不二先輩は笑って
そしてゴロンと寝転がった。
「あっ!?何一緒に寝転がってるんだよぉ!!オレだけのけ者にするなー!」
そういって菊丸先輩も転がって
その後は何も会話することなく本当にぼーっと空を見て過ごした。
なんだか気持ちの充電ができた感じ
さすがに2限目はさぼっちゃいけないと3人とも真面目に授業に出て、
教室に戻ると戻ってこない僕を心配してカチロー君とカツオ君が今から探しに行く所だったと言われた。
探しに出る所を丁度僕が戻ってきたのだけど
来なかったら2組に越前君や堀尾君の所まで行って探すのを手伝ってもらうつもりだったらしい
二人とも心配掛けてごめんね?ありがとう。
そして放課後、何故かは分からないのだけど僕と不二先輩と菊丸先輩が1限目をさぼっていたということが
しっかりばれていて10周走らされてしまった。
でも二人の先輩とはさらに仲良くなることが出来たみたいで、さぼったことは悪かったと思うのだけど後悔はしてない。
なんてことを手塚部長が知ったら走る回数増やされそうかな
あっ、お守りはちゃんと大石先輩に返して貰って無事手元に戻ってきました。
このお守りは迷子にならない為のお守りなんだけどたまには迷子になるのもいいものだって
教えてくれるために今日は姿を消してたのかもしれない。
とかちょっと都合の良い考えをしてみたり。
でもあのおじいちゃんなら言いそうかな?とも思って一人こっそりと笑った。
とにかくきっかけはこのお守りだよね。ありがとう