ヨーロッパコウノトリ
2000年7月18日から27日の10日間、生物部の生徒たちとともに、コウノトリと自然環境について調べるためヨーロッパを訪れた。
ヨーロッパコウノトリはドイツ、オーストリア、フランス、スペインなど、ヨーロッパ各地に生息する。個体数は減少傾向にあり、様々な形で保護されている。日本のツバメのような夏鳥で、春ヨーロッパ各地に渡り民家の屋根などで繁殖活動に入る。そして、8月中旬になるとアフリカに帰る。
寒冷地の自然は熱帯や亜熱帯に比べて一般的には過酷で、生物の種類や量が少ない。しかし春の訪れと共に一斉に生物が現れる。このような時期だけ、ここで過ごすことができれば、天敵も少なく、豊富な餌にありつけることになる。コウノトリの子育てには、たくさんの餌が必要で、東アジアのコウノトリにとっては、ロシアのアムール川流域などはその要求を満たしてくれる場所となる。
日本のコウノトリが、定住する大きな理由は稲作にある。5月から6月、日本列島には広大な湿地帯が形成され無数の生き物たちで満ちあふれる。カエル、ドジョウなどの豊富な餌によって子育てが行われる。ヨーロッパコウノトリにとって、畑作中心のヨーロッパの自然はどのような形で餌を供給しているのだろう。今回の旅行で確かめてみたかったことの一つである。
ルーシュタット(ドイツ)のコウノトリドイツの首都ベルリンの北、エルベ川のほとりにある小さな村、ルーシュタットは、淡い緑の中に土色の屋根が見事に統一されて、まるで絵画のように美しい。
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村長のハーパーさんによると、今年は70〜80個体は来たようだ。
あっ、屋根の上。コウノトリだ。ほんとうにいるんだ。飛んでるよ。いつか豊岡でもコウノトリが空を飛ぶのだろうか。


屋根の上のあちこちに大きな巣がある。屋根は糞(ふん)で白く汚れている。7月の下旬はちょうど巣立ちのとき。この日、幸運にも今年初めての若鳥の巣立ちに立ち会えた。

畑作地帯のコウノトリは、原っぱを歩き、餌(えさ)を探している。川にもやってきて、漁師さんが雑魚を捨てるのを待っていた。

エルベ川の河川敷きは広く、堤防から見る風景は円山川に似ていないこともない。枝が何度も折れたり切られたりしているのか、ヤナギの木が太い。ここは自然保護区となっており、レンジャーが常駐している。ここにはビーバーも住んでいる。春になると雪解け水で増水し、洪水となることもある。北海道より北に位置するルーシュタットの冬は厳しく、雪解けとともに生き物たちが一斉に活動をはじめる。

ヨーロッパは畑作中心の農業だ。広いコムギ畑が続き、農道が走る。トウモロコシ、ジャガイモ、ナノハナ、ヒマワリなどの作物も栽培され、牛の姿も見られる。ここでの農業は農薬の使用や有機栽培などの面で制約があるが、農作物は安全性が高いので離乳食などに優先的にまわすようにルートが確立されているという。

ルーシュタットはドイツでも有数の過疎の村。老人が多く、年金や自給自足の生活。近くにはビュッテンベルゲンという市がある。市役所の塔の上から眺めた町並みが美しい。
村の小さな博物館で、ヨーロッパコウノトリの生態や環境について解説を聞いた。餌は、ミミズ、モグラ、ネズミ、昆虫、魚などで、子育ての初期にはミミズが重要だという。私は、ほんとにミミズなのかと何度も聞き返した。ミミズが日本の水田のドジョウのように大量にいるのだろうか。
ルーシュタットは日本の北海道よりかなり北に位置する。ここでは冬から春にかけてエルベ川にそって湿地帯が形成される。この湿地帯には、ガン、ハクチョウなどが5000羽近く渡ってくる。
春、雪解けが始まるとエルベ川の水位はさらに上昇し、水辺ではカエルなどの産卵が始まる。さらに、周辺の畑に灌漑用水が引かれると、地下水位は上昇し、畑や原野では生き物たちが一斉に地表に姿を現す。こうして地表に現れたおびただしいミミズをコウノトリは子育てに利用している。エルベ川から水を引くとコウノトリがやってくる。ミミズの他に、昆虫の幼虫や成虫、畑作地帯にたくさん住む野ネズミ、浅瀬に産卵に来るカエルや魚も餌となる。
ルーシュタットは畑作地帯で、ムギ、トウモロコシ、ジャガイモ、ナノハナ、ヒマワリ、が目に付いた。広い麦畑の片隅にウシ、ヒツジがいる。各農家の庭先にも野菜や家畜が飼育されている。若者は少なく過疎が進む。老人の収入は年金と自給自足。村長さんは、できるだけその土地のものを食べるようにしているという。
ここは自然保護区となっていおり、ここでの農業は制約を受ける。自治体と農家が定期的に話し合い、有機農業、農薬をできるだけ使わない農業を展開している。もちろん補助金は大きな役割を果たしているし、自然保護区のウシは、安全性が高いということで、離乳食の工場へと特別の販売ルートも確保されている。「自然を守ることを考えている。我々は利益だけではない。」と農家の人は話してくれた。この村では電線はすべて地下に埋められている。この自然保護区ではルーシュタットにレンジャーが5人、事務員が7人いる。となりのレンツェンにさらに4人のレンジャーがいるという。次はルスト(オーストリア)です。