「U・フィールド」について

                                            宇野邦一(フランス文学者)



 「なぜ劇行為が、ある人間にとって必要とされるのか。彼の棲むこの世界は、どうやら多様で膨大な抑圧の手をひろげている。」

こんどの公演の台本に、井上弘久が太田省吾の一文「役者の背中」から引用した言葉である。

いま、この「抑圧」という語の感性を不思議に思う。

この言葉がさかんに使われた時代があるが、いつのまにか影を潜めている。誰も抑圧がなくなったとは認めないだろう。


反対に抑圧だらけで「抑圧」の意識さえも抑圧されているということだろうか。

そういう事態に、演劇も無縁ではいられない。

太田さんは劇団の仲間の背中に見えた「抑圧」について実に繊細に語った。

この繊細さは、U・フィールドの特性でもある。

いわゆる劇的な事件を次々繰り広げるよりも、出来事の前と後の繊細な時間へのこだわりがその演劇のモチーフになってきた。

それは日常における恥ずかしさ、ためらい、脆さを劇空間において掬い取る実験であり、

かつて太田省吾が無言劇にまで切りつめて凍結した演劇の言葉を、注意深く解凍するかのような道を、

U・フィールドは歩んできたと思うのだ。