「あー、降り始めてきた」

今にも降り出しそうになってた空を眺めていると

やがてポツリポツリと降り始めた。

「朝、天気予報では降らないっていってたのにな」

だから降るだなんて思わなくて傘持ってこなかったのに、と溜息をつく

「どうしよう・・・・部室に置き傘してあったっけ?」

確かおいてあったはずなんだけど、と考えて再び溜息が出た。

今日は放課後の練習はなし

だから置いてあったとしても部室の鍵が閉まってるから取りにいけない。

もっと早くにわかっていれば大石先輩に鍵でも借りにいけたんだけどな。。。

帰りのHRが長引いて、さらにその後の掃除もなかなか終わらなくて

今の時間じゃとっくに帰ってしまってる。

こうなったらまだ小降りの内に走って帰ってしまった方が良いだろうか?

・・・・・・・よしっ!!

と決めて走り出そうとしたその時、

「何やってんの」

急に声を掛けられて思わず飛び上がってしまった。

「ぎゃ!?」

「何怪獣みたいな声だしてんだよ」

「あっ、越前君」

いつの間にか僕の横に並んで立っていたのは同じ部活の越前リョーマ君だった。

「えーと、越前君はこんな時間までどうしたの?」

”こんな”というけれど部活がある日にくらべたら到底帰るには早い時間。

でもない今日は、校舎に残ってる生徒もわずか、そういった時間だった。

「担任に呼ばれてた」

それを聞いて僕は今日の朝堀尾君が話してたことを思い出した。

それは確か、あまりに授業中居眠りばかりをしてた越前君を腹に据えかねた先生が

呼び出しを掛け様としているらしい、といったそんな話。

越前君は1年でレギュラーだから僕達に比べると比べ物にならないくらいハードな練習をしている。

だから疲れて居眠りしてしまっても仕方ないよねと、僕はその時思ったんだけど

そうか、とうとう呼び出されちゃったんだ。

なんて言おうかと悩む僕に顔は前を向いたままの越前君が目だけをこちらに向けて

「そっちは?」

と聞いてきた。

「僕?」

「そう、はこの時間まで何してたの」

「僕は、HRが長引いて、おまけに掃除まで長引いちゃってこの時間なんだ」

「ついてなかったんだ」

「越前君もね」

お互いついてなかったね、と言い合って、思わず笑いがこぼれた。

「そういえば越前君、傘は?」

「・・・忘れた。」

「そっか、僕もなんだ。部室に言ったらあると置き傘があると思うんだけど」

どうしようか?と二人玄関口で並んでいつの間にか本格的に振り出していた雨を眺めた。

「おいっ」

再びまた違う声に呼びかけられてまたもや身体をびくっとさせる。

と、どうやら僕が驚いたことに向こうも驚いてしまったみたいで、その後の反応がない。

どうしようか?と思っていたら隣の越前君が声を掛けてきた人に声を掛けてた。

「海堂先輩、ちーっス」

えっ、海堂先輩?

振り返ってみてみればそこには本当に海堂先輩がいた。

「海堂先輩、こんにちは。先輩も今帰りですか?」

「・・・あぁ」

ぺこりと挨拶して、海堂先輩の手にしっかりと傘が握られてるのを見た。

さすが、ちゃんと用意してたんだと感心してしまう。

あっ、もしかしてさっき声掛けたのは出口を塞いでしまっていた為だろうかと思い至って僕は一歩後ろに下がった。

「先輩、さようなら。」

と再び挨拶して頭を上げた僕の目の前に傘が差し出された。

「えっ?」

「使え」

「えぇっ!?」

「忘れたんだろ」

「はい、それは、そうですけど・・・」

けどその傘僕が受け取ってしまったら先輩はどおするんですか?

と声には出さず目で尋ねると先輩は何も言わないで今度は越前君に傘を無言で渡す。

それをまた越前君は無言で受け取って、

何を言う間もなく先輩は雨が降る中を走って行ってしまった。

「海堂先輩!?」



慌てて追いかけようとした僕を越前君がひきとめた。

「あっ、越前君。海堂先輩の傘・・・」

どうしよう。。。先輩が濡れてしまうと言おうとした僕の目に映ったのは

海堂先輩から渡された傘を差して帰ろうとする越前君の姿。

でも、玄関の屋根から出る所で立ち止まって、僕を振り返って

「帰らないの」

「えっ?」

「”二人で差して帰れって”」

越前君の言葉に僕は走って行ってしまった方を見た。

「海堂先輩はちょっとくらい濡れて帰っても大丈夫。」

鍛え方が違うからね

そう言われて”確かに”と思った。

海堂先輩は普段から自主トレとか他の人では真似できないくらい頑張ってるから

「納得した所で、帰らないの?」

再び越前君に言われて僕は今度は素直に越前君が差した海堂先輩の傘に入った。

「海堂先輩、優しい人だよね」

「それはにだけ。でしょ」

「そんなこと、ないよ?」

「そう思うのはだけ。」

そう言われて、その言葉は納得できないなと思う。

本当に優しい人なのにね?

明日、朝会ったら一番に”ありがとう”と”先輩の傘のおかげで濡れずにすみました”と言おうと心に決めた。

そんな、ある雨の日の帰り道

 

 

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