ショーウインドウ
「・・・・また来てる」
「何が?」
「何でもない」
客のいない店のカウンターで頬杖して外を眺めてると
最近、よく見るようになった姿がちらちらと視界に映った。
「ちょっと出てくるけど後よろしくね。お客さんが来たらそんなだれた態度とらないのよ?」
「りょーかい」
裏口から出て行く店主に顔を向けずに手をひらひらさせて
俺はまた店の入り口から中を覗いてる奴に目を向ける。
あれは、俺が見てるとは気づいてないな
そう思うと苦笑が漏れた。
「毎日毎日外から眺めて。。。そんなに気になるなら中に入ってくれば良いのにな?」
あまりに退屈だから入ってきたら話し相手くらいなってやっても良い。
サービスでお茶を出してやっても良いか?
そんなことを考えて、足元に擦り寄ってきたモノに気づいて頭を撫ぜてやった。
気持ち良さ気に目を瞑って懐く相手にさらに撫でてやって
なんとなくまた外にいる奴に目を向けると
いつもの奴とさらもう一人増えていた。
どうやら知り合いみたいで楽しそうに笑い合いあっている
その間にも目はちらちらと店の中に向けられていて、釣られたようにやってきた奴も中を見て
目を輝かせているのが見えた。
「よしっ」
何が”よし”なのか分からないが俺はカウンターから立ち上がると店の入り口に歩いていった。
ドアに手を掛けて中に引いて
「よおっ」
いきなり声を掛けられたそいつらは眼を丸くして固まっている。
「中にも可愛い奴がいるぞ、見て行くか?」
聞いた俺に、ちゃんと言ったこと聞えたのか?と聞きたいくらいの時間が空いた後
毎日通ってた奴がいきなり目をキラキラ輝かせ出した。
「見てって良いの!?」
嬉しそうに尋ねてくるそいつに苦笑しつつ
「だから誘ったんだろ?」
その言葉にそいつから「やったにゃ!!」と飛びつかれて、
「英二、いきなり飛びついたらダメだ!!」
と、どうやらこの猫語を使う英二とやらの友達が慌てたように飛びつく奴を抑えようとして
何故かバランスをくずし、倒れかけられた俺が二人分の体重を支えられるわけもなくて店の中になだれ込んでしまった。
こうやって俺は青学に通う菊丸英二と大石秀一郎と知り合いになった。
「さーん!!今日も来たにゃ!!」
入り口のドアにかけられてあるベルがカランカランと盛大な音を立てて菊丸が入ってくる。
その後ろからは失礼しますと遠慮がちに菊丸の友人の大石も顔を覗かせた。
あの日から菊丸は毎日通ってくるようになっていた。
「おー、来たか」
俺はカウンターの中から声だけ掛けるとやりかけていた仕事に戻る。
俺が相手しなくても相手となる奴ならこの店にたくさんいるからな
そう思う側で菊丸の歓声が聞えた。
「にゃぁぁ!!さん、この子新入り?」
その声に顔を上げる
「あぁ、今日来たんだ・・・・出しても良いぞ」
言うなりさらに歓声を上げて菊丸が、新入りのケースのドアを開けた。
「あの、さん。良いんですか?」
「良いって良いって、あんなせまっちいケースの中にいたらそれこそストレスたまって毛並みが悪くなっちまうだろ」
それに少しは人間に慣れといた方が良いんだよ
・・・・・・・・・・多分。
最後に小さく呟いた言葉に大石は苦笑する。
「大石は見なくて良いのか?」
今回は特に良い顔した奴が入ってきてるんだ
と、足元にあったケースを大石の目線まで持ち上げた。
「どおだ?」
「可愛いですね」
「だろ?」
そうなんだ。こいつが今回の目玉なんだよ!!
とそいつの可愛さに唸る俺にまたもや苦笑しつつ
「さん、動物好きなんですね」
「当たり前だろ。」
じゃなきゃペットショップの店員なんかやってるかよ
と二人して笑った。
「にゃ!?大石にさん、何笑ってるにゃ?」
新入りの子犬を腕に抱えたままひょこひょこと菊丸がカウンターまでやってきた。
「あー、お前とそいつが入れ替わってても気づかないだろうな。と話してたんだよ」
な?と大石に言うと、困った顔で笑うばかり
「それってどーゆー意味にゃ!!」
「そのまんまだな。お前猫語しゃべるし、わかんねーぞ?」
「そんなことないにゃ!!」
「どおだか」
俺の言ったことにいちいち反応して騒ぐ菊丸に宥める大石
この二人がこの店に来るようになって退屈なカウンターの仕事は楽しいものと変わった。