シリーズ太田省吾の世界 その1
飛  翔


る、散る、春散る、枯れる春

る、散る、春散る、垂れる春

る、散る、春散る、折れる春


 
生物故…生物だから…他に言いようがない。
鳥たちは、目で見たんじゃとうてい未だ夜と区別のつかない時刻にチーチーやりだす。
…アサガオにしてもだ…花をひろげる。…すると、朝が、たしかにやってくるのだ…その逆じゃない。





#1『小町風伝』

 

お前は、日々の生活というものをなめていたから、だってお前、そうとしか考えられないじゃないか。
いいか、お前、「暮らし」という字と「墓」という字が似ていることに注目しなければならんのだ。



#2『吃音とアクビ』

男 「…ぼくが、近寄って臭い…と思ったら…はっき…はっきり言って…ください。」
女「ううん、だってどんな。」



…ぼく…せっぷ…せっぷ…接吻したい。





#3『夢のシャケ』



女「あんな目できないわ、すごい目よ。…ずっと遠い海から追っかけてきて、河の流れに逆らって必死に追いかけて、
成功するのは一匹。二匹は精子をかけ損なうの。」
男「シャケだぞ、俺も。…シュー、シュー、シュー…ブルルン、ブルルン…」





#4『宇宙の力』





男1「お前、今、やさしいか」
男2「…?」
女「…も一度。」
男1「やさしいか、今、お前」
二人「…」
男1「…な、抱いてもいいかな。」
女「どうしたの。」
男2「どうしたんだ。」
男1「だから、抱くんだよ。なにもしやしないよ。…ほら、ただ宇宙がな、こう…な、そのせいなんだ。な、わかるだろう。さみしくなったんだ。」








#5『風の娘』



みんな、みいんなやりました。…暗がりで安心したり…畳がひんやり…猫の尻尾のように後悔をくねらせたり…
淋しいよと思ったり…さもしいよと思ったり…まあいいさと笑ったり…桶を洗ったり…お乳を洗ったり…お乳を抱いたり…
父と河原で話したり…花を摘んだり…ハナをかんだり…スモモをかんだり…おがんだり…かがんでみたり…鏡を見たり…
憎しみをこめてみたり…愛をこめたり…米をといだり…包丁を研いだり…疱瘡にかからせたり…妄想にかかったり…もうたくさんよと思ったり…
洗濯物をしぼったり…子供をおぶったり…ぶったり…やがて子供にぶたれたり…




エピローグ


女 「ねえ…」
男 「うん?…」
女 「あたし、死ぬ、のよ」
男 「え…うん」
女 「いつかね」
男 「うん、わかってるよ」
女 「死ぬと、骨になるの」
男 「うん…。死ぬと、焼くんだ。焼くと、とけるからな、色んなものが。で、残るのは骨だけだ」
女 「消えるのね、あたし」
男 「そういうことになるな」
女 「それが、死ぬってことよ」
男 「それが、死ぬってことだ」