パイプの構成





 イリアン・パイプは、メロディーを奏でるチャンター、一定の音を出し続けるドローン、和音を出すレギュレーター、空気をためるバッグなどで構成される。バッグへの空気の供給はベローズ(ふいご)による。
 イリアン・パイプは構成する部品によって、

 プラクティス・セット (チャンター、バッグ、ベローズ)
 ハーフ・セット (チャンター、バッグ、ベローズ、ドローン)
 スリー・クオーター・セット (チャンター、バッグ、ベローズ、ドローン、2レギュレーター)
 フル・セット (チャンター、バッグ、ベローズ、ドローン、3レギュレーター)

と呼ばれている。何れも部品は共通で、ハイランド・パイプなどのように練習専用の笛は無い。(最近ある楽器屋が売り出した。特に評判は聞こえてこないが、半年ほど使ってみた感想としては、役に立たないことはなさそうである。)メーカーによっては、プラクティス・セットのパーツのグレードを落としている場合もある。
 チャンターの音域は約2オクターブで、指使いや、オプションのキーによって半音が出る。チャンターは、先端の穴を腿の上に立てて塞いだり離したりして、スタッカート、レガート何れの奏法も可能である。
ドローンは、テナー、バリトン、バスの3本。バッグに取り付ける部品をストック(メイン・ストック)と言い、ここにストップ・キー(スイッチ)が付いており、ドローンを鳴らしたり止めたりできる。
 バスドローンの先端に付いている丸いものは共鳴器rezonatorである。付いていない楽器もある。
 レギュレーターは、必要に応じてキーを押して鳴らす。和音やリズムをつけるために使う。
発音源はリードで、チャンターがダブル・リード、ドローンがシングル・リードである。レギュレーターはダブル・リードである。

 楽器の素材

・木材
 チャンターやドローン、レギュレーターなどによく使われている木材は、(いわゆる)エボニー(黒檀)やブラック・ウッドで、特にチャンターはエボニーが好まれている。他に、ココボロ、ローズ・ウッド(紫檀)、ボックス・ウッド(柘植)など。木材によって音色が違う。個人的には、エボニーがパイプらしい音だと思う。

・金属
 金属部分には、真鍮やニッケルがよく使われている。真鍮は、日本ではさびやすいが、ラッカー仕上げをしてくれるメーカーはあるかどうか分からない。私は管楽器用の研磨剤を使って手入れをしているが、日本ではすぐにさびてくる。ステンレスや銀なども使われる。銀は当然値段が高い。選べるのであればステンレスがいつもきれいでいいと思う。

・はめ輪(フェルール)
 管の端を補強するためにはめられる輪のことをフェルールという。金属、ボックス・ウッドかなんちゃって象牙が多い。本物の象牙で作る人は21世紀にはほとんどいないと思うが、本物の象牙は国内持ち込み、輸入ができないので注意。

・バッグ、バッグカバー
 バッグの革は、カウ・ハイド、エルク・ハイドがよく使われるようである。手で縫ったものと鋲留めのものがある。手縫いの方が耐久性があると思われる。革製の他、ゴム製(キャンバス地にゴムをコーティングしたもの)やゴアテックス(ハイランドパイプの”Canmore”が有名)のものもある。好みもあるが、バッグの善し悪しは演奏に大きく影響するので、おろそかにできない。
 上の画像では、バッグに布のカバーがかぶせてある。必要なものではないし、カバーをかぶせることによってバッグが滑り落ちやすくなる欠点もあるが、私はずっと使っている。理由は、革のにおいが気になるからである。最近はあまり気にならなくなってきたが、パイプを始めた頃、部屋が革くさくなって辟易したものである。
 ハイランド・パイプのメーカーにバッグを作ってもらったことがある。概して硬いので、そのままでは使えないことが多いようである。プラクティス・セットなら問題はないと思う。
 最近、L&Mというハイランド民族衣装などを扱う店の物がよく使われる。はじめて買ったときは化学薬品のにおいがしたが、この間買ったものは気にならなかった。外見の好みを除けば非常に優れている。

・バネ
 キーに付けるバネは、コイル状のバネと板バネがある。好みやメーカーの力量もあろうが、私は操作性と耐久性の両面から、コイルが優れていると思う。

 モデル

 現在のメーカーは、全くのオリジナルもあるが、過去の名器のコピーに独創を加えてあるものが多い。私の狭い知識の中で有名なのは、Rowsome、Coyne、Harington、Eganである。Coyneはフラットセットがオリジナルであるらしいが、現在コンサートピッチもこのスタイルで作られることがある。
 重要なのはチャンターの内径である。内径が広いワイド・ボアは、指穴が大きく、音量がある。一方、内径が比較的小さいナロー・ボアは、指穴が大きく、音量が小さい。音色は、ワイド・ボアは明るく、ナロー・ボアは柔らかく甘いと言えようか。音色は重大な問題であるが、ナロー・ボアを作っている人は比較的少ないようである。

 チャンターのディティール

 ナロー・ボアとワイド・ボアのイメージは以下の写真のとおり。


  上 ナロー・ボア D
  下 ワイド・ボア D




 チャンターの上部管(チャンター・トップ)は、金属製(右)と木製(左)がある。
 バッグとをつなぐ管はチャンターの上にあるものと横にあるものと二種類ある。写真左のタイプは、 swan neck inlet(outlet)などと言う。















 チャンターのキー

 チャンターのキーの数は、その人がどのような曲を演奏したいかによる。D管のチャンターなら、アイリッシュをやる限りキーは無くても困らないと思う。むしろ、C#の音程を確保するために、Cナチュラルをキーでしか出せないような楽器の方が問題だと思う。(もちろん、キーでしか出さないのなら話は別である)
 ただ、HighCはキーが必要であるし、Fもまあまあ使うから、あってもじゃまにはならない。私は、一応F・A#・G#・C・C#のキーを付けているが、今のところ、FとC以外は滅多に使わない。私の使用頻度は、C>F>A#・G#>C#である。
 後で追加もできるが割高になる。予算がゆるせばフル・キー(メーカーによって異なるが、だいたいC・C#・A#・G#・F)にしておくのがよいかもしれない。
 キーの操作は、F以外だいたいどれも同じであるが、位置はメーカーによってだいぶ差がある。
 ストップ・キーは、ハーフセット以上ならあった方がいいと思う。