どうやって手に入れるか

 はじめに

 いい(まともな)楽器を手に入れるのは、パイパーを志す人にとって最初のハードルであろう。
 この楽器は製作者から直接買うのが普通。輸入代行をしてくれる業者も無いわけではないが、どのような楽器を仲介してくれるかは分からない。また、当然割高になることは覚悟しなくてはならない。
 NPUは、メーカーのリストを出している。ただし、保証はしていない。プラクティス・セットでも10万円程度(フル・セットは40万円以上。現在知っている最も高額のパイプは、12,000ユーロ)と決して安くないので、実際にパイパーから、できるだけ新しい情報を得ることが必須である。信頼できる筋からの口コミ情報に頼るのが無難である。また、この楽器は、ベースにしたモデルによって、音色や音量が異なる。自分の好みや目的と合致するかどうか、できれば現物を見るなり持っている人の意見を聞く方がいい。
 どのメーカーがいいかと聞かれることがあるが、答えるのは非常に難しい。いつでも、誰に対してでも同じ品質の楽器を作ってくれるかどうか分からないからである。他の楽器をやっている人は、そんな馬鹿なと思うかもしれないし、私自身実際そう思った。しかし、現実である。
 楽器を選ぶ際、注意すべきことは自分の体に合っているかどうかである。つまり、ふいごとバッグをつなぐ管の長さや、バックからチャンター迄の長さ等が体に合っているかどうかが重要である。製作者に会って注文するのがベストと思うが、メール・オーダーの場合、最初はとりあえず購入し、その後、自分で調整するか、メーカーに自分の体に合うよう各部品を作り替えてもらうしか方法はないようである。
 バッグは後から交換可能である。素材はいろいろあり、縫製にも手縫いと鋲留めとある。気になる場合は、オーダーの際確認した方が良いと思う。なお、NPUのリストには載っていないが、ハイランド・パイプのバッグを専門に扱っているメーカーの中には、イリアン・パイプのバッグも作っているところがある。注文する際にはサイズ、特にチャンター・ストック取り付け位置の径を確認する必要がある。
 もう一つ重要なのは、パイプ・メーカーがまともなリードを作れるかどうかということである。きれいなパイプは作れても良いリードを作れないメーカーは沢山ある。楽器に合わせたリードを作ってくれる人もいるにはいるが、基本的に、あるメーカーのチャンターにあうリードは、チャンターを作ったメーカーのリードだけである。
 楽器は受注生産がほとんどなので、人気のある製作者のものを手に入れるには、新品の場合何年も待たなければならないようである。中には在庫を持っているメーカーもあるが、比較的納期の短いメーカーでも、ハーフ・セットで半年くらいは待たされる。しかも、約束の期限にはたいぶ遅れるのが普通のようである。最近、ある映画・ショーの影響で、イリアン・パイプに限らずフルート等アイルランド音楽の楽器の需要が急増し、価格も納期も大幅にアップしているようである。
 楽器のメインテナンスは、初心者では解決が不可能なことが多い。特に、一番時間を取られるのはリードの調整で、特に日本のように四季があり日によって湿度、温度が変わる地域では練習の最初はリードの調整で始まるといっても過言ではない。多くのパイパーを志す人々が、まともに鳴らない(調整出来ないから鳴らない)リードを罵りながら挫折していったか、数知れない。独学の場合、まず最初にまともに鳴るチャンター・リードを作ることが出来るメーカーを選択することが必要と言える。

 ピッチ

 セッションなどで使うならDということになるが、C#以下のフラット・セットの音色も魅力的である。
 ただ、自分の身体的な条件、つまり手の大きさや握力などによる制約もある。

 海外への送金方法

 パイプはほとんど個人売買なので、直接製作者に送金することになる。一番安全かつ安上がりなのはクレジット・カードである。注意すべきは、相手が送ってこないとき、カード会社が面倒を見てくれるのは半年くらいまでということである。しかも(どちらも)誠実に対応してくれるかどうかは分からない。
 次に手数料がかからないのは、郵便為替(Postal Money Order)である。残念ながらアイルランドには送れない。住所あて送金・口座あて送金・口座間の振替がある。詳しいことは郵便局に問い合わせられたい。
 上記で送金できなければ、銀行の送金小切手(Bank Draft)を使うしかない。手数料は一番高い。しかも、受取人も手数料を支払わなければならないので、もう一度送金するはめになることもある。私の経験では、送金額の2%くらいは覚悟しなくてはならないようである。銀行用語では、窓口で対応するような客は「ゴミ」というそうである。M銀行S支店で送金小切手を作ってもらった時、生まれて初めてあからさまにゴミ扱いされた。
 送金小切手は自分で郵便局から書留で送る。EMSでは有価証券は送れないそうであるが、送ってしまう人もいるらしい。(ちなみにEMSだと文書はアイルランドまで5、6日で届いた。追跡サービスがあるが配達状況がWEB上に反映されるまでに数日かかるようである。)
 他に、PayPalなどもあるが、セキュリティ上問題なしとはいかないようである。しかも高額送金は難しい。また、オンライン決済は送信記録を残さないと後で面倒なことになることもある。

 注文から到着までの長い道のり

 たいていのメーカーはデポジット(預託金)を払ってはじめて注文受付となる。それから楽器が届くまで、フルセットの場合最低でも1年くらい、長い時は10年(あるいはそれ以上)かかることもある。
 めでたく残金を支払っても換金手数料を求められることもある。
 全てクリアして到着を待つことになるが、アイルランドから日本までだいたい7〜10日くらいかかる。最近の例では、DHLで10日だった。

 リスク

 だいぶ前(96年?)の"An Piobaire"に「パイプを買うのはリスキーか」という記事があった。
 現時点での私の答えは「イエス」である。リスクを冒しても楽器を手に入れたいという欲求がないとパイパーはつとまらないようだが、(気に入るかどうかはともかく)大概のメーカーはまともだし、ある程度はBBSやフォーラムで情報が得られる。もし、パイプを買いたいと思ったらネットやパブなどでパイパーに意見を聞くのがいいと思う。

 楽器以外に用意すると便利なもの

 演奏に必要、またはあった方が便利なアクセサリーなどを以下にあげておく。

○ポッピング・ストラップ(パイパーズ・エプロン)
 チャンターを膝の上に立てる際、ベル(チャンターの下の先端部分)から空気がもれないようにするもの。使わない人もいるが、使った方が2オクターブ目が出しやすく、スタッカート奏法にも効果がある。
 私の場合、20cm角以上の皮を用い表革を上にしている。ただ載せるだけの人、太股全体に巻く人、ゴムバンドで固定する人など様々。要は上記の目的を達すればよい。ベルにバルブが付いていれば不要。材料は、手芸用品などの店で買うか、使い古したバッグなどを再利用する。
○ストラップ
 メイン・ストックを支えるために肩にかける吊り紐。使わない人もいる。革ひも、布製のベルト、ギターのストラップなどが使われる。私は、東急ハンズ新宿店で買った、1.2cm幅の革ひもで作った。
○大型クリップ
 ドローンのチューニングの際、バッグのチャンターのストック近くを挟んでチャンターへの空気の流入を止める。使えないバッグもある。チャンターにストップ・キーが付いている場合は不要。
○ヘンプ
リード、ジョイント部分に巻く麻紐。ワックス(ビーズ・ワックス)済みのものが便利。ハイランド・パイプの店から取り寄せるのが早い。私は、グラスゴーのThe College of Pipingから買っている。ビーズ・ワックス は、例えば新宿のJDRIなど、ダブル・リード楽器の専門店で買える。ヘンプの以外に、リンネル、ナイロン糸、デンタル・テープ/フロスなどを使う人もいる。これらの方がヘンプより糸の太さが均一である。私はリンネルや絹糸にワックスを塗ったのを主に使っている。
○デンタル・テープ/デンタル・フロス
 リード、ジョイント部分などに巻く。湿気の影響がなく、ヘンプよりもゆるまないが、温度による楽器の収縮を吸収する点や、楽器を摩耗させる点ではヘンプなどに劣る。ワックスされているものといないものとがあるが、ワックス済みが便利。テープの方がフロスより幅広で使いやすいと思う。三千里薬局やマツキヨなど、たいがいのドラッグストアで買えるので、日歯連から只でもらうのはやめておくほうがいい。
○自己融着テープ
 ストックとバッグのつなぎ目部分などのリーク対策に有用。Scotch社製のものが優れているが、最近製造をやめたらしい。似たようなものは、DIYショップで売っている。
○シール・テープ(TFTテープ)
 空気漏れの応急処置や、リードの調整などに便利。DIYショップの水道用品売場などで買える。日本製の物は少し厚めのようである。
○ビーズ・ワックス(蜜蝋)
 ジョイント部のヘンプなどに塗って滑り落ちるのを防いだり、チャンター・リードのサイドからのリークを止めたりなど多用途。ダブルリード楽器を扱っている店や、レザークラフトの店で手に入る。
○コブラーズ・ワックス
 蝋燭の火で溶かして、チャンター・ホールの穴を小さくしたり、ドローン・リードの舌にのせて音程を下げたりする。
 ドローンのメインストック側のジョイント部にはビーズ・ワックスよりもグリップが強いので有利。摩擦熱を利用して糸に塗りつける。ビーズ・ワックスと半々(真夏の日本では溶けやすいので私はビーズワックスの割合を減らしている)に溶かして混ぜると使いやすくなるが、べたつくので要注意。
 私は、ハイランド・パイプの店から買っている。
○セロ・テープ
 音程が高いときなど、チャンターのノート・ホールに貼る。
○マニュキュア
 パイパーの爪を美しく彩るだけでなく、リードの横からの漏れをふさぐのにも利用できる。ただし、使用には注意を要する。
○コーキング・テープ
 配水管などの水漏れ防止剤。リークの応急処置や、チャンター・ホールの穴の壁に付けて音程を調整するのにも使える。
○パーム・キー・ライザー
 サキソフォンのアクセサリー。キーにかぶせることによってキーの高さを上げる。簡単に取り外しができるので便利。管楽器店で売っている。