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おすすめブックス






第1回 『外国人の定住と日本語教育』(田尻英三、田中 宏、吉野 正、山西優二、山田 泉。ひつじ書房)(2004/10/17)
第2回 『人種差別の帝国』(矢部武・著。光文社ペーパーバックス)(2005/02/11)

第3回 『靖国問題』(高橋哲哉・著。ちくま新書)(2005/05/17)

第4回 『無意識の植民地主義 日本人の米軍基地と沖縄人』(野村浩也・著。御茶の水書房)(2005/06/08)

第5回 『声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々』(中村一成・著。インパクト出版会)(2005/06/21)

シネマ編
コミック編



第1回(2004年10月17日)
『外国人の定住と日本語教育』
(田尻英三、田中 宏、吉野 正、山西優二、山田 泉。ひつじ書房)


 ひつじ書房から今月発売されたばかりの、『外国人の定住と日本語教育』
 昨年5月に開かれた日本語教育学会のシンポジウム「外国人の定住と日本語教育」のコーディネーターとパネリストたちが、当日、時間の都合で返答できなかった質問なども含めて、発言内容をまとめたもの、だそうだ。
 とりあえず、私がかかわっている中南米関連の子どもたちのための支援活動と関係のありそうな、第5章の「多文化・多言語主義と子どもの発達」という山田 泉氏の執筆部分を読んでみたところ、これが「いい!」
 「ぜひ、皆さんにも読んでいただきたい!」
 という内容なのだ!
 くわしくは読んでのお楽しみ、ということで、ここでは触れない。ただ、私がこれまでの活動で、まとまりのないまま常々感じていたことを、いくつも、山田氏の論説は、明確に指し示してくれているということ、そしてそこには、『多文化・多民族・多国籍社会と「人としての権利」』を考え、多文化共生を真に豊かなものにしていくうえで不可欠な視点と実践例とが、提示されているということ、この2点だけは、書いておこう。それ以上は、今は言えない、悪しからず。
 個人的には、ここだけでも2000円+税の価値が十分あったと感じている。
 そんなに長くないことだし、どうか皆さん、読んで、読んで、読んで〜!!

 というわけで、新コーナーをつくってしまった次第である。
 ならばやはり、というわけで、『日本人的1少女』を紹介した本サイトの「コミック編」にもリンクを張ることに。あちらも更新したので、あわせてどうぞ!

第2回(2005年2月11日)
『人種差別の帝国』
(矢部武・著。光文社ペーパーバックス)


 昨秋から書店で見かけてはいたのだが、表紙にあしらわれた星条旗のインパクトに目を奪われ、「アメリカの悪口言ってる本かいな。日本のことを突っ込まねばあかん!」と考えて、手に触れることもなかった私はお馬鹿さん。
 先日、たまたま一緒に書店にいた相棒が、「日本のことも書いてる」と指摘してくれ、驚いて手に取ってみると、最終章が「もう一つの人種差別の帝国」として日本を取り上げていた。よく見ると、表紙には、日の丸もあしらわれていて……。なんたるこっちゃ……。

 早速その場で購入し、まず最終章を読んでみたのだが、日本の状況が、コンパクトにわかりやすくまとめられていて、素晴らしい。在日外国人の参政権に関する著者の考えについては、多重国籍への視点などが出ていないあたりからして、私見とはずいぶん異なるのだが、そのへんはさておくとして、この最終章だけでも読む価値は十分にあると思う。ぜひ一家に一冊、購入していただきたい著作である。税込1000円の手軽さでもあるし。
 しかも、第1章〜第7章までの、アメリカの人種差別に関するレポートが、これまた非常に考えさせられる内容で、示唆に富む。日本と重なる部分が多く、しかも、日本の先を行っている部分も少なくない。それゆえ、アメリカ社会についての記述と、日本社会についての記述とが合わさると、なんだかとてつもない発想の化学反応が起きてしまいそうな、一粒で2度、3度、4度美味しいとでもいいたくなるような、驚くほど深い味わいと衝撃を得ることができる。しかもそれが、税込1000円!

 なお、昨年4月に「コムスタカ─外国人と共に生きる会」のホームページに中島真一郎氏が発表した文章を私が『JANJAN』で紹介した文章(ややこしい……)が、コムスタカのホームページに掲載されていると書かれていた。意図的なのか、うっかりなのか。
 何にせよ、コムスタカのサイトで公表されている中島氏の分析に注目が集まり、このような一般向けの書籍で紹介されるのは、まさに願ったり叶ったりの展開であり、非常に嬉しく、喜ばしいことである。春から実に縁起がよろしい。Muito bom!

第3回(2005年5月17日)
『靖国問題』
(高橋哲哉・著。ちくま新書)


 「看板に 偽りありや 靖国神社
     亡国するとは 御利益なさそ」
 「いつの世も 滅びを招く 靖国神社
     そこにもここにも 怨霊おんねん」
 日本近代侵略戦争の被害者数千万人の怨念が取り囲んでいるわけだしぃ。
 それどころかぁ、天皇や靖国や日本人に恨みをのんで死んでいっただろう犠牲者たちまで、「天皇陛下と日本国のために戦って死んだ“英霊”」として無理矢理祀り上げてもいるんだしぃ。
 そういうのって、なんかすごくない?
 まったく靖国神社って、背筋も凍る、日本最大の心霊スポットではありませんこと……?

 などというおちゃめな突っ込みを入れる酔狂人はおらんのか!

 と、ひとり愚痴っていたのだが、この『靖国問題』に掲載されている石橋湛山の1945年秋の論説を読んで、心はすっきり落ち着いた。読書の醍醐味のひとつは、やはり時空を超えた出会いの喜びにあるのだなあと、実感した次第である。

 まあ、前ふりはこのくらいにして。
 ちょうど、20世紀前半の日本社会で靖国神社が果たした役割について調べる必要があって、そんな時に、毎日新聞で紹介されているのが目にとまった。
 そっけないが、なんとも思わせぶりな、「小スペースでもかまわないから、どうかぜひ」とでも言って無理矢理紙面に押し込んだかのような、その紹介文が気になって、買って読んだら大正解。興味深い資料がかなりの数、引用されていて、期待以上の収穫があった。らっきー。

 本書を読めば、靖国神社が小泉貧乏死神首相の言うような「追悼の場」ではありえないことが、よくわかるだろう。「国家」という宗教が侵略兵士を生み出していくメカニズムの恐ろしさが、実感でき、靖国神社が別に日本ならではの、日本独自のシステムでも文化でもないこともはっきりわかり、さらに、「靖国問題」が、他国が関心を持つべきではない単なる国内問題に留まるわけがないものであることも、理解できて、そのうえ、あの千鳥ケ淵をはじめとする「国立施設」の持つ危険性までも、はっきりと見えるようになるだろう。ね、凄いでしょ?
 では、ならばこの入り組んだ問題を解決する鍵はどこにあるのかというと……著者はきちんと答えを用意してくれているが、それは読んでのお楽しみ、としておこう。毎日新聞の書評を真似て。
 哲学をしている人の文章というと、ついつい敬遠しがちな私だが、平明な語り口が、実にありがたかった。「靖国問題」を、「感情」「歴史認識」「宗教」「文化」といった観点から一つずつ冷静に解きほぐしていく流れが何ともスリリングで、どこか探偵小説の謎解きを読んでいるような趣さえあった。論理の力というものか。さすがである。
 「靖国問題」を考え、語るうえで、これからの基本になるべき書だと思う。ぜひ、ご一読を。

第4回(2005年6月8日)
『無意識の植民地主義 日本人の米軍基地と沖縄人』
(野村浩也。御茶の水書房)


 かつて本コラム・シリーズで紹介した知念ウシ氏のまさにその文章が全文引用されていて読める、というだけでも、十二分にお勧めできる一冊だ。
 あの文章に「逆ギレ」した人の気持ちが私にはどうもよくわからなかったのだが、本書の著者の分析で、ようやくわかりかけた気がする。同調できないのは相変わらずだが。

 しかも、それだけではない。
 植民地に対する「恐怖による支配」、テロリズム。
 分断統治。
 自己欺瞞。
 沖縄ストーカー。
 著者の分析は、沖縄と「日本人」との病んだ関係を浮き彫りにする。前の3つあたりは、在日外国人に対する、「日本人」が選び取った「日本政府」の対応にもそのままあてはまるだろう。
 そして、マルコムXらの言葉を引用しつつ、著者が鋭くしつこく怒りをこめて「日本人」に向けて投げかける、単純至極な、だが、なぜだか滅多に口にする人のいなかった、呼びかけ、あるいは、問いかけ。
 いや、政治的責任をとれという要求というべきか、課題の提示というべきか。
 ともかくそれに、『DAYS JAPAN』の創刊当初のコピーにならえば、「日本人」は、耳を塞ぐ資格は、ない。
 さあ、「日本人」の皆さん、本書を読むべし、読むべし、読むべし!
 そして「日本人」はどう答えるべきか。「助けて、ジェダイ騎士」アニメを観ながら、考えてみて、考えてみて、考えてみて!

 「日本人」の皆がそうしてくれたら、私が個人的に感じている日本社会の居心地悪さ、薄気味悪さ、その根底にあるものが、洗い流される日が近づくのかも知れない。

第5回(2005年6月21日)
『声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々』
(中村一成・著。インパクト出版会)


 本サイトではおなじみの中村一成氏、初の単著がついに出版された。
 題して、『声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々』。

 ぜひぜひ、特に一〇代、二〇代の人たちに読んでもらいたい一冊である。
 本書は、「威勢のいい」「国民の歴史」の、裏面史を暴露している。
 そして、本書があぶり出す事実と構造のほとんどは、どの出版社の教科書であれ、日本政府の「検定合格教科書」なんかでは知ることのできないものであって、しかも本書には、その事実と構造とに翻弄され苦難を強いられてきた人々の「生きた歴史」がつづられているのだ。
 これで面白くないはず、ないではないか!

 内容はというと、タイトルのとおり、現在、京都、大阪で争われている、いわゆる「在日無年金訴訟」の原告たちへのインタビューが核となっている。高齢の原告たちが、なぜ提訴に踏み切ったのか、踏み切らざるをえなかったのか。そこに至る人生の歩みはどんなもので、その歩みを強いてきた近現代の日本の政策がどんなものだったか。著者は、最近の研究でわかってきた情報を交えつつ、あぶり出していく。

 ともすれば無味乾燥になりかねない、日本政府が過去にとってきた施策の記述が、原告たちの「人生を振り返る時」の「肉声」と折り重ねてつづられることで、ずしんとした重みとリアリティをもって、立ち現れてくる。その迫力と密度のおかげで、読み飛ばしも流し読みもできなかった。う〜ん。読書の醍醐味を堪能した気分である。

 人の声に深く聞き入り、たんねんに文章化していく作業。そしてそれらの声と、学術的な知識などとの間に有機的な連関を持たせて、「声」のみからは見えてこなかった全景を提示し、あるいは、学術的知識のみからは見えなかった「事実の重み」を実感させるという作業。どちらもなかなかできることではないと思うのだが、本書は、その両者が見事にかみ合った成功例であり、非常に良質なルポルタージュだと思う。

 そしてその基盤には、インタビューを受けた原告たちと、著者との間に保たれた適度な距離感、信頼関係がある。あるいは、原告の家に上がり込んで共に盃を傾けつつインタビューをしながら、原告お手製の特製キムチをお土産にほしい、などと思っていても口に出せずにいるという著者の人柄があり、さらには、インタビューの場で常にわが身をふりかえざるをえなかった、著者の歩み、個人史がある。それらすべてが、このルポを成功させる力になっている。

 上で書いたとおり、本書のメインは「在日無年金訴訟」の原告たちへのインタビューだ。しかし、著者は、原告たちの声と歩みとを文字として「刻みつける」ことでよしとするのではなく、そこからさらに、この日本という国、日本という社会の姿、「地顔」をもあぶり出していく。本書の冒頭が、クルド人マンデート難民の強制送還で始まるのは、象徴的だ。
 他にも、在日日系人「労働力」や人身売買被害者たち、パレスチナ難民たちについてのエピソードがつづられていて、在日日系人の子どもたちの支援活動に関わっている身としては(私自身も著者のインタビューを受けて、ちょっとだけ本書に登場している)、いわゆる「ニューカマー」と呼ばれる彼・彼女らを取りまく問題と、在日コリアンの人たちが経験してきた問題、その背景にある構造の同質性、共通性を、あらためて感じざるをえなかった。
 その意味で、「国籍」とか「国民」とかについていろいろ考えている人、これからの日本社会のあり方を考えている人、そして、「多文化共生」や「国際交流」などに関わる活動をしている人たちにも、ぜひとも、読んでほしい一冊だ。

 そしてみんなで、著者の提示するいくつもの問いかけへの答えを、探してほしい。
 たとえば、帯に書かれたものとしては、
 「いったいいつまで、この国は、排外の歴史を続けるのか。」
 とか。
 問いかけの一つとして、「終章」の最後の一段落も本当は引用しちゃいたいのだが、ここはやっぱり、ぐぐっとこらえて、後は読んでのお楽しみ! ということに。
 皆さま、ぜひ、読んでね!


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