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差別大国ニッポンの記録





第1回(2003/05/01)
第2回(2003/05/15)



第1回(2003年5月1日。同日AM02:38、ちょっと加筆)
 こんなことをやってる場合ではないと思いつつ、でも、知っちゃったからには放っておけない、どうせ日本語メディアで報じられることなんてろくになさそうだし……。

 ブラジルの雑誌『LOOK』のウェブサイトに、今年二月一八日に主催・外務省(中南米局)、後援・法務省、文部科学省、厚生労働省で盛大に開かれた「在日ブラジル人に係る諸問題に関するシンポジウム」についての記事が掲載されている。こちらだ。
 残念ながらポルトガル語版なので、タイトルを意訳すると、
 「差別発言に奪われたシンポジウムの議論 群馬県大泉町町長がブラジル人差別を宣言、轟々たる非難で紛糾」
 記事の冒頭を要約すると、在日ブラジル人の労働環境や保険、教育や入国管理などに諸問題の解決に向けて、議論を深める場のはずだったのに、群馬県大泉町町長ハセガワ・ヒロシの差別発言がそれどころじゃなくしてしまった、という話。

 群馬県大泉町と言えば、人口の一四%(だったと思う)をブラジル人が占めるほどの町で、だからこそ、そこの町長であるハセガワ・ヒロシもこのシンポジウムに招かれたわけだが、このハセガワ・ヒロシなる人物、「町で問題を起こすのは皆、ブラジル人だ!」てな選挙キャンペーンを張って町長に選ばれたというから、石原慎太郎的「差別主義者」「極右の猿」と呼んでよかろう。そしてその本性が、腰の重い日本政府がようやく前向きに問題に取り組もうとした矢先のシンポジウムで、丸出しになり顰蹙を買ったというわけだ。
 以下、シンポジウムでのハセガワ・ヒロシの発言とそれに対する他の出席者からの批判(青色の文字)を記す。ついでに、私からの個人的なツッコミを書いてみる。赤字が私のツッコだ。なお、シンポジウム出席者の発言はポルトガル語版の記事からの日本語訳であり、ハセガワ・ヒロシの発言部分などは本人の発言よりかなり上品に仕上がっていると思われるので、その点、差し引いてお読みいただきたい。

 まず、ハセガワ・ヒロシ曰く、
 「大多数の日本人は外国人との共生に不満を訴えている。主に、騒音の問題、ゴミの分別の問題だ。そして、日本人住民は、町に住む外国人を減らすよう要望してきている。そんな要望には賛成できないが、プレッシャーを受けている」

 騒音の問題、ゴミの分別の問題は、外国人住民を受け入れる行政側のコミュニケーション能力、コミュニケーション意欲の欠如こそが問題だろう。自分たちの無能さをこうも開き直って、恥ずかしくはないのか、この差別猿! しかも、選挙キャンペーンではブラジル人差別を煽りに煽っておきながら、「そんな要望には賛成できない」などと、よくも言えたもんだ。日本の恥め!

 「外国人は頻繁に住所を変えるから、徴税が難しい」

 移転が多いのは、いつでも首を切れる安全弁扱いの派遣労働がほとんどであるがゆえ。仕方なかろう。そもそも、外国人労働者という安全弁を使うことで利益を得ている日本企業がきちんと税務処理をすればすむだけの話じゃないか。源泉徴収システムがどういうものなのか、小っちゃな脳味噌を振り絞って、よ〜く考えてみろよ、差別を煽ることしかできない、この能無し町長!

 失礼……。
 ちょっと私自身のツッコミの抑えが効かなくなり品も無くなってきたので、ブラジルの弁護士でサンパウロ州立大学教授でもある二宮正人氏のシンポジウムの場での反論の紹介に切り替えよう。

 二宮氏が反撃して曰く、
 「徴税の問題はブラジル人に限ったことではなく、適切な徴税システムが存在しないがゆえの問題だ」

 さらに、二宮氏は、大泉町のようなブラジル人集住地域が生まれたのは、その地域自体がブラジル人労働力を必要とし、招くという戦略を採用・実践したからだという歴史的背景を示して、こう語った。

 「誰も大泉町など知らなかった。ブラジル人が働きに来るようになって、ブラジル人の町として日本でも有名になった。ワールドカップの時にはすべてのテレビ局が大泉にやって来るほどに。招かれてきたブラジル人を、今、今度は追い出すというわけですか? 奇妙な話に思える」

 「今はもうブラジル人の定住化を受けて、ブラジル人がこの社会で生きていけるよう環境を整えるべき時です。権利と義務の平等の下に」


 この最後の部分は、まさに、本シンポジウムを主催・後援した四省担当者たちの願いでもあろう。

 二宮氏の発言のうち、歴史的背景に触れた部分を、補足しておこう。
 一九八〇年代、バブル景気の最中にあった日本社会では、いわゆる3K仕事を中心に人手不足が深刻化していた。当初はイラン人、パキスタン人らを「労働力として輸入」していたのだが、異文化世界の人間は言葉も習慣も違ってどうも扱いにくいということで、日本企業は、南米地域の日系人に目をつけた。日系人なら言葉もわかるし、扱いやすいだろう、というわけだ。
 二世、三世と世代が進むにつれて日本語のわからない日系人がどんどん増えていること、しかも、生まれ育った国の生活文化、生活スタイルが身について、日本文化になど触れたこともない日系人が大勢いるなんてことはちょっと考えれば当たり前なのだが、「血の幻想」「人種の幻想」に頭の中を曇らされていた人たちに、そこまで思いを働かせてよだなんて無理な話だったのだろう。三〇万人近くの南米系日系人が日本に暮らすようになった今でさえ、こうした「血の幻想」「人種の幻想」にとらわれたままの蒙昧な有権者たちが、先般の都知事選でレイシストの現職知事に投票した三〇〇万東京都民、現職知事に異を唱えることなく棄権した数百万東京都民をはじめ、少なくないのだから、一五年も昔なら、なおさらだ。
 話を戻そう。八〇年代後半になると、日本から人材派遣業者が上記のような算段で、ブラジル、ペルー他、南米諸国へ大挙して押しかけた。ブラジルでも日本企業の就職説明会が、毎週のように開かれるようになった。我が相棒の話では、説明会に参加するだけで、現地価格にしては結構な金額が、なんと説明会開催側から、話を聞きに行った日系人に支払われていたのだとか。
 最近の若者からすると「そんな馬鹿な」と言いたくもなるだろうが、八〇年代後半の日本はまさにそういう時代だった。たとえば、当時大学生だった私の周囲では、就職戦線が圧倒的な売り手市場で、今では到底信じられないような企業の大盤振る舞いが、珍しくなかった。三つも四つも五つも内定をもらえるなんて友人も少なくなく、企業側の人材争奪戦は激烈至極。料亭でご馳走になった学生とか、就職内定後に留年が決まっても一年待ってもらえた学生とか、狂躁的で冗談みたいな時代だったのだ。
 そんな状況があって、日本政府は九〇年代初めに、日系人を「労働力」として「輸入」しやすくするために法律を改正。折りも折り、インフレと不況の最中にあったブラジルでは、日本に働く場を求める人が少なくなく、日本で働くブラジル人がどどっと増え、やがて、その家族たちも日本に呼び寄せられ、定住するようになった。日本で家族を築くブラジル人も増えていった。日本生まれのブラジル人も増えていった。「労働力を輸入」したヨーロッパ諸国が経験してきたのと同じ、外国人労働者とその家族の定住化が始まったというわけだ。
 こうした背景をまったく顧みることなく、ちょっと不景気が続いたりトラブルが起きたりすると、社会の中のマイノリティであり発言力も発言権もない外国人をスケープ・ゴートに仕立て上げて迫害を始めるというのは、何もヨーロッパのネオ・ナチを例に出すまでもなく、この日本でも身近な話だ。そう、在日コリアンやイラン人、パキスタン人他の外国人労働者のたどった歴史とまさに瓜二つだ。
 卑劣で醜悪な差別主義者たちのかくのごとき非道、見て見ぬふりなどできるものか。

 『LOOK』の記事は、日本からブラジルに帰国した子どもたちの母国への適応困難についてなど、他の問題にも触れているが、あまり時間がないので、もう一点だけ。犯罪の問題、在日ブラジル人の若者による犯罪が増えているという話について最後に書いて、ひとまず終わりにしよう。
 私も正確な数字は知らないのだが、在日ブラジル人の若者絡みの犯罪は確実に増えていると思う。
 日本の公立学校教育からはじき出され、中学生年齢でもう、3K工場で働いている子どもたち。どうにか中学校を卒業しても、初等教育や中等教育の場で実際は放っておかれたため、あるいは、受験制度の非融通性のせいで高校進学の道が事実上ほとんど閉ざされているがために、やはり中学卒業後すぐに3K現場で働かざるをえなかったり、あるいは無為に日々を過ごさねばならなくなる子どもたち。
 けっして少なくないそんな彼・彼女たちが、ただでさえ外国人差別が大手を振ってまかり通る、この抑圧的で排他的な社会の中で、犯罪やトラブルに巻き込まれていくのは、まったく無理からぬ話ではないか。
 今回の『LOOK』の記事は、ブラジルで刑務所の看守を二〇年以上勤めてきた人の次のような言葉で、締めくくられている。
 「二〇年以上働いてきたけど、日系人が刑務所に送られてきたことなんて、まずなかった」

 では、私は受験勉強に戻りますです。憲法民法刑法! うおおおっ! あと一〇日!!!

第2回(2003年5月15日)
 前回紹介した「在日ブラジル人に係る諸問題に関するシンポジウム」。
 後援者に名を連ねている文部科学省だが、同省からの出席者は、ゼロ、皆無、だったそうな。やる気、やはりないのか。在日コリアン社会が文部科学省から受け続けている迫害と嫌がらせ、その歴史を思えば、当たり前と言えば当たり前かも。
 さすがは、この世界、そしてこの列島社会の多様性から目を背け、たかだか近世以降の産物に過ぎず実社会においても明治以降に宣伝流布され教育を通して国民の頭に叩き込まれただけに過ぎない皇国史観の亡霊にいまだ囚われたまま、「愛国心」を押しつける偏狭な同化教育に血道を上げる人たちであることよ。
 文部官僚って一応この国のエリートの端くれと呼ばれるべき立場の人たちだとは思うのだが、これではまるで、自分の田舎、自分の周囲数名のちっぽけな世界がこの日本社会のすべてだと狂信的に信じ込み、「今の教育基本法には日本の香りがしない」などと恥ずかしげもなく言ってのける安倍晋三官房副長官なんかと同レベルの「視野も世界も狭い、温室育ちの小心な愚物」の集まり、とでも呼ぶ方が相応しいんじゃあるまいか。愚物、愚物、愚物!

 ところで、「すべての外国人学校の大学入学資格を求める実行委員会」が、今月末を目処に、
 「すべての外国人学校に大学入学資格と財政措置を求める共同声明」
 への賛同署名を集めている。
 詳細はこちらをご覧ください。そして、できますればご賛同を。ぜひ。


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