ダンス
窓から入ってくる気持ち良い風に眠気を誘われてうつらうつらしてる俺の頭に衝撃が襲った。
その衝撃ですっかり眠気はすっとんでしまい、何事かと目を開けると
そこには人の悪い笑みで俺を見ている英二の姿。
その手には丸められた紙束を持っていた。
「英二、何のつもりだよ」
恨めしく上目遣いしながら睨みつけると
「居眠ってるが悪いのさ」
と全然悪気なくそして楽しそうに答える。
「・・・・で、何だ?」
「その様子だとさっきまでの話全然聞いてなさそうだね」
「不二、話って?」
「アレ」
そういって指差して示された方に顔を向けて、俺は固まった。
「マジ?」
「「マジ」」
英二と不二は神妙な顔して頷いた。
今の時間は一ヵ月後に行われる体育祭の説明で、学級委員長が前で説明している。
その後ろの黒板に書かれた言葉
それに俺は固まってしまったのだ。
そこには大きく『フォークダンス』と書かれていた。
「なんであんなもんを」
「恒例、らしいよ。去年の3年達もやってたでしょ?」
そういえば、やってたような気がする。
まあその時は関係ないとばかりに全然見てなくて近くにいた奴らとしゃべりまくってたのだけど
「誰だよ、あんなのを恒例にした奴」
やってられねーと机にばたりと倒れ伏すと
「そこの3人、話を聞けー!!!」
と学級委員からお叱りの声が飛んできた。
渋々身を起こして、悪かったと、ちゃんと話聞くからと愛想笑をしてみたりして、
そしてその後しばらくは真面目に委員長の言葉に耳を傾ける。
「で、1クラスが1グループとなります」
前後の話は聞いてなかったのでわからないが、委員長がそう告げた途端
クラスの大半の女子が手を上げた。
そのうちの一人が指名されて
「それは相手はクラス内だけに限定ということですか?」
「そうです。」
委員長がそう答えた瞬間
女子全員がこっちを見て”よしっ!”とガッツポーズをとるのが見えてしまった。
「怖っ!?」
「あははは、すごい気合入れだね」
「そだね〜」
おい、不二に英二、何をそんな暢気に構えてるんだ?
女子が気合入れしたのはお前らが原因だろうが!!
俺の心境なんておかまいなしで二人は楽しそうに笑ってたりする
「なんで二人ともそんな楽しそうなんだよ」
「別に楽しいというわけではないけど」
「ただ踊るだけじゃんね?」
「そのくらいなら別に、ね」
そういわれて、まあ確かに踊るだけだしな。
それも知らない女子とじゃなくてクラスの女子だけなわけだし
まあこれくらいなら良いか
気合入れしてたからといって、押し合いへし合いで詰め掛けてくるわけじゃなく
順番に相手が入れ替わっていくだけのものだしな
それに!もし詰め掛けてくるにしても不二や英二限定だろうしな
なら、いっか♪
と、窓の外に視線を移そうとしたその時、委員長の恐ろしい言葉が耳に入ってきた。
「ただうちのクラスは男子の方が女子より二人程多いので、誰か一人女子役の方に回ってもらおうと思うのです
が・・・」
それを聞いた時、俺はまあ、関係ないだろうと聞き流そう、としたのだが
急に俺の前後の奴が勢いよく手を上げて
「「を推薦します!」」
・・・・・・・・・・・・・えっ?
何を言われたのか飲み込めなくてボケた反応をしてしまう。
が、その間に勝手に決められていく。
「今推薦がありましたが他に意見ある方は・・・いるわけないですね。
ということで決まりです。皆さん、の勇姿を期待しましょう!!」
その瞬間クラス中から拍手が起きた
・・・・おいおいおいおいおいおい!!
この頃にようやく今起きていることが脳に届いて俺は慌てた
「ちょっと待て!!俺の意思はどうなるんだよ!」
「ない」
「待てぃ!なにをそんなにあっさりと」
「」
「何だよ」
いやに真剣な目で俺を見てくる委員長に俺はたじろいだ。
「あの二人・・・いや、一人に逆らえる者がココにいると思うか?」
そういって指差した先にいるのはその顔にニコニコと笑顔を湛えている・・・
「いない、な」
「ということだ。」
「・・・・だからといって納得することなんてできるか!」
もしここにちゃぶ台があったとしたらおもいっきしひっくり返しているであろう勢いで立ち上がって抗議する。
が、
「多数決で決まったことだ」
「多数決なんてしてねえじゃねえか!勝手なこというな!」
「、わかってないな」
「何がだよ」
鼻で笑う委員長に俺はつっかかるがそれをあっさりかわしてクラスに尋ねた。
「が女子役というのに反対の者」
その声にクラスが異様なくらいに静まり返る
「賛成の者」
その瞬間、割れんばかりの拍手が響き渡った
「ということだ」
「・・・俺の、意見・・・・」
「諦めろ。多数決は数の暴力だ。少数派切捨てバンザイ。ということでこの話は終了」
終了、その声と共に皆、残り時間を思い思いに過ごそうと寛ぎ出している。
その中俺はというと、委員長の言葉に呆然とつったったままで
そんなに俺にクラスの奴らが「頑張れよ!」とか「楽しみにしてる!」とか
「当日頭にリボン付ける?」なんて恐ろしい言葉を掛けてくる。
最後に、俺の両肩を前後からがしっと掴む4本の腕、そして
「「頑張れ♪」」
俺を女子役に推薦した二人が
これ以上にないというくらいに面白がっている声に俺はその場に沈没した。
この日から一ヵ月後の体育会本番
3年恒例のフォークダンスでやたら笑顔を振りまきヤケになって踊りまくる俺の姿が見られ
後にばっちし写真に収められ売りに出されることになったなんてことがあったとか、なかったとか