プール
「・・・・・先輩何やってんスか?」
暑い中校内マラソンを言い渡されてプール脇を通る時
チャプチャプと涼しげな音が聞えて、何の気なしに視線を向けてみると
そこには見知った人が気持ち良さそうに水の上に浮かんでいた。
「見て分からんか?」
「水に浮いてるように見ますけど」
「その通りだ!」
わかってるではないか!と豪快に笑う人に何を言っても無駄か
と呆れつつ、プールに近づいて改めてみている。
浮いているように見えたのは浮き輪に乗っていたかららしい
てか・・・・・・浮き輪?
「先輩、その浮き輪は一体どおしたんスか?」
「家片付いたら出てきてな。見つけたら久々に使いたくなったんだよ」
と、また笑う。
俺は暑い中走らされているというのに一人涼しくプールに浮かんでいる先輩を見るのはイライラする。
「リョーマ、んなイライラすんな。
暑さで機嫌悪くなっている君にはこれをお見舞いしよう!!」
何?と問う間なく顔に掛けられたのは・・・水?
見れば先輩の手には小さな水鉄砲
何が嬉しいのか「命中!」なんて喜んでいる。
「あー!!先輩何してるんスか!!!!」
後ろから叫びながら近づいてくる声に俺は手で耳を塞いだ。
「桃先輩、煩い」
「煩いとは何だ!煩いとは!!!」
「桃君、本当に煩いから少し静かにしよう」
ほらっ、先輩にも言われてるし
そしてさらに後ろから近づいてきた別に人物が通り際にさり気に「バカが」と呟いた。
そうなるとテニス部恒例となる桃先輩と海堂先輩の喧嘩が始まる。
俺は巻き込まれないようにさらにプール側に寄って二人から離れた。
「あの二人、また喧嘩開始かよ。」
本当に飽きないよなーと、呆れた声がして、振り向けば
先ほどまでプールに浮いてたはずの先輩がいつの間にかプールサイドに上がっていて、
俺のすぐ後ろにしゃがんでいた。
「あの二人が仲良くしてる姿なんて想像できないししたくもないからあれはあれで良いんじゃないスか?」
「まあ、俺だって想像出来ないししたくないけど・・・リョーマ冷たいぞ?」
「そうっスか?」
もうちょっと・・・なんていうかなー
ほらっ、と先輩が指差した方向には
大分へたれながらもようやく此処まで辿り着こうとしている堀尾達の姿。
けど、桃先輩達が喧嘩してる姿を見て「どうしよう!!」とかなんとか騒ぎまくってる。
「あそこまでとはいわないがあれの半分くらいの反応してみない?」
「イヤだ」
「だろうね」
あんな反応するお前の想像もできないししたくないよ
と、先輩は苦笑する。
なら最初から言わなければ良いのに・・・
「ところで」
「・・・・」
「そろそろうざくないか?」
「ですね」
「見てるだけで暑さが倍増しするよな」
それはもっとも、でも止めるなんて行為はさらに暑さが増すんですけど
どうするんですか?
と先輩を見上げると、先輩はニッと笑って俺に水鉄砲を差し出した。
水は線一杯まで入っている。
「リョーマは桃担当。俺は海堂担当・・OK?」
「OKっス」
んじゃ、せーのー
「桃先輩!!」
「海堂!!」
少し大きな声で呼べば二人とも取っ組み合いながらも顔をこちらに向けた。
その丁度向いた時、俺は桃先輩の顔に向けて引き金を引いた。
そして見事命中
は良いんだけど俺は命中したことよりも先輩の行動に驚いてしまった
桃先輩も、何か文句を言ってくるだろう状況にも関わらずやはり驚きで硬直中
そして海堂先輩、この人がこの中で一番驚いたことだろう。
皆が硬直してる中先輩だけが一仕事終えた後のようなすがすがしい笑みを浮かべて一言
「二人とも、頭冷やせ♪」
いや、冷やすのは先輩の方だと思います。
水鉄砲、俺に差し出すからもう一つもってるのかと思っていた。
が、実際は、
何処から取り出したのか、何処に置いていたのか。。。先輩が取り出したのは中くらいのバケツ
そこに水をなみなみと入れ、俺が引き金引いたのと同時に
バケツの中の水を海堂先輩に向けてぶっかけたのだった。
哀れ海堂先輩、上から下までずぶ濡れとなってしまっている。
とっくみあいをしていたということで桃先輩もかかって入るのだけど
海堂先輩に比べれば・・・な姿。
ようやく我に返ったらしい海堂先輩は無言で先輩を睨みつけ、バックには怒りのオーラを出している
が、先輩は少しも怯む様子はない
それどころかにっこり微笑みスッっと腕をあげある方向を指差した。
それはテニスコートのある方向
「お前らがこんな所で喧嘩してさぼってるから。。。コワーイ部長さんのお出ましだよ」
その言葉にその場にいた全員がテニスコート方面に顔を向けると
確かに手塚部長がこちらに近づいてくる姿が見える。
「さっさと練習に戻れ♪」
さらににっこり笑い手をひらひらさせる。
その様子に言いたいことは山ほどあるといった表情をした海堂先輩は一度きつく睨んだ後、
走っていった。その後に、桃先輩がまだ状況把握できていないといった表情をしながら
先輩に軽くお辞儀をして行ってしまった。
「リョーマ、お前もそろそろ戻れよ」
「先輩は?」
「俺はもう少しここで遊んでからいくよ」
・・・・・・・・・・・あっそ
バイバーイと後ろで手を降る先輩を無視して俺も練習に戻った。
練習に戻った俺達を待っていたのは手塚部長怒りの一喝といつものコース
にしても、何故先輩は水泳部でもないのに一人プールで遊んでいたのか
謎が残ったままのある夏の午後の話