その人のうた
「あっ、タカさん。音楽室の掃除だったっけ?」
「そうだよ」
「・・・お邪魔させてもらってても良い?」
「良いよ。机動かしたりしないからすぐに終わるしね」
「ありがとう」
音楽室に来てみたら、クラスメイトのタカさ・・河村が箒持って入り口に居た。
中を覗くと丁度掃除の時間にかちあってしまったみたいで。
声を掛けてくれたタカさんにお邪魔させてもらう許可を貰って中に入った。
俺に気づいた数人が声を掛けてくれて、俺もそれに応えて
そしてピアノの前まで辿り着いた。
邪魔になるんじゃないかな?とは思ったものの
タカさんの許可は得てるわけだし・・と、
ピアノの鍵盤のドの音を抑えて音を取る
軽く発声練習をした後に、視線を感じて目を開けてみると
タカさんを含めた掃除当番の皆が俺に注目してた
「・・・・・やっぱ邪魔だった?」
「そ、そんなことないって!!」
「そうそう、君の歌声に聞き惚れてたのよ!!ね?」
「そう!!そうなの!!」
「・・・・・まだ歌ってないんだけど」
発声練習してただけで聞き惚れられても・・・と心の中で呟いた声が聞えたのかどうか
一瞬辺りに沈黙が落ちた。
「えっと、じゃあ、どうぞ歌ってください!!」
「でもやっぱし邪魔になるんじゃ・・・」
「そんなことないよ!是非聞きたいな?」
駄目?といわれて断れるわけもなくて
やっぱし側に居たタカさんに顔を向けてみる
「1曲お願いしても良いかな?」
「わかった」
タカさんの言うことなら。。。と我ながらよくわからない理由で頷いて
俺は掃除の邪魔をしてしまったことの侘びを兼ねて心を込めて一曲歌う。
。。。最後まで歌いきって歌いきったことに深呼吸をして目を開けてみると
皆、ほけーっとした顔で俺を見てた。
「、それ今度のコンクールの曲?」
「そう、まだまだ練習不足なんだけどね」
「今の聞いただけでも入賞できるよ。頑張って!」
「ありがとう!!」
何故かタカさんにそういわれると本当に入賞できるような気がしてきたよ
期待に答えるためにもがんばるよ!!
と俺とタカさんが会話してたらほけーっとしていた他の掃除当番の人達も正気に戻ったみたいで
今度あるコンクール頑張れ!と激励の言葉をくれた。
それとか「の歌は好きだぞ!」とか言われたりして
そんなこといわれると滅茶苦茶照れて恥ずかしいんだけどやっぱり嬉しい。
照れる下向く癖がある俺は今もやっぱり下を向いてしまっている。
でも顔が真っ赤になってるの自分でもわかるしきっと耳まで赤くなってるだろうし
バレバレだろうなーとそのことにも恥ずかしいと思いつつそーっと顔を上げてみると
皆がニッと笑って
「頑張れよ!」
おその一言に嬉しくなって俺は
「おうっ!まけせとけ!」
と親指立てて応えるとそれを見た皆もう一度ニッと笑った後に掃除道具を片して部屋を出て行った。
「いつの間に掃除・・・」
「今日は何処も音楽室使わない日だからそこまで丁寧にやらなくていいからね」
タカさんの説明に俺はそうか、今日は水曜日だったか
と改めて曜日の認識をした。
「あれっ、タカさんも掃除終わったんだろ?部活に行かなくても良いのか?」
「うん、行くよ。ただね、俺達の我侭で歌ってくれたから”ありがとう”って言いたくてね」
それで残ったんだ。そう言って笑ってタカさんは改めて「ありがとう」と言った。
「いやっ!?そんな・・俺も聞いてくれてありがとう!!」
まだまだ練習必要のお粗末なものでしたが。。。
で、二人で”ありがとう”といいあって、そのことが可笑しくて笑ってたら音楽室のドアがガタガタなった。
・・・なんだ?
当番の誰かが忘れ物でもしたのか?
とも思ったけどあれからドアが開く様子がない。
でも不思議なんだけどドアの向こうには人の気配がするんだけど
何故だ?と頭に”?”を浮かべてたらふいにタカさんが動いてドアを開けに行った
いきおいよくガラガラとドアを引くと
「わっ!?」
「ちょっ!桃先輩重い!!」
「おチビー!!桃ー!!どくにゃぁぁぁ!!!」
「英二、大丈夫か?(汗)」
となだれ込んで来た男子生徒4人
「英二、桃、越前、大石・・・どうしたんだ?」
入ってきてから一人を除いた3人が言い合いを始めたんだけど
その顔を確認してかタカさんが全員の名前を呼んでる。
「タカさん、知り合い?」
「あっ、同じ部活なんだ」
へー。でもなんでこんな所にいるんだろ?
もしかしてタカさんが来ないから迎えに来たとか?
それだったら引き止めたのは俺ってことだよな。それは悪いことしたかも
とか考えてたらタカさんがその4人の側に寄って言って話を聞いてた。
ので、俺も耳を澄ませて聞いてみる
「大石、どうしたの?」
「いや、英二がどうしても此処に来たいっていうから」
「なんだよー、大石も乗り気だったじゃんか!!」
「あっ、俺も越前がどうしてもって」
「どうしてもって引っ張ってきたのは桃先輩の方」
「えーちーぜーんー!!」
「ちょっ!?桃先輩の手で口塞がれたら窒息するので止めてください!!」
「こらっ、越前に桃、ここで騒ぐな。。。英二も!!」
「「で、一体何しに来たんだ?」」
あっ、思わず俺とタカさんの声がはもってしまった。
でも仕方ないかもな。この調子だといつまでたっても聞けなさそうだしな
けどいった途端というか、その入ってきた四人の目が一斉に俺の方を向いた。
なんだ!?俺何かしたか??
「さっき、歌ってたのは・・・」
「俺だけど」
「無茶苦茶上手かったにゃ!!」
「上手いもそうだけど綺麗な歌声だったよ」
「あ、ありがとう」
うわぁぁ・・知ってる人に言われるのもそうなんだけど
知らない人にそうやって褒められると余計に恥ずかしくて嬉しい
俺は頭に手をやって何度も「ありがとう!」といっていたらふいに制服が引っ張られて
そちらの方を見てみると
えーと、確か”越前”だったか?と呼ばれてた奴が俺をじっと見てきた。
「何?」
「もう一曲なんか歌って」
「俺が?」
「他に誰がいるの」
「越前、先輩にその態度は・・・」
うわぁ、後輩なのに態度でかいなーとか思いつつ、やはり気になったのか注意しようとしてたけど
それを制して俺はその越前に口を開いた。
「下手だけど。それも良いの?」
「良いからいってんじゃん。で、歌うの?歌わないの?」
なんか面白い子だなぁと思って
ふっと越前から残りの3人とタカさんの方に顔を向けると
・・・・・・・・・なんか期待に満ちた目をしてませんか?
本当に本当に下手ですけど・・・それでも良いんですか?
後で気分悪くなったといっても責任とらないからな!と何度か念を押してから姿勢を正して深呼吸した。
突然の乱入者達の為に。。。。。。