髪の毛






、髪大分伸びたね」

忘れた宿題を必死にやっている俺の前の席に座った不二が

すっと俺の前髪に手をやった。

「不二・・・邪魔してる?」

「そおゆうわけじゃないけど、邪魔じゃない?」

「うん。お前の手がね」

「ごめん」

手を引いて謝る不二に「あと少しで終わるから待ってくれ」と言って

最後の難問を解く。

「終わった!!」

「お疲れ様。でも今度は忘れないようにしようね」

「おうっ」

不二の言葉に俺は力なく頷く。

でもなー、忘れようと思って忘れたわけじゃないから難しいよな

「忘れそうならノートか何かに書き留めておけば良いのに」

書かないから忘れるんだよ

その言葉に俺は再び頷いて・・・

「そういえばさっきなんだって?」

の髪伸びたね。って」

「あぁ」

そういえば伸びたかも・・・と自分の前髪を一掴みしてまっすぐ伸ばす。

「目に入りそう」

「切らないの?」

「今日帰ったら切る。。。忘れなければ」

「自分で切るの?」

「前髪だけ切りに行ってお金取られるのはもったいないからな」

後ろはまだ切る程延びてるわけじゃないからな

俺の言葉に不二は少し考えるようにして、

「あのさ、僕に切らせてくれない?」

真面目な顔して言われた言葉に俺は思わず頷いてしまった。

そして3−6に簡易美容院が誕生

俺は自分の席に姿勢正しく座って

不二は俺の前に立って片手に挟みを持って真剣な顔して立ってる。

そんな俺達の姿にクラスの皆が何事かと注目していた。

けど俺達はそんなことは全然気にしてなくて

「一度やってみたかったんだよね」

「俺は実験台か」

「そおだね。でもどうせ切るんだから良いでしょ?」

「変にするなよ?」

「例えば?」

「斜めにするとか山ギリカットとか」

「そんなのしないよ」

俺の言った切り方に不二は笑って答えた。

「じゃあ、切るよ」

「はいよ」

”切るよ”の言葉に俺は目を閉じて。。。なんとなく息まで止めてしまう。

、息まで止めなくて良いんだよ」

「わかってるけどなんか条件反射」

「じゃあ、の息が止まってしまう前に切り終わらないとね」

「頼むよ」

俺の生死は不二の手に掛かっている!てのは大袈裟だけどさ

で、やがて慎重に鋏の切る音が聞えた。

そして切られた毛が俺の顔にかかってこそばい

が、動いたら変に切られてしまうかも!という気持ちでこそばいのを必死で我慢した。

、凄い顔」

「こそばいのを我慢してんだよ」

「あぁ、顔にかかっちゃってるね。ごめん」

「いいってことよ」

それよりさくさくっと終わらせてちょーだい

そしてまた鋏の入る音。

目を瞑ってるのだけど不二が真剣に見てる目が見えるようだった。

で、俺的には30分以上じっと我慢で目を瞑っていたように感じていたのだけど

「はい。終わったよ」

不二がそういって、目を開いて時計を見てみればまだ10分くらいしかたってなかった。

「どお?」

聞かれて俺は前髪を掴んで真っ直ぐ伸ばして

「目にかからないようになったな」

全体像はわかんないけど・・・そう言うと不二は後ろを振り返って

今だ俺達に注目してたクラスメイト達に「誰か鏡貸してくれないかな?」

そう言うとすぐにクラスの女子が鏡を貸してくれた。

で、それに自分の顔を映して見てみる。

「んー、悪くないな」

これなら俺が自分でするよりも上手く揃ってるな

不二、なかなかやりますな

「そお?」

「ん。ありがとう」

「どう致しまして」

お互いにっこりと微笑みあって・・・・・

なんとなくほんわかした空気が流れるクラス。そこに

「たっだいまー!!!」

元気な声が飛び込んできた。

それはもちろん英二の奴で。。。「大石に教科書借りてきたよ!」と俺達の席までやってきて

そこでやっとクラスの空気に気づいた。

「にゃ?皆どしたの?」

「なんでもないよ」

「んー?」

納得してないような顔でクラスを見回した後、英二は俺の顔を見て・・・

びっくりしたように顔を近づけてまじまじと見てきた。

「なんだよ」

・・・髪切った?」

「何で?」

「さっきまでと急に雰囲気が変わってるから。切った?」

「今不二に切ってもらった」

「やっぱし!!そっちの方が良いにゃ♪」

ニパッと笑う英二に俺は「ありがとう」と言った後、もう一度不二に感謝の言葉を述べた。

「不二、ありがとな」

「また伸びたら切らせてね」

「前髪担当?」

「そう、専用でね」

「んじゃ、次もよろしく!」

「まかせといて!」


そんなほんわかしたある日の休憩時間

 

 

戻る