市民ラジオ(27MHz/500mW)や特定小電力トランシーバー(422MHz/10mW)を使った場合、最大でどの程度の通信距離になるのか、以下の自由空間伝送損失の式を使ってシミュレーションしてみました。

| 距離(m) | 伝送損失(dB) | 受信電力(dBm) |
|---|---|---|
| 1 | 1 | 26 |
| 10 | 21 | 6 |
| 100 | 41 | -14 |
| 1K | 61 | -34 |
| 10K | 81 | -54 |
| 100K | 101 | -74 |
| 1000K | 121 | -94 |
受信機の性能や条件によって変わりますが、交信に必要な最小の受信電力として、−100dBmと仮定すると、見通し距離約1000kmの範囲内で通信できそうです。 ただし、地表面や電離層の反射や回折の影響や混信雑音等はまったく考慮していません。 国内では、このような見通し距離の場所はないので、実際は最大300〜400Km程度ではないかと考えられます。 また上の式では距離の2乗に比例して電力が減衰すると仮定したモデルですが、実際の使用(地表面)ではほぼ距離の3〜4乗で減衰していくと言われています。 カタログ等に書かれている通信可能距離はこのモデルを使っていると考えられます。 海上や山岳地帯では都市雑音(約−90dBm程度)が比較的に少ないので通信し易いでしょう。 因みにこの周波数帯での自然雑音は約−140dBm程度と言われているので、高い山に登ってお互いに高感度の受信機と高性能な受信アンテナを使えば安定した通信が期待できそうです。
また春から夏の日中に地上から約100Km上空にEs層(Sporadic E layer)と呼ばれる電離層(イオン層)が突発的に発生します。 この場合は、見通し外でもこの電離層に電波が反射して1000Km以上も離れた場所と通信できることがあります。 このような遠距離通信がわずか500mWでも可能なことは、以上の結果から推測できそうです。

このEs層の発生は、太陽の活動(強力な紫外線や放射線が大気をイオン化する)に関係しています。 年に数回、強力なEs層が発生して反射する周波数がVHF帯にまでおよぶ時があり、近隣諸国で放送されているTVやFM放送波が国内のVHF1〜3チャンネルのTV放送波に混信を与えて画面に縞模様が現れます。 このときは、市民ラジオでも遠距離局(1000Km〜)を受信または交信できるチャンスかもしれないので要注意です。 電波伝播に影響を与える電離層の観測は、情報通信研究機構(ex.通信総合研究所)で行われており、観測データ(イオノグラム)が公開されています。
【特定小電力トランシーバーの場合】
波長0.71m、送信電力10dBm(10mW)、送受信アンテナ利得0dBとして、距離と受信電力の関係を表にしてみると以下のような結果になります。
| 距離(m) | 伝送損失(dB) | 受信電力(dBm) |
|---|---|---|
| 1 | 25 | -15 |
| 10 | 45 | -35 |
| 100 | 65 | -55 |
| 1K | 85 | -75 |
| 10K | 105 | -95 |
| 100K | 125 | -115 |
交信に必要な最小の受信電力として、−110dBmと仮定すると見通し距離約50キロメートルの範囲内で通信できそうです。 ただしこの場合も、地表面での伝播、回折の影響や混信雑音等はまったく考慮していません。 最新の特定小電力トランシーバーの受信感度は非常に良いようで、通信距離は条件により100Kmを超えることが十分に可能です。 実際、200Km超の通信実績もあります。
【計算スクリプト】
自由空間での受信電力の概算が簡単にできるよう計算スクリプト(リンクはこちら)を書いてみました。